お姉ちゃんとの時間
私は陽菜ちゃんと別れてから、直ぐに帰宅した。なんとなく寄り道する気分でもなかった。ごめんなさい嘘です。カフェに一人で行けるほど強くないです。陰キャ舐めんなよぅ?
そんなわけで家に帰って玄関で靴を脱いでいると、階段からタイミングよく顔を出したのは、お姉ちゃんだった。私に似た銀髪をなびかせて階段を降りてくる。
「あ、おかえり白羽」
「ただいま〜お姉ちゃん」
いつも通りに挨拶を交わすと、お姉ちゃんは嬉しそうな顔をしながらリビングに入って行った。お姉ちゃんは、毎日のように交わす私との挨拶でも毎回嬉しそうにする。
でも正直私も嬉しい。当たり前のように交わされる家族での会話は、私にとって特別だ。両親が他界してからは、親戚に引き取ってもらったけどそこまで会話はしていなかった。だからこそ、今世での家族との会話は大切にしていきたいと思っている。もちろん交友関係も大切にしたい!
私も二階にある自分の部屋で、制服を脱ぐ。制服を着たままで寝転がると、制服に皺がついてしまう。ただですら色んな人から視線を向けられるのだ。常に服装や見た目には注意している。こういうところで私は小心者だ。
着替え終わり、リビングにあるソファーへと一直線で向かう。そしてダイブ!!これは私の家に帰ってからのルーティーンとなっている。私は干物妹になっているのかもしれない。というかあのフォルムだったら、ソファーで寝返りをうてるので便利だと思う。
「しあわせ」
「白羽……あたしの膝枕はいる?」
「いるー!」
ソファーにダイブして幸せを噛み締めている私に、お姉ちゃんは膝枕をしてくれる。お姉ちゃんの太腿は本当に心地がいい。ふわふわで、柔らかくてあったかいから直ぐに寝てしまう。このふとももは人を堕落させるやつだ。
「お姉ちゃん……いつもありがとう」
「ふふ、どういたしまして」
私がお姉ちゃんの太腿に頭を預けると、頭を優しい手つきで撫でられる。あぁ……愛情と幸せを感じる。そうして私は、重い瞼を閉じた。
寝る間際にお姉ちゃんの顔を見ると、頬が上気していて瀬那と似たような熱っぽい目をしていた。
ーーーーーーー
次に目を覚ますと真っ先に目に入ってきたのは、お姉ちゃんの胸だった。顔が半分以上隠れている。大きいなぁ〜。
「あ……白羽起きちゃったんだ。もう少し寝てても良かったのに……」
「流石にこのままは申し訳ないよ」
「白羽、あたしは白羽のためならなんだってするから!」
急に熱が入ったように意気込み始めた。いやお姉ちゃん……なんでもとか言っちゃ駄目ですよ??本当になんでもしちゃうよ?
え……。お姉ちゃん……目が真剣だ。
お姉ちゃんは美人だ。勉強だって常に一位だし、人間関係もとても良好に見える。なんでもそつなくこなす優等生なお姉ちゃんーー冬咲冷夏。私と似た銀髪に、モデルのような身長、そして圧倒的胸の大きさ。あれ?私も身長……おっきくなるんだよね?泣
……なるといいなぁ(願望)
時計を見てみると、もうすでに夜の8時になっていた。当然のことながらご飯はまだ食べていないし、お風呂にも入っていない。
……ん?え、ちょっと待って、膝枕してたってことは、お姉ちゃんもずっとこのままの体勢だったわけで……。
「お、お姉ちゃん!ごめん。お腹空いたよね?」
「ん?気にしなくていいのに……。あ、そうか白羽はお腹空いてるよね!すぐ作るから待ってて!」
私がお姉ちゃんの心配をしたのに、お姉ちゃんが私の心配をし始めるという展開になってしまった。納得いかない。気遣いのカウンターを返された。日本人の必殺技だよね。
お姉ちゃんは素早くエプロンを着て、物凄い速さでご飯を炒めている。あれは、炒飯かな?
美味しそうな匂いが部屋を満たしていくと同時に、だんだんと寝起きで感じなかった空腹を自覚していく。思わず涎が出てきた。でも私は一切気にならない。美味しそうな匂いに私はそれどころじゃない。
「あ……白羽の口から涎垂れてる。可愛い。抱きしめたい」
お姉ちゃんが何やら独り言を喋っているけど、ご飯を炒める音で聞こえないかった。
そうして出来上がった炒飯を目の前にして、私の口からは涎が出ていた。お腹が……お腹がぁ!お腹が空きましたッッ!!
「白羽口から涎が出てる」
そう言って優しい微笑みを浮かべながら、お姉ちゃんはハンカチで涎を拭いてくれる。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして。ささ、召し上がれ」
「うん!いただきます!」
結局あまりの美味しさに、おかわりをした。




