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「おじさん、これ何?」と古びた町内会館の裏手にある倉庫から、古びた汚らしい木箱を青年が持って来た。そしてそれを縁側に置いた。今日は、八月の第二土曜日だった。灯祭の準備に向けて、提灯を倉庫から出す日だ。
「さぁ、なんだろうね」と老人は初めてその巻物を見たような顔で言った。その顔は皺だらけであったが、その顔はどこか笑っているようであった。
「おばさんも知らない?」
「昔見たことがあるような気がするけど、何だったかな?」とお茶を飲んでいた老女が答えた。
見つけた青年は、他の仲間達と木箱の中の巻物を縁側で開きながら騒いでいる。
「今年はあの木箱、見つけた子がいるのね」と老女が寄り添うように小声で言った。
「作るかどうかが問題じゃないかな。今は昔と違って、子供も忙しいみたいだよ」
「あなたが政さん見たいに、作れって言えばいいじゃない」
「自分で言えばいいじゃないか」
「嫌よ。春の筍掘りで口五月蠅いおばあさんって言われたのよ」
「じゃあ、見守るしかないよ。道具の手入れもしなくてはならないね」




