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雪ん子 ─ずっと、好きでした─  作者: 猫音子
二章 聖獣
8/12

五日目後半 雪ん子、リンゴに心惹かれる



「どうでしょう」

「すごい……芸術品のようです」


 さすがに褒めすぎですよ。さっきからこんな調子なんですよね。

 芸術品ともではいかなくても、確かに私に似合ってるから苦言も呈しづらい。


「美亞葵君……店員さんに向いてますよ」


 それに、彼の選んだ服は何故か私の身体に合う。なんと下着のサイズまでピッタリ。そう、下着のサイズが。

 そもそも何故彼が下着まで選んでいるかと言うと、私が原因なのである。


 今まで下着なんて物の存在を知らなかった故に、大層驚かれた。店員さんにも。

 最初、彼は女性の下着を選ぶ事に恥じらいを見せていた。どうせなら貴方に選んでもらいたい、と頼み込んだら、思いの外真剣に選別してくれた……のだが。

 まさか、ここまで違和感の無い程、サイズを合わせてくるとは思わなかった。


「それに、私好みのものを選んでくれますし」

「共に暮らし始めて五日も経てば、好みも把握できるというものです」


 そうだろうか?美亞葵君が異常なのでは。


「……失礼ですね。得てして男とはそういう生き物なのですよ。女性に関しては」


 店員さんにも聞いてみたけれど、美亞葵君と同じ答えが返ってきて驚愕した。

 男って、そうなんだ……!!


 春姫は一つ、殿方について勉強しました。しかし、まだまだ知らない事がたくさんありそうです。

 ですが、今はとりあえず、美亞葵君について学びましょう!


「その心意気は嬉しいですが、まずは服を選んでしまいましょうね」

「あ」


 ✻ ✻ ✻ ✻


「ありがとうございましたー!」


 ほくほく顔の店員さんに見送られ、以前にも行った喫茶店に向かった。

 結局、服は十三着購入しました。ワンピースタイプが四着と上下セットが二つと、服に合わせた下着が四着、肩掛けが一枚。あとは靴下を三足。


「どうせなら、靴も新調しましょうか」

「結構こだわりがあるんですね」


 また一つ、彼のことが分かった。

 靴は後回しにして、先に腹拵えを済ませましょう。おなかが空きました。


✻ ✻ ✻ ✻


「ご注文が決まりになりましたら、そちらの呼び鈴でお呼びください」


 今日は何にしよう。前回は美亞葵君にお任せしちゃったから、今度は自分で選びたい。


「好き嫌いが無いなら、見た目で選んでみては?」

「見た目……」


 じゃあ、この子(これ)にする!可愛いし、とっても美味しそう!

『ウサギカットのリンゴ付き、生パスタのカルボナーラ』


「……ふむ。あ、すみません、注文お願いします」

「お伺いします」


 偶然通りかかった給仕に声を掛けた。


「春風様はいつも通りですね」

「えぇ。彼女の分はリンゴ付きのカルボナーラで。あと……」

「?」


 他にも何か頼むのだろうか。そういえば美亞葵君、意外と大食いですもんね。

 

〘薫衣草柄のお皿、ありましたよね?〙

〘はい、ございますよ。お連れ様のお皿はそちらで?〙

〘お願いします〙

〘かしこまりました〙


 何の話をしているんでしょう?言語が違うからまったく分からない。仲間外れにしないでくださいよ〜。


「ふふ、あとのお楽しみです」


 むぅ〜、余計に気になるじゃないですか。

 料理が運ばれてくるまでまだ時間があると言うので、美亞葵君に色々質問してみた。


 曰く。好きな物は、可愛いものと美しいもの。

 曰く。好きな食べ物は、卵かけご飯と素麺。

 曰く。趣味は料理。


「僕のことなんか聞いて楽しいですか?」

「面白いです。好きな人の好みを聞くのって」

「ぶふっ!!」


 だ、大丈夫ですか。またしても私、何か余計なことを?


「す、好きって。え?」


 本当ですよ。嘘なんて言いません。

 だって、初めて会った時も、迷える子羊の私を救ってくれましたし。お家にも迎えてくださって。

 

 私、感謝してるんですよ?これでも。

 それにそれに!なんと言っても人生で初めての友達ですもん。


「あー……うん」


 あれ?おかしいな?精一杯、褒めたたえたつもりなんだけど。どうして凹んでるんです?


「お待たせしました。春風様専用昼食と、ウサギカットのリンゴ付き、生パスタのカルボナーラでございます。ごゆっくりどうぞ」


 わぁぁ!美味しそう!

 ほかほか湯気が立ってる様がなんとも食欲を誘う。ベーコンも大きく、たっぷり入ってる。お皿もお花柄で上品!

 何より……このうさちゃんリンゴ!可愛いです!うさぎの神様、うさ神様!


「可愛いなぁ……」

「ん?何か言いました?」


 小声で何か呟いたような気が。気の所為ですか?


「いえ、何も」


 ま、いいか。それよりもこのリンゴ、可愛い!一目惚れしました。

 このピョンとした耳!この部分が特にうさぎらしさを演出しています!


「リンゴに……負けた……?」


 なにやらものすごく落ち込んでいる。今日は調子が悪そう。早めに食べて帰らなくては。

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