幼馴染=?
「織。この写真見ろよ」
朝から石原くんが大声で話しかけてきた。
そんなことしたら、女子の嫉妬がー……。
「石原くん、声大きいよ! てか、昨日と呼び方変わってるくない!? 昨日まで‘煌瀬’じゃなかった!?」
いいから、と強引に自分の席まで連れていく石原くん。
人の話はちゃんと聞こうよ……。
「この写真……」
「覚えてるか? けやき公園にあった、シロツメクサの広場。なつかしいよな」
石原くんが私に見せた写真は、私とまーくんの家の近くにあった、結構大きめの公園で撮られた写真。
シロツメクサが広がっている広場で、私とまーくんがピースしている。
なつかしいな、けやき公園。
広場の真ん中に大きな欅の木があるから、けやき公園なんだよね。
「めっちゃきれいだった~」
シロツメクサが咲いている広場が、公園の一角にあった。
確かここでシロツメクサで指輪を作ってまーくんが……。
「ここで結婚しよっていったんだっけ?」
「ぶっ」
彼は私の考えていたことを包み隠さず言った。
言ったー! 私が考えないでおこうとしてたことを、包み隠さず言ったー!
そんなこと朝から言わないでよ、石原くん。
戸惑っちゃうじゃん。
「どした、織? 顔赤いぞ」
「あ、赤い?」
「ああ」
なに意識してんのよ私は。まーくんが好きなんだろ?
って、まーくんって石原くんじゃん!
調子狂うな、ややこしい。
石原くんとまーくんは、私の中で一緒にはならないよ。
かたや学園のアイドル。かたや離れた幼馴染。
かたや好きなフリ。かたや初恋継続中。
「てかさー。俺は‘織’って呼んでんのに、なんで織は‘まーくん’って呼ばねえの?」
そこ突っ込まないでよ! 呼べないに決まってるじゃん!
女子の嫉妬はこの世で私が嫌いなもの第一位だよ。
ちなみに、二位はゴキブリ、三位はテストだけどさ。
女子の嫉妬はめんどくさいんだよ。
「‘まーくん’って呼んだら、石原くんのこと好きな女の子たちが怒るじゃん。石原くん、自分がモテてるってこと自覚してる?」
「してるよ」
してるんだ……。まあ、あんだけモテたら自覚するよね。
そりゃ私だって昔みたいに、なんて思ってるけどさ。
無理なんだよ。できないんだよ。
君はみんなのアイドルなんだから。
「俺は嫌だ。織が俺を他人扱いすんのは」
「結局、私に被害来るんだけど……」
私のげっそりとした声を無視して、石原くんは話をつづけた。
「じゃあさ、俺の彼女になれよ」
じゃあって……。そんな風に言うことじゃなくない? って、
えーー!?!?
「ちょっ、いきなり!?」
「まーくんが好きなんだろ? だったら俺のことだって……」
「石原くんとまーくんは別だよ!」
「どっちも俺だし。てか、ちゃんと言うな。俺は織のことが好きだ。俺とつきあってください」
真剣なその告白は、石原くんとして受け取ればいいのか、まーくんとして受け取ればいいのか。私は正直戸惑った。
「お願いします」
なのに、唇は勝手に動いていた。
学園のアイドルが初恋の幼馴染で、そんな人から告白されて、つきあうことになって……。
一気に加速した私の初恋は、どこに向かうんだろう。