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~魔王様からの入電記録5~


「本日はご指名頂きありがとうございます、オペレーターの池田でございます」


もはや、こいつ異世界で何してんのって疑うレベルで、この魔王何してんの?と心のなかで発狂気味に直人は叫んだ。ただし、言葉に皮肉をたっぷりと漬け込んでねじりこんでやる。

しかし、悲しいかな。魔王には皮肉などという言語は通じず、カレーにスルーされた。


「うむ、実に久しぶりだな、直人」


まったくもって直人にとっては久しくない電話の相手であった。それは昨日話したばかりのクレーム魔王ことクレー魔王の声であった。


昨日の事件の後、コールセンター中の人間が面白がって直人と魔王のやり取りを記録から引っ張り出して聴いて、もんどりうって笑って、あだ名をつけた。その名もクレー魔王。もはやギャグセンスが紙一重すぎる名前がPC画面の電話番号の上に踊っていて、直人はしばらく息を止めた。

簡単な話、直人はすぐにクレー魔王が電話をかけてくる事は察していた。


何度も同じ電話をかけてくる人間は基本的に似ている。

認証欲求が強く、話をきいてくれという割に、とにかく同じ事を話す。


「その、お主いっておったよな?ワシは卑怯ではないとな」


そして、自分の都合のいいことしか記憶にない。


「それで、知らぬのよな、直人も勇者が生まれる時をな」


新たに記憶を捏造してくる。

まったくもって、直人は一言も、「知らないんです」とは言っていない。

「教えられない」といっただけだ。

それをクレー魔王は微妙に履き違えているが、この微妙な履き違えをたださない。

絶対に、同意しない。全て、流す。


「魔王様もお元気そうでなによりでございます」


あえて、相手のいいように捉えさせて、「なによ!騙したのね!」と言われたら、一言も言っていない記録を出す。これが、コールセンターだ。


「本日はどのようなご案件でしょうか?」


基本的にコールセンターは相手が目の前にいるわけではないので、仕草や言葉の抑揚をつけて、相手に感情を伝えなければいけない。時に言葉で騙し、時に態度でオトす。それがコールセンターの戦い方。


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