第八十四話「卒業:前篇」
トリア暦三〇一七年六月二十九日。
今日はティリア魔術学院にとって、二百八十一回目の卒業式がある。つまり、俺たち二百八十一期の卒業式だ。
入学式と違い、父マサイアス、母ターニャ、弟、妹たちが来ていた。これは俺の卒業式に出席するというより、兄ロドリックの結婚式に出席するついでのおまけのようなものだ。
兄の結婚式は、カエルム帝国北部総督であるラズウェル辺境伯の都ウェルバーンで執り行われる。これは兄の相手が辺境伯の娘だからだ。
俺の近況だが、十月の中頃に依頼された古代人の遺跡調査、これの後が大変だった。
キトリー・エルバイン教授に追加レポートを出したところまでは良かった。
だが、キトリーさんはラスペード先生に遺跡の話をしてしまったのだ。
そのおかげで俺は、年末までラスペード先生に捕まり続けた。特に新たに覚えた収納魔法、俺がインベントリーと名付けた魔法理論に、ラスペード先生は異常なまでの興味を持ってしまった。
理論については、時空連続体の話を適当にすることでお茶を濁そうとした。だが、先生は転移門の魔法陣と、収納魔法の理論が近いものであり、再現するためのヒントがあるはずだと言って、中々納得してくれなかった。
最終的には俺にもよく判らないと言うことで何とか納得してもらったが、それでも森に行く回数がかなり減っていた。
森に行く回数が減った原因は他にもあった。
ラスペード先生の研究室に缶詰になりながらも、新たな魔道具を開発したからだ。
その魔道具は防音の魔道具だ。
なぜ防音の魔道具を開発しなければならなかったのか。
それは俺がリディと結ばれたからだ。
古代人の遺跡からドクトゥスに帰ってきた日の夜、リディが俺の部屋にやってきた。
彼女にしては珍しく、真剣な表情だった。
「帰ってくる途中、ずっと考えていたわ。あなたがいなくなったら、私はどうするんだろうって」
「俺はいつまでもリディと一緒だ。だから、そんな心配はいらないさ」
彼女は大きくかぶりを振り、「私はエルフ。そして、あなたは人間なの!」と叫ぶ。
「あなたはいつか私の前からいなくなる。古代人の研究者の話を聞いた時、私は考えたわ。あなたがいなくなったら、私も同じように自棄になるかもしれない。多分、あなたの後を追うと思う……」
俺はその言葉を遮った。
「止めてくれ! そのことは昔も話をしたじゃないか!」
そして、心を落ち着かせ、
「それに俺の体はまだ十四歳だ。まだ、寿命が来るまで五十年以上ある。魔力の高い人間は長生きするそうだから、七十年近くあるはずだ。今はそのことを考える時じゃない」
リディはもう一度かぶりを振り、
「いいえ、あの遺跡に入った時、私は思ったの。このまま、出てこないんじゃないかって。あの時、あなたの存在を感じなくなったの。本当に恐ろしかった……」
どうやら、俺が五歳の時に贈られたデュプレ家の指輪――対になった指輪で双方の安否を感じられる魔道具――で、俺の存在を感じられなくなったことが、彼女を不安にさせたらしい。
「私は確かな繋がりがほしいの……」
そこで顔を真っ赤にし、「……できるようになったんでしょ?」と小さな声で呟く。
俺は「何ができるように……」と言ったところで、リディが何を言いたいのか気付き、言葉を続けられなくなった。
彼女は俺が女を抱けるようになったのだろうと聞いてきたのだ。
「確かに……出来るが……ここでは無理だろう。メルやシャロンがすぐ近くにいるんだぞ。それにベアトリスだって」
リディは大きくかぶりを振り、「そんなことを言っていたら、ずっと出来ないじゃない!」と強く否定する。そして、そのまま俺の胸に飛び込んできた。
「不安なのよ……あなたがいなくなるかもしれないって……だから……」
この状況でリディを突き放すことは出来なかった。それ以上に俺自身も望んでいることだったからだ。
俺は彼女を抱いた。
彼女は初めてだった。そして、俺もこの体では初めてだった。
その時の俺たちは、愛し合うというより、互いを確かめ合うという方が近かったかもしれない。俺も心のどこかで確かなものが欲しかったのだろう。
俺は一度思い出した快楽にブレーキを掛けることが出来なかった。
リディも最初こそ戸惑いがあったが、二度目からは歯止めが利かなくなっていた。
それほどまでに貪欲に相手を求めたのだ。
