~魔王様からの入電記録13~
冬も最中、クリスマスバーゲンが始まった頃。奇しくもアホカーの新作が発売された日のことだった。12、1月だけの短期でまたまた入ってきたギャル、城ヶ崎 未来の真っ白な手が上がる。夏の日焼けなどなかったかのように真っ白な城ヶ崎 未来はまたしても眉根を寄せて、口を尖らせる。
「チャラ男~!また、魔王来たぁ!なにこいつ!意味わかんない!」
直人は頭が痛くなるのをこらえるようにこめかみを抑えると、未来にSVの席に転送するように促す。
「ミライチャン、転送して」
「もー、こいつナニモノ!?」
「魔王じゃね?」
「そんなギャグ、ウケナイシ!」
と未来は理不尽を口で表すかのようにぶーぶーと言った。
今の俺もまさしく、理不尽なファンタジーに付き合わされていると直人は思った。
直人は頭の痛くなる理不尽を手早く片すため、ささっと未来の席のPCを操作して自分のSV先まで魔王の電話を転送する。
「ほら、ミライチャン、つぎつぎ~」
「も~!」
そうは言いながら、未来は次の電話を取る。
未来の席から自分の席に戻る途中で小野寺に声を掛ける。
「小野寺さん、例の魔王きたっすよ」
「お、じゃあ、僕もちょっとモニタリングしちゃおうかな」
「いいっすけど、半分位意味不明っすよ?」
「異世界の魔王なんでしょ?一応、記録は確認してあるよ」
「信じます?」
「う~ん。面白いから信じるかな」
「小野寺さん」
「まあ、電話だから、相手のことが見えない分、信じないと分からないかなって僕は思ってるよ」
そんな小野寺なら信じてくれるであろうと思い、直人は重い溜息をついて言った。
「実は、本当にクレー魔王が異世界の魔王っていったら信じてくれます?」
小野寺は一瞬、目を見開いて驚いたがすぐにいつものように笑って言った。
「信じるよ。その方が面白いから」
どこまでいっても、小野寺は小野寺だなあ・・・。と直人は思った。
「じゃあ、SV1番の席で魔王の電話、取りますから」
「ほいほ~い」
小野寺はモニタリングするためにSV2番の席に座って、ヘッドセットをかける。