悪党成敗
「お花のいい香りがする!私、好きだよこの匂い!」
私は、はっきりと目の前の瀬那ちゃんにそう告げた。
実際つけた香水はお花の香りがするものだろう。この匂いだと、薔薇あたりだと思う。
ではなぜ臭いと言われてしまうのか。その原因はつけすぎということだ。香水はつけすぎると、せっかくの香りが濃くなり、異臭にのように感じてしまうのだ。特に小学生のような五感が敏感な時期に嗅げば、なおさら臭く感じてしまうのだろう。
だけど、私は別にこのくらいは気にならない。だからはっきりと告げたのだ。いい匂いだと。
「え……え、わ、私、え?」
だいぶ混乱している。目をぐるぐるさせてあたふたしている。うん……可愛い!!
まあでも……そんなことを目の前で言われたら、もちろん面白くない人間もいるわけで。
こちらを睨みつけて、気に食わなさそうな顔をしている男子4人。うげぇ、怒ってるなぁ〜。
「おい!意味わかんねぇこと言ってんじゃねえぞ白髪ばばあ!」
「そうだよ!臭いでしょ!ぶすせな」
はぁ……。ため息が思わず出そうになる。というか!さっきからその白髪ばばあってなに!?微妙に傷つくんだけど!
だけど、匂いが強いことも確かだしな〜。だからこそ瀬那ちゃんには、あとで伝えるつもりだ。正しい香水のつけ方をね!
まあそれは、あとの話だ。今は目の前の問題を回避しなければならない。
……はぁ、めんどくせ。
「おい!なんとか言えよ!」
「うん。じゃあ言うね。……さっきからうるさいよ君達」
「……は?なんなんだよお前」
あえて火に油を注ぐ。
「人の失敗をぐちぐち言うしかできない人は格好悪いよ?」
そう告げると先ほど怒っていた男子が顔を真っ赤にし、さらに怒りを募らせる。油を注がれた火に水素を放つのが私の標準スタイルだ。フハハハハ!!芸術は爆発だッ!
そしてついに、目の前で顔を真っ赤にした男子は我慢できなくなったのか、私を殴ろうとして……。
「いったい何事ですか!!」
……やっと来た。遅いよ、先生。あと2秒くらい遅かったら私殴られてたよ?
「男子が瀬那ちゃんに対してくさいって言ってて」
「な!?なんてことを!」
おぉ!先生が珍しくキレている。先生は滅多に怒らない。小学校の先生で、怒らない先生というのはなかなかに珍しい。そんなことを思いつつ傍観しようとしていたところで、まさかの一声がかかる。
「白羽ちゃんも当事者みたいだね。話は聞かせてもらうからね」
「え」
え……まって!?先生、私今日は早く帰ってゲームしようと思ってたんだよ?
「先生私は関係ありません」
「ねぇ白羽ちゃん……加害者と被害者の間に挟まってたら、無理があると思わない?」
「……」
そしてその日は夕方まで帰れなかった。……ちくしょう。
結局そのあと男子たちは観念したのか、言ってくることはなくなった。当然、瀬那ちゃんが香水をつけすぎるということもなくなった。
そして事件の次の日、瀬那ちゃんが、顔を赤くしながら私の席まで歩いてきた。……どうしたのかな。
「ど、どうしたの?」
「あ……あのさ!!」
勢いがすごい。椅子ごと少し後退してしまったじゃないか。
「わ、私と友達になってください!!」
「……え?と、友達?」
「うん!!」
瀬那ちゃんは私に向かって手を突き出しながら、深くお辞儀をしてきた。いや礼儀正しすぎない?
というか……私と友達!?う、嘘だッッッ!!前世でも今世でも友達なんて存在は、一人もいなかった私に友達!?ゆ、夢じゃ……ないよね?
「い、いぃ!!いいよ!!」
「っわ!?びっくりした!」
思ったよりも大きい声が出てしまった。陰キャあるあるをここでやってしまうなんて。うぅ……恥ずかし。
私が恥ずかしがっていると、体全体を使って息を吐いていた。
「よかったぁー!断られたら立ち直れなかったから……」
「うん。わ、私も瀬那ちゃんと友達になれて嬉しい」
「私も嬉しいよ!瀬那ちゃん!改めてよろしくね!」
「うん!!」
改めて思い返すと凄かった。……告白レベルの勢いだったな。
それにしても……やったーー!初めて友達ができた!!生まれて初めての友達……嬉しさで飛び跳ねちゃいそう!!
その日の夜は嬉しくて寝られなかった……。ちなみに、お姉ちゃんも一緒に喜んでくれた。Thank you My sister.
それからは紆余曲折ありながらも、私は無事に小学校を卒業した。
卒業する頃には、瀬那はすっかり明るくなっていて、みんなとうまくやれているようだった。クラスに馴染めている瀬那を見ると安心する。
だけど瀬那がクラスの中心で、「私は白羽の親友だ!!」とみんなの前で宣言しているときがある。もうすっかり慣れたけど、時々恥ずかしい……。
それにしても、私は結局瀬那しか話せる友達ができなかった。もはや人見知りは私のステータスだと思っている。ATK,DEF,AGL,LUK,COM障……あれ?こう見ると明らかにデバフじゃない?字面から感じるデバフ感パないね。
……あとはたまに瀬那から熱っぽい視線を浴びることがあるけど、まあ気のせいだと思う。私たちは友達だから普通のことだよね。多分。
そうしてようやく私は、小学校を卒業した。
匂い匂い言いすぎて、ゲシュタルト崩壊が起きそうになりました。
さて、ついに白羽ちゃんが小学校を卒業しました!ここからは中学校編、そして高校編へと移行していきます!
この物語では女子も男子もヤンデレになっていきます。
是非お楽しみに。