リディと過ごす時間は本当に二人だけの時間だった。多分、周りで何が起きようと、俺は気付けなかっただろう。俺は心の底からリディを求めていた。
だが、問題があった。
正確に言えば、二人の間には問題はなかった。愛し合っているだけだから、本来は問題など起きないのだが、深刻で切実な問題が発生したのだ。
そう、リディの声があまりに大きいのだ。
この家の壁はただの木の板だ。当然、防音処置などはしていない。
つまり、二階にいるベアトリスたちどころか、一階にいるダンにまで、下手をしたら隣家にも聞こえているかもしれない。
俺の名を呼んでくれるのはうれしいのだが、あまりに大きな声なので、一度気になると周りに聞こえてしまうのではないかと気が気ではなかった。
この状況は非常に拙い。思春期の子供が三人もいるのだ。
実際、愛し合った次の日の朝、メルとシャロンは恥ずかしそうに目を伏せるし、ベアトリスは不機嫌そうな表情をしていた。
リディにそのことを伝えると、
「無理ね。だって、あの時って何も考えていないし……それにいいんじゃないの。私たちが愛し合っているのは知っているんだから」
「いや、そういう問題じゃなくてだな……」
彼女は「どういう問題なの?」と不思議そうに聞いてくる。
俺は言葉に詰まってしまった。
思春期の子供なんて持ったことはないし、どうしていいのかなんて全く判らない。
困った俺は音を消すことで解決を図ろうとした。本来なら、皆にきちんと説明するなり、リディを説得するなりするのが正しい対応なのだろう。根本的な解決ではないが、それに頼らざるを得ない。俺自身、現実逃避に近い思考だと自覚している。
(要は声が漏れなければ良いだろう。後はベッドの下に分厚いカーペットか何かを敷けば、問題ないはずだ)
そして、消音もしくは防音の魔道具を作ることにしたのだが、魔道具の大家、ラスペード教授ですら、防音の魔道具について何も知らなかった。
「私は聞いたことがないね。音を消すか……しかし、何のために音を消す必要があるのかね?」
俺は正直に答えるわけにもいかず、思いついたことをそのまま口にした。
「極秘の会談などで使えると思いますし、静かな環境で研究をするのにあったら便利ではないかと思いまして……」
「うむ。確かに密談では使えるだろう。だが、研究に没頭すれば、私には雑音など気にならんがね」
そう言いつつも、俺に魔晶石の入った箱を手渡してくれた。
「この中には全属性の魔晶石がある。好きに使いたまえ」
豪気なことに二級相当の魔晶石まで入っており、それを好きに使って良いと言う。魔晶石は冒険者ギルドが買い取り、魔術師ギルドなどに卸しているが、三級相当なら買い取り価格で百C、十万円相当だ。更にその上級である二級に至っては、買い取り価格でも千Cは下らない。特に三級以上では、属性ごとに入手しやすさが大きく異なるため、販売価格は買い取り価格の数倍に達することがほとんどだ。つまり、ラスペード先生は数百万円以上の素材を自由に使っていいと言ってくれたのだ。
普段なら借りを作りたくないと考え、遠慮するところだが、今回はありがたく使わせてもらうことにした。それほど、俺は切羽詰っていたのだ。
開発を始めるにあたり、概念的な考え方を整理する。
音は気体の振動であり、それを抑えようと思ったら、気圧を低くすればいい。最終的には真空にしてしまえば、音は消えるはずだ。それが駄目なら、吸音性の高い素材をイメージした層を作れば良い。
次にそれを何によって、どう実現するか。
空気、すなわち気体を操るということで、風属性の魔法になるのは間違いない。風の精霊に真空状態を作ってもらうような魔道具にすればいいのだが、真空という概念を伝えるのが難しい。
風の精霊は空気を移動させることはできる。ならば、ある空間の空気を吸い出してもらうようなイメージでいけば、真空ポンプになりうるはずだ。だが、気体は低くなった気圧のところに流れていく。それをどう防ぐか。
話は変わるが、風属性魔法には非常に不思議な現象がある。
それは気体を“固形化”することが可能なのだ。厳密に言えば、物質なのかどうかも微妙なのだが、旋風の刃や俺のオリジナル魔法、燕翼の刃は刃部分が固形化し、それによって対象物を斬り裂くことができる。つまり、空気を刃のような薄い板状の物にできるのだ。
