~魔王様からの入電記録14~
「大変お待たせいたしました。申し訳ございません。魔王様」
「よいよい、ワシと直人の仲じゃろ」
魔王とそんなに仲良くなった記憶は、直人の方にはまったく無かった。
しかし、ここはあえてスルーしよう。
直人は無理矢理にでもひきつった笑顔を作って、言った。
「本日はどのような、ご相談でしょうか?」
「いや、ワシ考えたんじゃ。流石にこっちに転生勇者が流れすぎて、そっちの人口がたりなくなって困るんじゃなかろうかと思ってな。それで、ワシみずからそっちに行って神的な何かと交渉しようかと思うておるのじゃ」
は?
言葉にこそ出なかったが、直人の頭の中は「は?」でいっぱいになった。
「いやー、ネット回線もひけて、データくらいのミニマムサイズなら魔王の一部がそっちの世界に行けるって事が分かってな。それで、データにのせて、ワシみずからが交渉しようかと」
「あ、直人はほんによくやってくれたからの。特別に魔王軍に入団させてやるから安心していいぞ。ワシ、良くしてくれた人には優しくするタイプじゃから」
魔王が・・・、ファンタジーから・・・、こっちに来る!?
why!?
「アホカーってあるじゃろ?あれの新作あるじゃろ?あれの世界1位になったら、ワシがそっちにいけるように、この間の転生勇者が色々やってくれてな」
なんて事してくれたんだ!あの堕落勇者!!
「あの、魔王様。申し上げにくいのですが・・・」
「あっ、場所は言えないんじゃろ?こっちで勝手に直人の場所は見つけてあるから心配はないぞ。それも転生勇者がやってくれたからの。あの転生勇者すごいぞ、同じ転生勇者を我ら魔族より酷使して、なんか色々な魔法を作っていきおった」
直人は思った。何故だ勇者よ。何の恨みが・・・。ハッと直人は気がついた。
勇者の言葉を思い出したのだ。
『まあね。徹夜の途中でみんなのお弁当買いに行って、トラックでひかれるまでだけど』
徹夜でみんなのお弁当買いに行ってトラックに当て逃げ・・・。
転生勇者はこの世界に対して恨みがたくさんあったではないか。
だからなのか。だから、魔王をけしかけるとは。
「魔王様、少し確認したいのですが」
「よいぞ」
「その場合、私たちの世界はどうなってしまうのでしょうか?」
「んー、まあ、ワシが行くんじゃし?最悪崩壊するかもしれんな。大丈夫じゃ、ワシ崩壊させない自信あるからの。ついでに、観光もしたいしの。それに、こちらの魂をそちらに転生できれば人口も戻るし良くないか?」
「具体的にお伺いしてもよろしいですか?」
「うむ。ワシの配下である魔族が生まれてくるやもしれぬな」
これ、絶対、阻止しなきゃいけない案件なんじゃ・・・。
直人は血のけが引いた。
現世に魔王降臨。例え、神的な何かがいたとして、そいつが今までに何かしたことは少なくともない。
むしろ状況をどんどん悪化させている。
とすると、魔族誕生からの・・・地獄絵図。
魔王が王城にドカンとやったのを国会議事堂にやったら?
もし、それが、俺の失態のせいだとわかったら?
考えただけでも恐ろしい。
「ま、魔王様?あの、失礼ですが、魔王様みずからお越しいただくのは、大変、その、申し訳ないと言いますか・・・」
「なに、案ずるな。直人はもうワシの部下みたいなものじゃろ?」
いやいや、この魔王なに言ってんの?
俺ちゃん魔王の部下になったつもりないよ!?
どうする!?どうするんだこの状況!?
そんな、焦る直人の右脇からすっと紙が出される。
紙を渡してきたのは小野寺だった。
そして、小野寺は究極的な解決法を紙に記してきたのだった。
前の週から週一更新にかわりました!で、一回、クレー魔王の話にオチをつけますね。じゃないと、伏線をみんなが忘れちゃいそうなので。