~魔王様からの入電記録8~
異世界からやってきたという、心優しい勇者に胸を打たれた魔王が考えたのは、異世界転生勇者に贈り物をする、という単純かつなんの捻りもない名案だった。
だが、その名案は直人の悪戯心をくすぐった。
こういう、いたずらはいけないとは思いつつも、直人はスラスラと言った。
「プレゼントのご相談でございますか?弊社の製品は幅広い年齢の方々に人気でございます」
カスタマーでこういう相談されたら、まあ、こう返すのが普通だけど、相手が異世界にいるの知ってて、こういうイタズラするの本当によくない。
「ほう。それは何じゃ?高いのか?希少なものか?」
「本体機種は5万円ほどです。本体をお持ちでしたら、ソフトのご購入をおすすめします」
「うむ。ゴマンエンのというのは、金や銀がどのくらい必要じゃ?ホンタイキシュというのはなんぞ?まあ良い、魔王城に導入じゃ。持って参れ」
「申し訳ございません。当センターは販売は行っておりませんので、お近くのゲーム機器を取り扱っている電気店での購入をおすすめいたします」
「デンキテンというのはどこにある?面倒じゃ、一式揃えて魔王城まで届けてもらえぬか?」
「できかねます」
「そうか。直人でも行けぬような何かものすごい所なんじゃな。まあ、ワシは魔王じゃから必ず、なんとかして入手して見せよう」
この後、直人は自身の言葉を後悔する事になる。
自分の悪戯心がとんでもない事態をカスタマーに陥れる事に気がつかなかったのだ。
よくよく考えれば、そんな事態は予想できたのに。