三日目 雪ん子、昼寝をする
「春姫ー!どこですかー?春姫ー?」
んんー……うるさい。私は日向ぼっこしてるんです。静かにして……。
✻ ✻ ✻ ✻
小さな白いふわもこが一匹二匹、三匹四匹……。
私は今、天国にいる。可愛い動物がいっぱい!
「チューッ!」
「可愛いね、お前」
寄ってきた小動物に種をやると、頬がムクムク膨れて大変面白い顔になった。
「ふっ、ふふふ。美味しい?」
「チュチュチュッ!」
嬉しそうに手に乗ってきた。愛くるしいにも程がある。
「懐かれましたね……飼います?」
「出来るんですか?保護施設ですよね、ここ」
そう、私たちは捨てられた、或いは保護した動物たちが集まる保護施設に来ている。理由は単純、動物を見たかったから。
「はい。しかし、手続きをすれば飼い主として引き取る事もできます」
「お願いします!この子も一緒に!」
さっきから私を凝視いた子を拾い上げてお願いしてみる。きらっきらの今日一番の笑顔で。
「…………」
「ダメですか?」
「いえ!驚いただけです(水色と白?何かの意図が?)」
「じゃあ」
「ええ、飼いましょうか」
あ……でも私、ずっと春風家にお世話になる訳にもいかないですよね。自宅で飼うなら代金は私が払うべきでは。
「そんなこと、気にしなくて良いです。春姫が居ると楽しい。いつまででも居てくれて構いません」
「本当?」
「もちろん」
そうとなればこの子たちに名前を付けなきゃ。
水色の子は……美亞葵君っぽいからハルちゃん。白い子はユキちゃん。
「うん、決めた!」
「何をです?」
「この子たちの名前です!この子かハルちゃんで、こっちの子がユキちゃん!」
「ごふっ!ごほっ!」
だ、大丈夫ですか?苦しそうです。急に咳になる時ってありますよね、分かります。
「ち、違います。げふっ、何故、その名前に……んん!したんです、か!……ふぅ」
え?だって、似てません?私たちに。
まるで、この子たち、仲が良くて夫婦みた……夫婦……ふう……ふ……す、すみません!そうですよね、恥ずかしいですよね!びっくりもしますよね!
「分かれば宜しい」
「でも、名前は変えません」
「…………」
これは決定事項。幾ら恥ずかしかろうが、変えるつもりなど無い。この子たちに、これ程ピッタリな名前はありませんし。
「はぁ。分かりました……では、今日の担当官の所へ行きましょう」
施設に入る時に会った人が担当官だそうです。主に動物の世話をしたり、脱走しないか見張る仕事をしているそうな。
大変ですねぇ。
ちなみに、あの方も軍人さんだそうですよ。というより、この街の施設で働いているのは基本的に軍関係の方々なのだとか。お店とかは別として。
無事に手続きを済ませ、ハルちゃんとユキちゃんを籠に入れて施設を出、次なる目的地である洋服店へ。
お洒落めから清楚系、お姫様系に至るまで、様々な衣装が並んでいる。
「普段はどのような服を着るんですか?」
「うーん、白とか黒とか?落ち着いたものを着てる気がする……」
「ふむ……なら、この辺ですね」
わぁ、可愛いワンピース!
白に黒、あ!水色がある!薫衣草色も!それにフリルがたくさんあって凄く可愛い!
