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 名もない少年アリス  作者: 若草伽藍
1/6

 イヌ穴に落ちて

 アリスのお話が大好きで、オマージュさせて頂きました。

前半話が分かりづらいかもしれませんが、最後まで読んでいただけると幸いです。

 今回は自分の周りの人をイメージしたキャラクターですので、少し恥ずかしいですw

 


 物語はウサギを追いかけて穴に落ちてしまう所から始まる。それは皆が知るアリスの話。でも、僕のお話は少し違う感じで始まった。

 

 「チロル!?どうしてここにいるの?」


 茶色でチロルチョコみたいだからチロル。昔、僕たち家族が飼っていた犬がそこにいた。どんくさくて、大食いで、よくやらかしていたのも懐かしい。

 チロルは3年前に亡くなった。肺に水が溜まり、一度抜いてもらったが、獣医は「もう長くないですよ。」と冷静に言った。だから、母と僕は「そうですか。」と冷静に受け止めた。


ー うぅわん!

 

 チロルの独特な声が辺りに木霊する。ここはどこだろう。万緑が宇宙に負けないように広がっていて、人影は何処にもなかった。


ー うぅわん!


 「分かったよ、チロル!そう急かさないでくれ!?」


 チロルが森の奥へと誘う。ちょうど散歩を楽しんで行っていた頃の姿のようだ。でも、僕の記憶の中では散歩を行くのを嫌がり、一日中同じ姿勢で自分の死を受け入れている姿が印象強く残っていた。。


ー うぅわん!


 「早くしてよ!」


 えっ、、、!?


 確かにチロルの方から人間の声がした。しかも、日本語だ。(チロルは日本で生まれた犬なんだから、日本語が話せて当然か!)と納得しようとしてもそうはいかない。


 「チロル、しゃべれるの?」と一応聞いてみる。


 「いいから、早く付いてきなよ。」と返ってくる。

 

 やっぱり変だ。だけど、ここはひとまず彼女の言う通りにしよう。そこで、僕はチロルに付いていった。チロルはゆっくりと二足歩行で歩いていたが、走る時はさすがに四足歩行だった。

 よくみると大きな広葉樹の下に穴がある。中には確実に危険があると思うような感じがした。

 

 「大事なことは目をつぶらないこと、あらゆることからね!」


 そう言ってチロルは穴の中に潜り込んだ。

 あっ、、、。

 僕は慌てて穴へと駆け寄る。


 「だいじょうぶか~!!!」


 反響した声が穴が深いことを教えている。唾を飲む。

これはなんだっけ、何かに状況が似ているような。デジャブっぽいけれど、僕は一度も経験したことがないはずだ。

 「まあいいや、入るのはよそう。」得体の知れない穴に冒険するのは止めることにした。だって、この先を進まなければなにも起きないし、このままこの居心地のいい万緑の中にいられる。

 ふと、後ろを振り返ると世界を構成している何かが壊れていた。例えるなら液晶画面が割れたような、光や影すらも僕の知っている世界の物ではなかった。怖い。ここにいてはいけないような気がした。


 「どうしよう、、、。」


 穴はどんどんと小さくなる。このままここに取り残されるくらいならば、


 えいいいい!!!!


 穴の中へと滑り込んだ。


 最初、穴の中は暗かった。そして、すとんっと下に落ちてしまった。

 しかし、落ちれば落ちるほど明るくなっていくんだ。それも不思議だ。普通穴の奥はどんどん暗くなっていくはずなんだ。一度も穴に落ちた経験はないけども。


 「チロル~~~!」


 とりあえず、名前を読んでみた。穴は思ったよりも深くて思ったよりも退屈だったからだ。重力をなくした穴の中はまるで深呼吸しているようにゆっくりだった。

 穴の明かりはだんだんと僕の寝室のランプの明るさに近づいていく。ぼんやりと穴の下や穴の上を見下ろしたり、見上げたりしていた。


 「この展開、どこかでみたことがあるな、」


 犬を追いかけて深い穴に落っこちてしまうんだ。しかも犬は喋ることもできるし、足で歩くこともできる。

あれ、犬じゃなかったかな。どうやっても思い出せない。今の僕は思い出せないことが一杯だ。どうしてここにいるのかも、ここに来る前に僕は何をしていたのかも

全く思い出せない。


 ええっと、たしかこれは、、、。


 、、、、。


 、、、、、、、、。



 「アリスだ!」


 ようやく思い出せた時、僕は逆さまで穴の底にたどり着いた。


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