第五十三話「贈呈」
お酒の話でもシリアスです。
トリア暦三〇一七年九月二十三日の昼過ぎ。
俺たちの歓迎会を兼ね、用意したザックコレクションを試飲していく。
今回メインで用意した香り・味のバランスが良い物がもっとも評価が高かったが、酸味の強いものや樽香の強すぎるものも意外と評価が高かった。
試飲の途中でウルリッヒが首を傾げながら、“水”について聞いてきた。
「そう言えば、この水は何で置いてあるんじゃ? 口直しに飲んでくれと言っておったが?……それに水に味なんぞあるのか? 儂にはさっぱり判らんのじゃが?」
確かに別のスコッチに移る時には俺の説明通り、水を口に含んで一旦香りを消していたが、味を確認しているような雰囲気は見当たらなかった。
「スコッチは水が命なんだ。仕込みの水で味が変わる。スコットのところじゃ、ラスモア村を流れるフィン川の水を使っているんだが、こいつが季節によって少し変わるんだ。春先の雪解けの時と秋の終わりじゃ、かなり違う……」
俺が説明すると、「水の味が変わるのか?」と不思議そうな顔で、二種類の水を交互に口に含む。
「やっぱり判らんわい」
首を傾げているウルリッヒに
「春の水は雪解けの水が多く含まれる。だから、少し味が薄いんだ。逆に秋は雨があまり降らないから、少し硬い感じがする……」
フィン川の水は東の大山脈であるアクィラ山脈の麓が源流だ。
伏流水が主で、少し高めの硬度の水なのだが、冬には結構雪が積もるから春先の水は硬度が少し下がっている。
逆に秋も深まった頃はからりとした乾燥した気候になるため、雨水がほとんど入らない。
飲んだ感じだが、硬水というほどの硬さはないが、日本で普段飲むような軟水より硬い程度の味がする。
「アルスの水はもっと硬い。少しだけえぐみのようなものを感じるはずだ」
アルスはケルサス山脈の斜面に造られた都市であり、水はすべて湧き水だ。
そのためかは判らないが、硬度がかなり高い。
フランスのコントレックスほどの強烈さはないが、エヴィアンやヴィッテル程度の硬度はありそうだ。
「さっぱり判らんが、スコッチ造りには水が重要じゃということだけは判ったわい」
結局、すべてを理解してもらうことはできなかったが、水が重要だという俺の主張は理解してくれたようだ。
スコッチの試飲が終わり、“ブランデー”の試飲となったが、こちらの評価はそれほど高くなかった。俺としては十分に飲めるマール――ワインの搾りかすから造った蒸留酒――だと思っていたが、味にインパクトがなかったことから、“スコッチ”の方に軍配が上がったようだ。
考えられる原因は小さめのグラスを使ったことと、スコッチを飲んだ後にすすぐ程度ですませたことだろう。それまでのスコッチの香りを移さないように新しいグラスに替え、更に香りのふくらみを考えて、ブランデーグラスか大振りのワイングラスを用意すれば、もう少し高い評価になったかもしれない。
その結果でもないのだが、ブランデーが開けられた頃から宴会モードに突入していった。
ホグスヘッド樽――約二百三十リットル入る中型の樽――ということもあり、十分な量はあるのだが、やはり飲みなれたスコッチが用意されていく。
ウルリッヒから「つまみを食ってもいいか」と遠慮気味に聞かれ、俺は大きく頷き、了承した。
その後はギルド職員たちによって、食事が準備されていった。更にワインやエールの樽も持ち込まれ、集会室には樽が五個ほど並んでいる。
その準備の間にウルリッヒが思い出したかのように、テイスティンググラスを見つめながら話し始めた。
「このグラスじゃが、相当な品じゃな。お前さんが作ったものなのか?」
ザックコレクションの味に気を取られながらも、ちゃんと気付いていたようだ。
「ああ、俺たちが作ったものだよ。ロックハート家が世話になった礼だ」
「ウェルバーンでも配ったそうじゃが……儂にはどの程度の値打ちがあるかしかとは判らんが、少なくとも千Cは下らんじゃろう……」
さすがに一つ千C(=百万円)はしないだろう。
俺は両手をひらひらと振り、
