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終末のレジスタ  作者: 甘味の僕
二章 狙われた少年
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三話「バラバラの中隊」

 任務開始から、はや一日が経過していた。

 ちょっとした驚きだったのが、この濃霧の中でも太陽の位置がある程度わかるという事だった。


 杏果たちは、霧の森の中で使えそうな洞窟を見つけて、そこを一時的な拠点としていた。

 近くに水場があり、これが非常に大きい。

 その道中を探索してきて、第三小隊はあることに気がついた。


 大したことではないが、森と言うよりは森林、と言うべき規模である事。

 そして同時に、山であること。


 任務の内容を聞かされた時に、相当な広さであることは言及されていた。

 その時点で気がついても良かったはずだが、改めて杏果は、考える力が足りてないという事を自覚しうんざりとする。


(やっぱり、難しいこと考えなくて済む討伐系が一番楽なんだけど、ねぇ?)


 敢えて第三小隊の弱点と言ってもいい思考力を突いてくるような任務になるのは狙ってか。或いはたまたまか。

 前者ならタチが悪い事この上ないが、後者ならば運が悪いと言うだけの話だ。


(……まあ、流石に後者なんでしょうけど)


 どちらにしろ、嘆くだけ無駄なのだが。


 第三小隊は今、洞窟を去って川沿いを歩いていた。

 おそらく、この方法ならば迷う事はあるまい、と暫くの間は探索の指標にする事にしたのだ。


 だが、この方法は楽には済まなかった。


「__せいっ!」


 杏果が歯を食いしばり、口を大きく広げて突っ込んでくる〈ウルフ〉を真っ二つに叩き切る。

 生きている以上、水場を求めると言うのは魔物であっても変わらないようで、こうして川沿いでの戦闘がなんだかんだでよくあった。

 

