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 健太と恵子が町内会館前の広場で、胴体を作っていた。胴体は、二つの円柱の凸の土台の部分に三メートルの長さの竹を重ねて行くことによって作られる。竹を円柱に乗せ、健太と恵子がそれぞれその竹を円柱の支柱部分に藁紐で縛り付けていくのだ。この作業も難しい。緩み無く支柱に胴体部分の竹を括り付けないといけない。胴体は丸い竹を積み重ねていく。円の上に円を重ねて行くような作業だ。藁紐に緩みがあると、積み上げた竹の重みで胴体の下の部分が崩れてしまい、三段腹のようになって、締まりのないロボットとなってしまう。そして竹が積み上がるにつれて作業をするべき場所が高くなっていき、梯子に乗りながらの作業となる。ロボットの正面に胴体となる竹を乗せて縛り付けたら、次はロボットの後面で同じ事をやる。交互に作業をするために梯子も移動しなければならないし、健太と恵子が息を合わせて左右の円柱で作業しなければならない。藁縄をきつく締めるためには筋力も必要だった。この作業を始めて三日、健太の腕は筋肉痛となっていた。恵子もきついのではないかと健太は思っているが、恵子が何も言わないので自分も泣き言の類いは言わないようにした。


 幅六メートルのロボットの両腕を取りつけているときに、政さんが小型トラックでやってきた。ロボットの完成を見計らって来たようなタイミングだった。

「こんにちは」という健太と恵子の挨拶を無視して、乱暴にトラックの扉を閉めた。そして、荷台から薪とポリタンクを降ろし始めた。

「灯祭の当日は、この薪を()べればいい。これには灯油が入っているからな。玄関にでも置いておけ」と政さんはそれだけを言って、またトラックの運転席に乗った。

「ちょっと待って下さい」と恵子は慌ててトラックの右に回り込み、運転席に乗っている政さんに話しかける。政さんは煙草にマッチで火をつけているところだった。健太も、恵子に続いてトラックの右側に回り込む。

()べるって、これを燃やすってことですか?」と政さんに訊いたのは恵子だった。

「そうだ。その竹人形を燃やしている炎を提灯の蝋燭に灯す火種にするのが本来の灯祭の姿だ」と政さんは言った。

「せっかく作ったのに燃やすんですか?」

「そうだ。それが灯祭だ」

「それならそう最初から説明してくれたら良かったじゃないですか」恵子は随分と怒っているようであった。

「それを教えていたら作らなかっただろ。それにお前らを担ごうと思って言わなかった訳ではない。竹人形に関して、灯祭の始まりで燃やすことも、一緒に手伝うこともしてはいけない決まりだ」と政さんは煙草の灰を灰皿に落としながら言う。

「それなら、私達では無くて、自分たちで作れば良かったじゃないですか」と恵子は食らいついた。恵子は完全に頭に血が上っていると健太は思った。老人会のメンバーがこのロボットを作るのは体力的に厳しい。それが分からない恵子では無いはずだった。だが、恵子が怒る気持ちも、健太にも十分なほど分かる。

「一度この竹人形を作った者は、再びそれを作ってはならない。それも決まりだ。儂も作ったし、お前の婆さんも作った。お前の母親だって作ったのだぞ」と政さんが健太の方を見て言った。

「え? 俺の母さんも?」と突然話を振られた健太は驚く。

「そうだ。まぁ、二人でよく頑張ったな。儂の時より出来が良さそうだ」

 政さんはそう言うと、トラックのエンジンを掛け、そのままトラックを走らせ何処かへ行ってしまった。

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