~魔王様からの入電記録15~
直人はその案に一瞬、躊躇したがすぐにいつもの不敵な笑みを浮かべて、魔王にこう提案した。
「では、魔王様のお力添えを致したいと思いますので、ただいま世界ランカーの数値を調節し、当センターのカートと勝負して勝った場合、即座に一位になれるようにいたしました。ぜひ、私共にお力添えをさせて頂けますか?」
「おお!まじか!さすが直人じゃな!」
「ですが、万が一にも魔王様が負けてしまった場合は魔王様みずから封印されるというのはいかがでしょうか?なにせ、勝負ですので、それ相応のリスクがないと面白みがないかと」
「面白い。乗った!」
致し方ないここは異世界代表として戦う他しかあるまい。
直人はいつもの笑みを湛えたまま、発案者の小野寺に視線を送る。その隣にはセンター最速のタイピングを誇る西 ゆかりの姿も見える。どうやら、この唐突な作戦に西も作戦するらしい。
三浦がゲーム機を操作して、アホカーを起動させている。そのゲーム画面には直人がいつも使っている犬のキャラクターが車に乗っていた。
気が付けば、いつの間にか電話のコール音は途切れていた。
忙しいはずのコールセンターは何故かシン・・・と静まり返っている。
魔王のせいだろうか?いよいよ、もって、この勝負・・・。
負けられない
「直人、ワシの凄腕テクニックに驚いても良いのじゃぞ」
「ぜひ、拝見いたしいです。魔王様があの旧ウイカーランキング1位の《魔王様》なら」
「言うではないか、直人め。ワシは魔王じゃぞ?後悔してもしらぬぞ?」
「滅相もございません。私ごときが魔王様に勝てるなど、万に一つもありませんので、ご安心ください」
負ける気は全くないのだが、そんな事は1ミリも見せずに・・・、否、聞かせずに直人は自分が負けることが確定しているような声で言った。
誰もが鳴らない電話機からはなれ、異様なアホカーのレース画面に釘付けになっている。
気が付けば、窓からは赤い光が漏れている。他のSV達が何やら騒いでいるので、きっと、魔王の影響で何かあったのかもしれない。
しかし、今の直人にそんな事を気にする余裕などない。
魔王に悟られてはいけない。この絶対的な究極の一手を。
「このこの~!」
西がすっと手をあげてくる。小野寺がこくりと頷く。
三浦の操作する画面が変わり、マグマや火の玉が飛んでいる恐ろしいステージを映し出す。
その画面には『3チャンネル:東京支店レース』と書かれている。
『ロビンさんがエントリーしました』と表示され、犬のキャラクターが車に乗りながらギターを弾いている。
「魔王様、せっかくですので、当センターで特別ステージをご用意させていただきました。チャンネル3番の東京支店レースにご参加ください」
「まじか!?」
ゲーム画面に『魔王様さんがエントリーしました』と表示される。
「おお!直人やるではないか!このステージはまさしくク○パ大王のステージか!?こんなステージ見たこともないぞ!早く勝負しようではないか!!」
「ええ、異世界の命運をかけたウイカーの勝負をはじめましょう」
亀の甲羅を背負ったキャラクターがフラッグを振っている。
3・・・2・・・1
《GO》
あれ?もしかして、皆様、読んでくださっているかんじなのでしょうか?もし、お前面白そうな事してんなぁなんて思ってくださったなら幸いです。ようやく、魔王がここから伏線を最大限に回収しながら、ばらまくので、皆様、どこでどの伏線が回収されて、投げっぱなしなのか、確認しておいてくださいね。
あー次の話がもう言いたくてたまらないのですが、その話は今度にしましょう。