 杏果が歯を食いしばるのは、切羽詰まっている訳ではなく、つい力が入りすぎてしまう癖のようなものだった。


「ふぅっ、これで何体目だっけ?」

「あー、確か十三、だったか?」


 一息ついて、戦斧を肩に担ぎなおす杏果に、出番の無かった響弥が指折りをしながら呑気な声で答える。

 そんな会話をしている二人の前で、静音は無心で素材回収を進めていた。


 正直、この環境では静音や莉緒が得意とする偵察はあまり役に立たない。佳奈恵の索敵魔法はどうか分からないが。

 そうなると、戦闘力で劣る静音は立つ瀬がない。

 だからといって杏果にも響弥にも、彼女を責めるつもりは全くないのだが、これは静音自身の心の問題だった。


 有り体に言うと、静音の機嫌があまり良くない。

 それを表に出そうとしないだけ、短気な杏果は立派なものだと思うが、感情を押さえ込んでいるのは目に見えていた。


「……ごめんね、静音。面倒事ばかり任せちゃって」

「うん、まあ、今の私じゃこれくらいしか出来ないし。むしろ二人に戦わせてばかりで申し訳ないくらいだよ」

「俺らは大丈夫だぞ? 襲って来るっても、この程度の魔物だしな」


 機嫌はよくないものの、そこまで強く気にしているわけでも無さそうだ。


 現状は、救援が来るまでに探索を進める以外にすることが無い。

 もっと言えば、探索を進めることこそ急務とも言えるが。

 救援が来たところで、出る事ができないこの結界を解除する術がなければ結局、結界に捕まる魔術師が増えるだけだ。


「誰が来てくれるか分からないけど、出来るだけの情報収集はしなくちゃね」


 そうして第三小隊は、更に奥へと足を進めていく。


 第一小隊、第四小隊との合流まであと__




 休憩を挟みつつ、走り続けて約六時間が経過した。

 体力が尽きるほどではないが、やはり速力に劣る将真は危うく置いてかれかけた。

 それでもなんとか追いすがる事が出来たのも、将真が少なからず自身の成長を実感した瞬間だった。


 現在地は、地図にするとおそらく四国に当たる場所。目の前に広がるのは濃霧に覆われた森林。

 つまり、目的地だ。


「話には聞いてたけど……」

「これは想像以上だね……」


 山とも言えるそれを見上げ、将真とリンは思わず声を上げる。

 その間に佳奈恵が魔導書を開いて、索敵魔法を展開する。

 誤って、森の奥に入り込むことの無いように慎重に進むと、少し森に足を踏み入れた辺りで佳奈恵が足を止める。


「……この辺り、かな」

「何がだ?」

「結界の境目ッスよ」

「そんな事も分からねぇのか」

「うるせぇな」

「もー、喧嘩しないで!」


 相変わらず感じ悪く、煽るような言動をする猛に食ってかかりそうになる将真だが、佳奈恵に叱られて啀み合いながら顔を背けた。

 その光景に、美緒が呆れたように小さくため息をつく。


「とにかく、ここから先に入り込むと、連絡が取れなくなるって事でいい?」

「うん。この先、索敵魔法でも見通せないから、多分その手の魔術や魔法も妨害されちゃうんじゃないかな」

「じゃあ、今のうちに柚葉さんに連絡入れとくッスね」


 そう言うと、莉緒は少し離れたところで通信を飛ばす。

 その間に、猛が美緒に対して耳打ちする。


「……美緒。ちょい先行して、結界の様子を見てくる」

「……危なくない?」

「入ったら極力動き回らないようにはするが、俺が中から出てこなけりゃそういう事だから、お前らも後で入ってこい」

「……わかった。危ない事はしないで」


 最後の言葉には無視を決め込む猛に、美緒は困ったように再びため息をついた。

 確かに、中に入ったらどうなるか、そして出入りは可能なのか。それを改めて確認する必要はある。

 もし本当は出入りが可能だった場合、中に入っていった者達の命は期待しない方がいいだろう。


 だが、その話を聞いていたのは美緒だけだ。

 将真たちからすれば、いきなり何も考えず、結界に入り込もうとするその行動にギョッと目を剥く。


「お、お前なんのつもりだよ!?」

「うるせぇ、お前には関係ねぇ」

「関係ないことはないだろ!?」

「もうっ、猛も毎回喧嘩売ってないでちゃんと説明してよっ!」


 プンスコという表現が似合いそうな怒り方をする佳奈恵に、流石の猛も気圧されたように一歩後ずさる。


(毎度の事だけどコイツ、チームメンバーには弱いな……)


