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旦那様私達すでに離婚しております  作者: 志馬
結婚する事になりました
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この子が欲しい

本日2回目の投稿です

ランドルフが、トーニア・エルビスに振られてから、七年の歳月が過ぎた。

あれからランドルフは、父であるマティス公爵の云うことも、家令のアンゲルの話も一切耳を傾けることがなくなり、女性たちを侍らせては夜会やら舞踏会だと遊びまわり、母の信託財産はすっからかんになった。

本人は銀行で確認もしないのでお金が底をついていることを知らない。


このままではいけないと公爵は、商会を作ったり、投資を行うなどをして、領民に迷惑をかけないように経済を回していた。


朝一番にマティス自慢のマホガニーの重厚な机の上には少し厚みがある帳簿がぽつんと置かれている。マティスは帳簿を開いてぺらぺらとページを捲る。そして両肘をつき帳簿を目の前に頭を抱えた。


「アンゲル・・・。我が家はこのままランドルフが跡目を継いでしまえば没落して終わってしまう。どうしたら良いか。今からでもランドルフの教育は間に合うと思うか?」


その帳簿は、領地経営や照会運営の帳簿ではなく、ランドルフが女性たちに貢いでいる支出のみの帳簿である。収入はまるでない。単なる支出のみの真っ赤なペンで書かれている。見ると溜息しか出て来ない帳簿であった。何故ならランドルフは働かないから、収入がゼロで使うばかりだったから。


「旦那様。坊ちゃまは私たちの話は聞かないでしょう。間違いを正すにはトーニア・エルビスに振られた時だったのでしょう。もし、公爵家を建て直すのであれば、花嫁に堅実な方をお迎えするのが賢明ではないでしょうか?理想としては、まだデビュタントを迎える前のお嬢様を我が家に迎え入れて、デビュタント後にランドルフ坊ちゃまの花嫁にされるのが良いかと思いますが。」


マティスは顔を上げて、アンゲルに目線をやると、


「そんな都合の良い令嬢などいないだろう。それとも目星でも付けているのか?」


と尋ねた。アンゲルは、紙を一枚マティスの目の前に置き説明を始めた。


「旦那様の領地サティの隣の隣に面しているアフィト領地の領主カナガン伯爵をご存じでいらっしゃいますか?」


マティスはアンゲルが差し出した紙を読みその後、腕を組み暫くカナガン伯爵と思しき者を記憶から手繰り寄せる。容姿は背はあまり高くはなかった。昔は少し痩身だったが・・・最近は以前に比べてややぽっちゃりしてきている。と誰かが言っていたような・・・。

しかし容姿は口にはせずに、人柄のみを思いだしながら応えた。


「余り社交界には顔は出さないが、真面目で大人しいが頭が切れる人物だったと思うが。…彼がどうかしたのか?」


「はい。カナガン伯爵には十二歳になる令嬢と九歳になる令息がいらっしゃいますが、この令嬢は、領民と一緒に農作業を行ったり、領民が制作した家具や装飾品を商会相手に交渉を行い、もし飢饉が訪れても現状で三年は持ちこたえることが出来るように貯えをされているそうです。商会の運営者はカナガン伯爵が、令嬢をどこに嫁に出すのかと目を光らせているそうですよ。」


マティスは、呆然とアンゲルを見た。十二歳の少女にそんなことが出来る筈などない。その一言に尽きる普通であれば。


「本当かどうか見てみたいものだ。」


「最近伯爵が王都へいらっしゃったようですよ。令嬢を伴って。新しい品の売込みだそうです。取引商会を増やしたいみたいですね。競合させるつもりなのでしょう。」


「よし!アンゲル早急にカナガン伯爵に連絡を取ってくれ。できるだけ早めに。」


アンゲルは、御意に。と短く応えて退出した。

カナガン伯爵からの返事は早く、昼過ぎには会えることとなった。


公爵側が伺うというと、カナガン伯爵は申訳がないから自分たちが伺うと申し出てきたが、暮らしぶりも見たかったマティスは無理を言ったのは此方だからと意見を退けた。

よって、伯爵側は大慌てとなった。公爵家にお出しするお茶菓子や高級茶葉が存在しないから。質素倹約を旨とするカナガン家にはケーキなどという贅沢品は並ばない。自領地で作ったバターや小麦で作るクッキーやパイといった焼き菓子が贅沢品である。

悩む伯爵に、娘のケニアは、迎える準備をしながら、


「気取っても良い事なんか無いわよ。お父様ありのままで良いんじゃないかしら?もてなしって気持ちじゃない?」


とケーキスタンドは、サンドウィッチやジャムを乗せて焼いたクッキーが並べられていく。


「普段ならそれでもと思うが…相手は筆頭公爵様だよ。あぁ震えて来た。」


「大丈夫よ。私も頑張るから。」


笑顔で応えるケニアを見ていると伯爵の口角は自然と上がっていく。

柔らくふんわりと揺れ動くハニーブラウンの髪に二重の大きなエメラルグリーンの瞳に小さな顔は、どこに出しても引けを取らない愛らしさがあると伯爵は常々思っている。

亡き妻によく似た愛らしい我が娘に元気付けられて、どちらが親だか解ったものではない。と苦笑する。

息子を出産後肥立ちが悪く早逝した妻の代わりに弟の面倒を見て、家の女主人となるように使用人からも育てられた娘は実年齢よりも精神年齢は親を越しているといっても過言ではなかった。娘の成長に思いを馳せていると、馬の蹄の音が聞こえて来た。


「ほら、お父様、いらっしゃったようよ。玄関で一緒にお出迎えをしましょう。」


足取りの軽い娘に手を引かれて、玄関まで跳ねるように向かった。

ケニアとカナガン伯爵と前に並び後ろには執事のギタや侍女長のマイナなどが並んだ。

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