「ウェルバーンで配ったものよりは上等だが、そこまでの品じゃない。精々三百Cといったところだろうな。まあ、酒をうまく飲むためだから、この程度は掛けてもいいだろう……」
ウルリッヒは「この程度と言い切りよった……」と絶句する。
「今回は鍛冶師ギルドに納めるつもりだったから、特殊な細工を入れている分、少し価値は上がっているかもしれんが、まあ気にするほどじゃない」
だが、彼の方は軽口を首を横に振って否定する。
「これはただでじゃ受け取れん。儂も職人の端くれじゃ。こいつは対価を払うべき価値のあるものじゃ」
三百C、つまり一個三十万円として四百八十個あるから、一億四千四百万円の価値がある。更に値段が付けられないザックコレクションを受け取ったことから、対価を払うと言ってきたようだ。
「村を救ってくれたことに比べたら、この程度の礼は大したことじゃない……これは俺たちがみんなのために作ったものなんだ……」
それでも納得しそうにないため、酒のためという論法に切り替える。
「それに酒をうまく飲むためには必要な道具だ。受け取ってもらわないと困るんだよ」
これで何とか受け取ってもらうことになったが、それでもあまり納得していないようで、何やらぶつぶつと呟いている。
一分ほどすると、納得したのか、「こいつはありがたく受け取らせてもらう」と言って、笑みを浮かべた。
「相談なんじゃが、こいつはどのくらい作ることが出来るんじゃ?」
質問の意図がいまいち掴めない。
「そうだな。月に百や二百は作れると思うが……」
ウルリッヒは「そんなにできるのか」と呟き、
「このグラスを鍛冶師ギルド本部の正式な備品にしようと思ってな」
俺は更に意図が掴めず、「備品?」と聞き返す。
「言い方が悪かったか……何と言ったらいいんじゃ……つまりじゃ、備品というか、一人前の証みてぇな感じで、新しくここのメンバーになった奴に割り当てようと思ったわけじゃ……」
詳しく聞いてみると、鍛冶師ギルドはアルスにいるベテラン鍛冶師によって運営方針が決まるらしく、ここにいる三百人の鍛冶師たちは“親方”と呼ばれる資格のある者たちで、正式には運営委員会の委員のような身分らしい。
その“親方”資格を得た際に、その証として専用のグラスを与えることを思い付いたらしい。理由を聞いてみると、グラスの台部分の紋章を見て思い付いたとのことだ。
「……というわけじゃ。今の数でも足らんわけじゃないが、年に百ほど作ってくれんか。もちろん、報酬は支払うぞ……」
最終的に一つ百Cで年間百個を納入する契約となった。輸送は蒸留酒定期便が請け負うことになる。
宴会の準備が終わると、俺たちは一番前のテーブルに座らされる。俺たちはわりと慣れてきているが、スコットはかなり緊張しているようだ。
ウルリッヒが立ち上がり、「オホン」と咳払いをする。
ジョッキを構え、「ロックハート家、そして、スコット殿の歓迎会じゃ!」と宣言した後、ジョッキを勢いよく持ち上げる。
そして、次の瞬間、「乾杯!」と野太い声で叫んだ。
それに三百人のドワーフたちが同じように「「乾杯!」」と唱和し、宴会が始まった。
先ほどまでの試飲会とは異なり、そこかしこからワイワイという明るい声が聞こえ、用意された料理をつまみながら、ジョッキをあおっていく。
俺たちの席には代わる代わるジョッキを持ったドワーフたちがやってきて、スコットに感謝の言葉をかけていく。
三十分ほど経ったところで、ウルリッヒが再び立ち上がった。
「みんな聞いてくれ! スコット殿への儂らの感謝の気持ちを伝える!」
話の内容を知っている鍛冶師たちは足を踏み鳴らして同意する。
「スコット殿。儂らの感謝の気持ちを受け取ってほしい」
そう言うと、ギルド職員が一枚の金属製のプレートをウルリッヒに手渡した。それは五十cm×二十cmほどの鈍い銀色――素材はなんとミスリルだった――をしており、表面には美しい飾り文字でこう刻まれていた。
『我らが永遠の友の証として、この名を贈る。“Wishkey”』