「……一回入ってみて、どういう結界なのかを中と外から確認するって話だ」

「それならそうと早く言ってくれればいいのに……」

「……言ったら煩いだろ」

「むっ……」


 猛のボヤくような反論に返す言葉もなく、佳奈恵が口を噤む。

 そんな彼女を横目に、猛は躊躇なく結界の中へと足を踏み入れる。


 その瞬間、猛の姿が一瞬にして消えた。


「……はぁ!?」

「えっ、猛!? 大丈夫!? 聞こえたら返事して!」


 あまりに唐突な事に思わず将真は声を上げる。

 驚いたのは皆同じだったが、中でも慌てた佳奈恵が呼びかけてみるが、猛からの返答はない。


「これは……」

「多分、声が届いてないだけ。結界の中と外が、完全に隔離されてるって事」


 状況を思考する莉緒の隣では、大体察しが着いた美緒が推測を口にする。

 更にいえば、徐々に見えなくなった訳ではなく、一瞬で消えた事を考えると。


「……境界に触れたら、多分強制的に飛ばされて、結界の中に取り込まれる感じ、かな」

「そう……ッスね。多分それで、間違いないッス」


 二人が、少しずつ結界の性質を解き明かしていく様子を、将真はおかしなものを見る目で見ていた。


「……どうしたんスか?」

「いや、よくそこまで考えつくよなって思って……」


 そうして猛が出てくるのを待ってみるが、数分経っても戻ってくる気配すらない。

 触れた瞬間、結界内で即死という想像もないではなかったが、単純に入る事は出来ても出る事は出来ない結界なのだろうと結論づける。

 そうなると結局、結界の解除のためには中に入るしかなかった。


「じゃあ、入るッスよ。心の準備はいいッスか?」

「おう」

「あっ、う、うん。大丈夫だよ」


 将真も、少し緊張しているようだがリンも、問題は無い。

 美緒と佳奈恵は、改めて確認するまでもなかった。


「それじゃあ、行くッスよ……」


 流石に莉緒も少し慎重になりながら、恐る恐る境界に手を伸ばす。

 と言っても、明確に境界の場所を知っている訳では無いため、ジリジリと、少しずつ前進しながら。


「お__」


 そして自分の体に一瞬、変化が起きたことを感じた莉緒が声をあげようとする。

 だが、何かを言う前に、莉緒の姿が一瞬で消えた。猛の時と全く同じだ。


 それを改めて確認し、残された四人は顔を見合わせると、同時に結界の境界に触れた。

 その姿が、先行した二人同様に、一瞬でその場から消失して__死ぬ、という事は幸いと言うべきか無かった。


「おっ……」

「やっぱり、転移させられるみたいッスね」


 森林の中ではあったが、そこは先程と違い、見覚えのない場所だった。

 更にいえば、結界の中に入った今の方が、圧倒的に霧が濃い。


 先に入った莉緒も、更に先行していた猛の姿もしっかり確認できた。


「出る事も出来ねぇみてぇだな」

「猛……、無事でよかったよ」

「ふん、心配しすぎだ」


 安心したように胸を撫で下ろす佳奈恵に、少しバツの悪そうな顔をする猛だったが、それも一瞬の事だった。


 改めて、中に入った今、結界の性質について整理する。


 入る事は可能だが、出ることは不可能。

 更には、結界に入った瞬間に転移させられることもわかった。

 通信は不可能。索敵魔法の妨害。この辺りは予想通りだ。

 だが、物理的な問題も発生していた。

 想像以上に霧が濃く、辛うじて見えている範囲でも半径十メートル程がせいぜいだ。

 莉緒が偵察に回るという作戦も使えそうにない。


「……固まって動くしかないッスね」

「う、うん」

「そうだね」


 憂鬱そうな表情を浮かべる莉緒に同調し、リンと美緒は頷く。