この現象を利用し薄い膜を二枚重ね合わせる。いわゆるペアガラスのような構造にする。そして、その間の空気を抜けば、風属性魔法で真空の板を作り出すことができるはずだ。
後はそれを対象物を覆うようにして設置すれば、空気の振動としての音は壁に伝わらないだろう。それでも床が音によって振動し、それが伝播して伝わるかもしれないが、床の厚みは壁よりあるため、厚めのカーペットなどを敷いて物理的に防げば良い。
理屈は比較的簡単に思いついた。だが、それからが大変だった。
まず、風の精霊に二重の板を作り出してもらう必要がある。旋風の刃の応用だが、現在では魔道具で攻撃魔法を作り出すことはない。ただし、遺跡にある保安装置――盗掘者たちは“罠”と呼んでいる――には、旋風の刃のようなものを打ち出す魔法陣があり、これを応用することで何とか板は作り出すことができた。
問題は空気を排出してもらうための魔法陣だ。その類の魔法陣は遺跡からも発見されておらず、理論すらない。つまり、自分で一から作るしかなかったのだ。
魔法陣は風の精霊が理解しやすいものにしなければならない。ある程度のパターンは確立されており、それを組み合わせることにより、ほしい機能を作り出していく。
作用場所、動作、持続時間などを丁寧に書き込んでいく。一種のプログラミングであり、動作自体はそれほど難しくはない。だが、プログラミングと同じように最適な動作条件を探るのが非常に大変なのだ。
空気の移動は比較的容易に作り出すことが出来るのだが、それを維持することが難しい。二重板を組み合わせた箱状のものから、空気を移動させるのだが、抜ききった後にどうやってそれを維持するかが問題となる。
空気を抜ききったという判断と、更にその排出口を閉じるという動作を組み合わせる必要があるのだが、真空の判定が風の精霊たちには出来ないのだ。
結局、空気を抜ききった後も、真空ポンプの運転を継続させるイメージで真空を維持する方法にしたのだが、これがかなり曲者だった。
空気を抜ききった後も、更に空気を移動させようとするため、無駄にエネルギー=魔力を消費してしまう。プロトタイプのものは、三級相当の魔晶石を使ったにも関わらず、僅か一分ほどで溜められた魔力を消費しきってしまったのだ。
これでは全く役に立たない。少なくとも三十分、今の俺たちなら、もう少し時間は欲しいところだ。
結局、何度も試行錯誤を繰り返し、時には徹夜で魔道具の製作にあたった。
日本にいるときの納期前を思い出しながら、灯りの魔道具の淡い光の下で黙々と作業を続けた。
だが、油断すると、リディが部屋に入り込み、作業が全く捗らなくなる。自分でも判っているが、これほど自分が誘惑に、そして欲望に弱い人間だとは思っていなかった。
それでも、何とか十日ほどで試作品を完成させた。
六畳ほどの広さで持続時間はおよそ二時間。ただし、二級相当の高価な魔晶石と三級相当の魔晶石を複数使うという贅沢な魔道具となり、もし売り出すとしたら、儲けを度外視しても一万C、一千万円は下らないはずだ。
完成後、魔晶石を提供してくれたラスペード先生にも効果を確かめてもらった。
部屋の外と中で音を確認すると、人の声はほとんど聞こえなかった。中で大声を出しても、耳の良いエルフや獣人でも聞き取れないほどの効果を発揮したのだ。
「素晴らしいね。さすがはミスター・ロックハートだ。ところで、この魔法陣は誰に売るつもりなのかね?」
基本的にはこの世界に特許はない。
ただし、魔法陣の場合、全く同じものを描かないと同じ効果は得られないため、特許に近い形で売り出すことが多い。設計者以外が真似をして作っただけでは、単純な魔道具以外、僅かな描き方の違いから効果に大きな差が出てしまう。このため、複雑な魔道具は、魔法陣の設計の考え方と解説をつけて売ることが普通だ。
俺は自分で使うことしか考えていなかったため、誰に売るかを考えていなかった。
「……そうですね。魔術師ギルドに買ってもらうのが一番良いような気がします」
先生も「それが良い」と賛成してくれる。
その後、魔術師ギルドに行き、いつものようにワーグマン議長に面会を申し込む。最近はあまり顔を出さないようにしていたのだが、議長からの指示が出ているようで、すぐに面会の許可が出た。
「今日は何の用かな? ギルドに就職したいというのであれば大歓迎だが」