ウルリッヒは静かにプレートを差し出し、
「我らの願いを叶える鍵なんじゃ、スコット殿は。おこがましいとは思ったのじゃが、貴殿に“名”を贈ろうと……受け取ってくれんか」
スコットは思ってもみなかった話に戸惑い、俺の方をちらりと見る。
恐らく勝手に受け取っていいのか悩んでいるのだろう。
俺はにやりと笑いながら、「父上には話を通してある。だから受け取ってやれよ」と彼に囁いた。
スコットは「ウィッシュキー」という語感から、「ウィスキー」が語源だと気付き、僅かに苦笑いを浮かべるが、ドワーフたちの真摯な眼差しに受け取ることにしたようだ。
「ありがたく受け取らせていただきます」
彼がそう言いながらプレートを受け取ると、再び、集会室は怒号の渦に巻き込まれた。
ただ、今回はそれぞれが言いたいことを叫んでいるためか、先ほどのような暴力的な音にはなっていない。
スコットは一瞬、先ほどのことを思い出し、僅かに顔をしかめるが、すぐに大丈夫だと気付き、笑みを浮かべる。そして、彼に祝福を述べる鍛冶師たちに感謝の言葉を伝えていった。
しばらくして、騒ぎがやや沈静化すると、スコットが謝辞を述べ始めた。
「この名の由来に恥じぬよう精進いたします。そして、私のような者を友と呼んでくれたことに対しても……」
再び、祝福の言葉が集会室を支配した。
今回、俺が考えたのは、スコットに“名”を贈ることだった。
鍛冶師たちから相談を受けるだろうということは何となく分かっていたし、実際、ラスモア村のベルトラムからも同じような相談を受けていた。
金や地位では難しいが、単なる“名”なら受け取ってくれると考えたのだ。
そして、思い付いたのが、“Wishkey”だ。ウィスキーのスペルは“Whisky”だが、“望み”とか“願い”という意味の“Wish”と、それを叶えるための“鍵”ということで“key”を繋げ、同じような語感の言葉にしてみたのだ。
ドワーフたちにとっては、まさに今までにない強い酒という“望み”を叶える“鍵”であり、彼らが贈る“名”としては申し分ない。それに今後の利権に絡むような意味も無く、国家から横やりを入れられることは考え難い。これが“我らが主”と取られ兼ねない名人という意味の“Master”などでは、ロックハート家がドワーフたちを支配しようとしていると勘違いされて問題になる可能性があるが、これなら問題はないだろう。
そして、もう一つ大事なことは、基本的にこの辺りの農村の平民たちは姓を持たないことだ。
もし、姓を持っていれば、生まれ持った姓名を変えることになるため、ウルリッヒたちが遠慮する可能性があった。だが、姓を持たないスコットなら、新たな名字を与えても先祖から受け継いだ姓を変える必要はない。
それに帝国でもロックハート領でも、元々姓を持つことを禁止しているわけではないから、全く問題はないのだ。
なぜ姓を持たないかと言えば、一番の理由は必要がないからだ。小さな村なら、“誰々の息子のジョン”とか、“東のトム”とかで十分に通用する。
これが人口の多い町では姓がないと取引や、特に徴税に支障が出るため、姓を持つことが多い。取引は契約の名義で必要になるし、ほとんどの街の徴税のスタイルは所得税と人頭税の二本立てであり、個人を特定する必要がある。
一方、農村では農民が個人で商取引を行うことは少なく、小さな商店か行商人と取引するくらいで、契約書を交わすようなことはほとんどない。また、徴税についても収穫した農産物に対して税を掛けるため、基本的には農地に税が掛かることになる。このため、住民の識別を厳格にする必要性があまりない。ちなみに、小さな村でも獣人などの場合は別で、氏族関係を明確化するためか、姓をつけていることが多いそうだ。
ラスモア村の場合、典型的な開拓村ということもあり、ロックハート家と従士たち以外はほとんど姓を持っていない。当然、同じ名前の者がいるのだが、“南が丘のゴードン”とか、“猟師のロブ”という言い方で、スコットの場合も昔は“醸造所のスコット”と呼ばれていた。もちろん、今では“蒸留所のスコット”と呼ばれている。