 かくして、一同は慎重に慎重を重ねて、離れすぎないように第三小隊の創作を開始するのだった。




「嘘でしょ……」


 霧の中を進み続けて数時間。

 状況の悪化に杏果は嘆くように呟いた。

 だが、無理もない。


「まさか川沿いに移動していながら迷うなんて……」

「まあ、途中で枝分かれしてたしなぁ」

「面倒な魔物にも襲われたしね……」


 川の枝分かれまでで済めば良かったのだが、静音が言う面倒な魔物とは、蛇型の魔物(サーペント)の事だ。

 この濃霧の中では、杏果たちは勿論だが、実は襲って来る魔物たちも彼らの姿を明確に捉えられている訳では無い。

 それでも人間の感覚よりは鋭いのだが、やはりこの結界が非常に厄介なもので、視覚だけでなく、嗅覚にも頼りにくい。

 頼れるとすれば、せいぜい聴覚くらいだ。

 それは逆に、杏果たちにとって微々たるものだが、安心要素となっていた。


 ところが、蛇には濃霧の結界を意に介さない。熱を感知する能力があるからだ。

 濃霧の結界内は少し涼しいくらいなのだが、それが余計に自分たちの居場所を知らせるかのように目立たせる。

 襲って来ると分かっていれば対処は出来るが、厄介な事に変わりなかった。

 加えて、その体躯が数メートルに達するともなれば、この濃霧の中で相手にするのは面倒極まりない。


 そうして倒した大蛇を、休憩がてら火で炙って食す。

 出来る限り、手持ちの食料を温存しておきたい時は、こうして現地で倒した魔物や魔獣を食べることは珍しくもない。

 尤も、何の処理もせず口にすればとても食べられたものでは無い。

 そしてこの場合の処理というのは、血抜きならぬ魔力抜きだ。

 血抜きも当然するのだが。


「……淡白な味ね」

「そりゃ大した味付けはしてねーしな」

「持って帰る?」

「まあ確かに帰ってから響弥に作らせてもいいんだけど」

「俺かよ!」


 思わず突っ込む響弥だったが、仕方がないというのは杏果と静音の共通意見だ。

 この三人の中で、一番まともに料理ができるのが響弥なのだから。


 そんな気の抜けた会話をしているが、警戒は緩めていない。

 むしろ緩めろと言う方が難しい状況ではあるが。


 だから気づくことが出来たのだろう。


「……何か、囲まれてる?」

「……そう、だな」

「気配感じるね。なんだろ、これ」


 その正体までは分からないが、何らかの存在の接近に気がついた三人は、静かに腰を上げる。

 決して少なくない数だ。

 気配だけで明確な数がわかるほど、器用ではないが。


「……十はいるわね?」

「そんなもんじゃねーぞ多分」


 背中を合わせて、武器を構えながら、その正体がハッキリするまで待機する。

 そうして少し時間が経って現れたのは、緑の肌をした人型の怪物だ。

 それは所謂〈ゴブリン〉と呼ばれる、魔物或いは低位魔族として知られる存在であるが__軽く二メートルは超えるような、通常のゴブリンの倍近くもある体躯。

 それが群れとして現れれば、脅威以外の何物でもない。


 ゴブリンのランクはオークとほぼ同じで三段階。

 〈通常ノーマル〉、〈上位ホブ〉、〈王種キング〉だ。

 そしてこの群れは。


「ホブゴブリン……!」

「いや、ちょっと……、多くねぇ!?」


 十はいる、と見た彼らだったが、見える距離にいるホブの数ですらそれを優に超え、更に奥の方にまだそれらしき影も見えていた。

 確かに、これは多すぎる。

 スタンピードと言われても、不思議ではない数だ。

 それでも、ゴブリンにオークほどの脅威はない為、条件が同じならば何も脅威は無いのだが。


(今は私たち三人だけ……! この数のホブを、この環境で相手にするのは正直、ゴブリンと言えどもしんどいわね!)