「これなんてどうです?似合うと思います」
差し出されたのは薫衣草色よりも薄い、桜色のショルダーワンピース。適度にフリルが施されている。
ホルターネックで首元に大きめのリボンが付いていて、腰の部分は括れてる。どうやら、後ろにある大きなリボンで絞っているようだ。
「可愛い!」
「試着室は向こうです」
数分後。
「どうでしょう」
「…………!」
美亞葵君が固まった。うっすら頬が赤い……もしや、予想以上に似合っていて見惚れている、とか?だとしたら、嬉しいです。
「すごく、似合ってます……!可愛いです!」
良かった。太鼓判を貰えました。
それでは、一着はこれとしてあと二着ほど買いましょう。
「良い服が見つかって良かったです」
「そうですね、どれもよく似合っていました」
美亞葵君にそう言われるとどうしてか、心が温かくなる。
恋人がいたら、こんな感じなのだろうか。今まで枯れていた心が急速に色付き始めている。
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誰かが撫でてくれる手が気持ちいい……。頭を擦り付けると、その手が離れていった。
「むぅ……」
「春姫」
そっと頬に触れてくる手が温かくて心地いい。
「春姫、起きて」
「うるさい……」
「春姫……」
私は眠いの。もっと寝ていたい……。
「あ」
──ゴンッ。
寝返りを打ったら何かから落ちて、額を打ちつけた。
「痛い……」
「大丈夫ですか?」
「んん?」
見上げると、美亞葵君がそこに居た。
あれ……?私、確か日向ぼっこしてたはず。寝ちゃったのかな。
「おはようございます」
どうして此処にいるんだろう。そして何故割り座。
「お金の用意が整いましたので、ご報告に」
なんと!これで美亞葵君をお財布にしなくて済む!自分のお金で買い物ができるなんて素晴らしい!
「美亞葵君!」
「っはい!」
いきなり大声を出したものだから驚かせてしまった。
「この街に保護施設ってありますか?動物の……」
「……?ありますけど、どうしました?(びっくりした……)」
さっき夢で見たあの二匹、もし居たら引き取りたいです。水色の子と白い子。
「行きたいです!」
「構いませんけど……今日もう遅いので明日でもいいですか?」
美亞葵君のお許しが出た。明日が楽しみで仕方ないです。
はっ!
「ごめんなさい美亞葵君、明後日でもいいですか!?引っ越すので」
「え"」
「この街に私を虐める人は誰一人いないので。この街の人々は優しいです。なのでいっその事、引っ越そうかと」
「虐め……」
そんな悲しそうな顔をしないでください。私なら平気です。慣れてますし。
「慣れちゃ、ダメです。引っ越すなら、家に来てください。宿暮らしは許しませんからね」
……あのぉ。最初から美亞葵君のお家に転がり込む予定でした。
なんか、ごめんなさい。て、何をそんな驚いてるんですか?
「いえ、当たり前のように言ってくださるとは思ってなくて……」
「前に言ってたじゃないですか、私が居ると楽しいって。住み着いたら問題ありますか?」
「無いです。寧ろこちらからお願いします」
即答だった。
座ったまま深々とお辞儀をされたので、私も座ってお辞儀を返す。
──結婚前夜のよう。美亞葵君なら良い旦那様になる事間違い無し。もしお相手がいたら早々に宿暮らしに変更します。
「いませんよ!?婚約者はおろか、女友達さえ……貴女くらいしか」
なら、意中の方もいらっしゃらない?そう聞くと、ボっと音が出そうな程赤くなった。
え、いるんですか。じゃあやっぱり私はお邪魔……。
「お邪魔じゃないですから!これはその、面と向かって聞かれるとは思ってなかったからで!」
ふぅん?怪しい。じりじりとにじり寄り、お膝に着席。さぁ、白状なさい。
「あう……その、えと……(ち、近いです!)」
目が回っている。あまりイジめるのも可哀想ですね、この辺にしておきましょう。
こらそこ、白地にほっとしない!『僕はやましい事を隠しています』と言っているようなものでしょう!
「お風呂」
「え?」
「お風呂貸してください。汗かいたので」
「あ、はい。すみません、先に行っててください。脚が痺れてしまって」
む、私は今、入りたいんですよ。よっこいしょ。
「わぁ?!春姫!?下ろし「うるさいです」
私、結構力持ちなんですよ。なので運んでいきます。おんぶは面倒なので横抱きで。
案内だけさせて後は放置。お風呂、気持ちよかったです。