昨日、これを提案したのだが、最初、ウルリッヒは全く理解できなかった。
ドワーフの場合、基本的には姓を持っており、それを贈ることの意味を図りかね、「名字など、親から引き継ぐものじゃろう。第一、儂らドワーフは名字などほとんど使わん」と言っていたほどだ。
だが、その姓に意味を持たせるという説明をし、更にそれが彼らの意向に沿うものだというと、すぐに得心したのだ。
その後、スコットが苦笑いを浮かべて、俺に“ウィッシュキー”という名についての感想を話してくれた。
「ザック様が“スコッチ・ウィスキー”という名を広めたいと考えられたとすぐに判りました。正直なところ面映いのですが、鍛冶師方のあれほどの想いを見せられると断るわけにはいきませんし……」
俺は「今回は悪ふざけじゃないんだ」と小さく頭を振る。
「実を言うと、“ウィッシュキー”という言葉、“願いを叶える鍵”というのは、ドワーフだけの話じゃないんだ……」
俺は考えていたことをゆっくりと説明していった。
もう一つの意味だが、これは“ロックハート”という名と関係がある。
俺は“ロックハート”という名の家に生まれたことに、何か意味があるのではないかと常々考えていた。“ロックハート”、すなわち、“錠が掛かった心”という意味にも見える。
前世で灰色の人生を送ってきた俺にとって、“心に錠が掛けられた”という名は日本での生活を表しているとしか思えなかった。そして、スコットは俺が前世でやりたいと思いながらも出来なかったこと、つまり、心の奥底に封印していたことを開けてくれた“鍵”ではないかと。
やりたかったことの一つが酒に関する仕事だった。酒造りでも、バーテンダーでも良かった。酒が好きだし、うまい酒を作ったり、飲んでもらったりという仕事に憧れを感じていた。そして、この世界に生まれ変わり、記憶を取り戻してから取り組んだのが蒸留酒造りだった。
この蒸留酒造りもスコットと鍛冶師のベルトラム、内政担当の従士ニコラスがいなければ、成功しなかっただろう。特にスコットがここまで真摯に取り組んでくれなかったら、早々に諦めていたと断言できる。
確かに彼に代わって俺自身が手を出す可能性はあった。だが、俺には神から命じられた使命がある。これがいつやってくるか判らない以上、これほど早期に蒸留酒造りに着手することは考えにくく、まして、これほど早く成功することはなかっただろう。もし、俺自身が蒸留酒造りにチャレンジし、少しでも躓いたら、神からの使命を理由に早々に諦めたと思っている。
そう考えると、スコットが俺にとっても“鍵”だったのだ。
「……そんな想いを込めて、“Wishkey”という名を贈ることを提案したんだ」
スコットは目を見開き、俺を見つめていた。
「まあ、そんなに気負わなくてもいい。面倒なところを全部押し付けた“わび”みたいなもんだからな」
「そのような意味が……判りました。少し気恥ずかしい気はしますが、ウィスキーという名を広めましょう」
俺が右手を差し出すと、彼はしっかりと握ってくれた。
スコットはニヤリと笑い、
「そして、最高峰のウィスキー、ウィスキーの中のウィスキーには、必ずザック様の名が冠されるように頑張ります。“ザックコレクション”だけじゃなく、“ザックセレクション”というのもありですし、“ザカライアス”という銘柄があってもいいですしね」
俺が困惑していると、更にこう付け加えてきた。
「私の名だけが残るのは不公平ですよ。それにザック様の拘りは百年や二百年で超えられるものじゃありませんし……将来、ドワーフの子供に“ザック”という名が増えるように頑張りましょう」
何か吹っ切れたような笑顔でそう言われると、俺も苦笑するしかないが、彼としても俺の関与を何らかの形で歴史に残したいと好意的に考えてくれているようだ。
「まあ、前世でも高級酒の代名詞みたいになった人もいるから、それを目指してみるか」
「ぜひ、そうしましょう」
スコットがそう言うと、何となくおかしくなり、二人で大きく笑った。