 引き攣った笑みを浮かべる杏果。

 それでも彼らは、既に臨戦態勢にあった。


「……やるわよ!」

「チッ、しゃーねぇなぁ!」

「ちょっと怖いけどね!」


 杏果と響弥が、二人同時に足を踏み込む。

 その瞬間、三人の足場を確保出来る範囲が隆起し、その外側が逆に陥没する。

 そこに、川の水まで流れ込み、先頭のホブを巻き込んでいく。

 先手必勝だ。


 怒り混じりの醜い声を荒らげて群れの視線が向けられるが、今更怯むことは無い。


「__さあ、行くわよ!」

「おう!」

「ええ!」


 足場から飛び降り、杏果たちが優位に立った状態で、二つの勢力がぶつかり合う。




「……何か、何も起きねーな?」

「そうッスねぇ……」


 何処かにいるであろう、第三小隊を探し始めてはや一時間以上が経過した。

 その間、ずっと警戒して歩みを進めていたが、現状、魔物が飛び出してくるということすらなく、至って静かだった。

 それが逆に、嵐の前の静けさのようで不気味だが、こうも何も無いと、気を張っているだけになるので疲れてしまう。

 実際、将真は空腹を覚えていた。

 昼食は到着前に、確かにとったはずだが。


「……簡単に食べれるもんでも持ってこればよかったか」

「あ、それなら将真くん。飴ならあるけど、食べる?」

「準備いいな……。そうだな、貰っとく」

「緊張感足りてねぇな、オイ」

「別に気ぃ抜いたわけじゃねーよ」


 リンから飴を受け取りながら、今日何度目になるか分からない、噛みつくような猛の態度に眉を顰める。

 だが、お互いのその態度は長くは続かない。

 想定以上に二人の仲が宜しくない事を漸く理解したらしい佳奈恵が、啀み合いに気がつく度にじろりと非難がましい視線を向けてくるようになったからだ。


「でも緊張感が保てないのも仕方ない。こうも何も起きないと、適度に気を緩めておかないと本当に疲れる」

「何も無いに越したことはないんだけどね……」

「そうッスねぇ」


 美緒の意外な言葉に、佳奈恵が苦笑を浮かべて弱気な事を言うが、莉緒も同意するように頷く。

 とは言え、魔物は出ずとも戦闘の痕跡はあるのだから、おそらくこの道を進めば、誰かとは会えると思うのだが。


 それが杏果たちである保証はない。

 出られない結界である以上、中に入っていった諜報員が生き残っている可能性も、ゼロではないのだ。

 幾ら望み薄であると言っても。


「……ん?」

「……なんの音?」

「音……?」


 そうして更に歩くこと数分。

 莉緒と美緒が、何かに反応して足を止めた。

 美緒の呟きに首を傾げながらリンを見ると、彼女も首を振る。

 猛や佳奈恵も、特に何も感じないようだった。


 一体、二人には何が聞こえているのか。


「……これは、魔物の群れッスかね」

「何かは分からないけど、凄い数。スタンピード級かもしれない」

「うぇっ!? それって大丈夫なの……?」

「大丈夫、とは言い難いッスけど、リンさん。どうやら連中に突っ込んでく必要がありそうッス」

「どういう事だよ……?」


 不安そうなリンの代わりに、将真が疑問を投げ掛ける。

 それに応えたのは美緒だった。


「……何かを囲んでるような感じで展開してる。いつからこの群れが戦ってるのかは知らないけど、この規模に対抗できる戦力があるとしたら……」

「……諜報員、ではない?」

「第三小隊って事か!?」


 吸血鬼騒動があったあの任務、本来はオークのスタンピード鎮圧という目的だったのだが、あの時は中隊編成で挑んだのだ。

 それも、その殆どを美緒の神技で一掃すると言う酷くあっさりとした、楽な方法で乗り越えてしまった。

 幾ら相手が低位魔族と言っても、流石にあの数をまともに相手をしていたら、骨が折れるどころの話では無い。


 だが、今の話が本当なら、当時と同じような状況を、小隊規模で相手取っているということになる。

 如何に第三小隊が優秀でも、いつまで持つかは分からない。


「急がなきゃヤバいだろ……!」

「焦っちゃダメッスよ将真さん。言われずとも、今すぐ向かうんスから!」


 そう言うと、警戒をしつつも、先行して莉緒が飛び出していく。

 それに続くように、一同も駆け出していくと、間もなく魔物の群れと接敵した。


 その魔物は__


「ホブゴブリンの群れ!?」

「ホブが群れるだぁ!? ノーマルもいねぇのに、んな事あるか!?」


 ホブゴブリンのみという珍しいその光景に、第四小隊ですら声を上げた。

 だが、美緒はそれを見た時には既に、攻撃の準備に入っていた。

 肌を撫でる冷気が、美緒を中心に漂い始める。


「……合図したら、跳んで」


 そんな美緒の言葉で脳裏を過ぎるのは、オークを一掃したあの魔法だ。

 一同は顔を見合わせると、美緒を守るように展開しながら警戒しつつも、何時でも動ける体勢を作る。


「〈神気霊装〉第一解放。今回は控えめで……、神技〈絶対零度アブソリュートゼロ〉」


 コツン、と美緒が薙刀の石突で地面を叩く。

 その瞬間、将真たちは一斉に跳躍する。その高さは凡そ三メートルほど。

 身体強化をした状態で軽く跳んだだけではあるが、高さは十分なのか、果たして。


 彼らが跳躍した直後、美緒を中心に凄まじい勢いで、全てを凍てつかせる暴力的な冷気が拡散した。

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