~魔王様からの入電記録10~
「それは、なによりです」
引きつった笑みを浮かべながら、直人は適当に同意した。
「それでな、たくさんゲームを買って、勇者を魔王城で存分にもてなしてな!」
魔王の城に飾られた、哀れな勇者でも見て泡を噴いて倒れたのだろうか?
「実はさっき勇者が帰ったところじゃ!いやー実に楽しい宴であった!」
直人は勇者が気を使いすぎて帰り道、倒れているのではないかと不安になった。
「特にあの、なんだ、かけっこのゲームは面白いな!」
かけっこのゲーム???
直人にクエスチョンマークが浮かんでいると、そばでぼそぼそと声が聞こえた。
「魔王様、それアホカーってゲームですよ」
「魔王様、もう一回、勇者呼びましょう!」
「魔王様、こっちのゲームの新作が今、届きましたよ!」
魔王城はアホカーによって侵略されてしまったらしい。
確かに中毒性のあるゲームだが、まさか魔王と勇者を巻き込んでしまうとは。
というか、勇者は普通に遊んで帰ったのか?
お前、ちゃんと仕事しろよ、勇者だろ?!魔王倒せよ!
そのせいで、こっちは電話されているんだぞ!
「直人、お前も一緒に遊ばんか?」
おい魔王!!お前も仕事しないつもりかよ~!!
というか、この間、随分と物騒な事を言っていたワリにはなんだかホンワカしているんだが・・・。
「あ、魔王様!さっきの勇者がまだ、外にいたんで連れてきました!」
「ユウシャ・・・、モットアアソボウ」
その声に被さるように男の怒声が響く。
「おい、そこの女! お前も転生者なら、たすけてくれ!」
その声に凛とした女性の声が答える。
「なんで?私があなたをたすけて何かメリットがあるの?」
「なんでって!勇者が人を助けるのは当たり前だろ!?」
さも当然のように男の方が怒気を荒げて言う。
「そんなのRPGの世界だけよ。大体、あなたは人を助けた事があるの?無いのにそんな事いったりしないわよね?」
しかし、女の方はいたって冷静に冷たく言い放った。
「うぐっ」
「あら?図星だった?」
「勇者、今、こいつ黙らすんで、気にしねぇでくだせぇ」
「だいじょーぶ。気にしてないから」
あっけらかんとした女の声が電話口から聞こえてくる。