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後にウィスキー研究家として名高いG・E・マーチャントの著書、「トリア・ウィスキー大全」の冒頭にはこう記されている。
『……“ウィスキー”という言葉は、一般にはS・ウィッシュキー氏の名が“訛った”ものとされている。しかしながら、“スコッチ”と命名したZ・ロックハート氏と語源とされるウィッシュキー氏の間の会話では“ウィスキー”という言葉がよく使われたという証言が残っている。“ウィッシュキー”という名を提案したとされるロックハート氏が“ウィッシュキー”と“ウィスキー”を読み間違えることは考え難く、また、生涯に渡り謙虚な姿勢を貫いたウィッシュキー氏が、蒸留酒を自らの名をもじった名で呼ぶとは考え難い。このことから、“ウィスキー”には別の意味があるのではないかという説がある。一つには“命の水”という意味の……(中略)……様々な研究家がこの謎に挑んでいるが、未だ解明されていない……(中略)……唯一つ言えることは、何人もこの“ウィスキー”という名に違和感を持たない。私もそれには全く同感であり、“蒸留酒”や“ウィッシュキー”より、非常にしっくりくると感じている。それがなぜなのか、この謎も未だ解明されていない……』
また、ウィスキー評論家として名高い、ジャック・マイケルソン氏の評価において、“ザック”又は“ザカライアス”と冠されたウィスキーは、すべて九十点以上の高得点を得ている。
更に氏はザックコレクションについて、代表的な著書である“トリア・ウィスキー・コンパニオン”においてこう述べている。
『“ザックコレクション”を初めて飲んだ時の感動を、私は死ぬまで忘れないだろう……(中略)……“ザック”の名を冠するためには、厳正なルールに従う必要がある。その条件は、ロックハート領で蒸留されたものであること、最低十年間の熟成期間を経ていること、そして、ロックハート領にあるすべての蒸留所の責任者が命名に合意すること、この三点が要求されるのだ。たった一人の責任者が疑義を呈するだけで、“ザック”または“ザカライアス”の名を使用できないとされている。更に、たとえ蒸留所の所有者であるロックハート家の当主といえども、これを覆すことはできないと明確に規定されている。この厳格なルールはスコット・ウィッシュキー氏と当時のロックハート家当主マサイアス・ロックハート卿、彼の嫡男ロドリック・ロックハート卿によって定められたと記録に残っている……』
更にザックコレクションの品質についても言及していた。
『……この名の付いたウィスキーに贋物は存在し得ない。正確には数度、贋物が市場に流れたが、故意に市場に流した商会は鍛冶師ギルドの制裁を受け、既にその名は残っていない。更にその商会の所属していた商業ギルド支部は鍛冶師ギルドとの関係を考慮し、支部長が引責辞任している。これ以降、商業ギルドによる監視が強化され、商人たちは“ザック”と名の付く蒸留酒の取引に、非常に慎重になったと言われている。これは商人たちに限ったことではなかった。カエルム帝国のある貴族が贋物を製造すれば儲かると口走ったことがあるが、数ヶ月と経たぬうちに彼は没落した。鍛冶師ギルドとの関係を憂慮した、ある侯爵が手を回したとされているが、真偽の程は明らかになっていない……』
そして、巻末にはこう記されていた。
『……私が“ザック”と冠されたボトルを見つけたら、迷わず購入する。そう断言できる。ただ、その希少性からほとんど市場に出回らないため、その機会はほとんど与えられないのだが……』
ようやくこのネタが書けた……ジャック・マイケルソンのことじゃないですよ(ネタとして認識されるかも疑問?)。
不可知論者様:以前の感想にございました「ガードナー・アースマーチャント(土屋守)」を「G・E・マーチャント」として、本編にまで使用させて頂きました。不都合がございましたらご連絡ください。