まだ諦めていない議長に、俺は思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「いえ、その件ではありません。今日はある魔法陣を買って頂こうと思って参りました。まずは見て頂いた方が早いと思いますので……」
俺はそう言いながら、俺の作った試作品をかばんの中から取り出す。
「これは防音の魔道具です。職員の方に手伝ってもらえれば、効果は確認できると思います」
俺の言葉に議長は頷き、職員を呼ぶ。
そして、ラスペード先生のところで行ったような実験を行った。
ワーグマン議長はその効果を見て、押し黙ったまま口を開かない。そして、職員たちを下がらせた後、徐に口を開いた。
「また、大変な物を作ったものだ……確かに有用な品ではある。特に私のような、政治に関わる者にとっては非常に有用な魔道具だ。恐らく各国の首脳は挙ってこれを求めるだろう」
ワーグマン議長は呟くようにそう言った後、「これをいくらで買い取ってほしいのかね?」と聞いてきた。
「十万C(=約一億円)と言いたいところですが、五万でどうですか?」
議長は僅かに驚きの表情を浮かべ、
「五万でよいのかね? かなり破格だと思うのだが……何か条件でも付くのかな?」
最後は警戒するような表情で俺を見つめる。
俺は大きく頷き、
「条件はただ一つ。魔術師ギルドが厳正に管理することだけです。この技術は実は非常に危険です。罠として使えますから……」
俺が考えたのは、今回防音のために二重の板の間の空気を抜いたが、もし、これを一重にしたらどうなるか。部屋の空気を抜くことによって、酸欠状態を作り出すことができる。
今の魔法陣の設計では二重の板の間の空気を抜くだけでもかなりの魔力を使うし、実際には床部分に隙間ができるから、一重では完全な密閉状態は作れていない。だが、この点をうまく細工できれば、理論上、中の空気を抜くことは可能だ。
更に壁を作ることは考えず、空気を抜くだけの機能でも、密閉性のいい部屋であれば酸欠状態にできる可能性はある。要は空気の流入量より、多くの排出量が確保できればいいのだから。
それに時限装置を付けるか、別の魔道具と偽って起動させれば、気付かないうちに酸欠で人を殺すことができるようになるかもしれない。つまり、暗殺の魔道具とすることが出来るのだ。
「今のところ私以外に改造が出来るものはいないと思います。ラスペード先生なら可能かもしれませんが、先生はそんなものに興味は示さないでしょう。ですが、この可能性に気付き、なおかつ、改造できるほどの知識を持った者が現れないとも限りません。それを考えると、ギルドで厳正に管理して頂いたほうが安全だと判断したのです」
ワーグマン議長は額に汗を浮かべ、小さく首を振る。
「君はなぜ私にその事実を告げたのかね。言わなければ、誰も気付かないであろう事実を」
「閣下なら悪用はしないでしょう。魔術師ギルドの信用に関わりますから。ですが、これの危険性を知らずに管理を甘くされることは、リスクが大きすぎます。少なくとも魔術師ギルドのごく限られた人はその危険性を認識しておくべきです」
議長は俺を見つめたまま、沈黙していた。
「先ほどの五万Cという値段も、迷惑料を含んでいるとお考えください」
ワーグマン議長は小さく首を振り、苦笑いを浮かべる。
「確かにこの魔道具なら、十万Cでも買うだろう。二個も売れれば十分に元は取れる。だが……まあ良いだろう。仮にこの魔道具を暗殺用に改造しようとしたとしても、すぐには出来ないだろう。君ほどの天才がそうそう現れるとは思えんからな」
ワーグマン議長は評議会に防音の魔道具の設計の購入について諮った。
そして、五万Cという破格で購入したことについて、議員たちの賞賛を受けながら、それは承認された。
余談だが、この防音の魔道具にはもう一つの効果があった。
それは断熱だ。
冬場にこの魔道具を使うと、部屋の温度の下がり方がかなり小さくなる。元々の発想が複層の真空ガラスであり、複層ガラスの断熱効果が高いことを考えれば、当たり前の話だ。
これと擬似ペルチェ効果の魔法を組み合わせることによって、持続時間は短いが、日本にいた頃の快適な住環境にかなり近くなった。
そして、もう一つ波及的な影響があった。
それは風属性魔法で“板”を作ったことから、思いついたものだ。
この世界にある魔法は攻撃魔法が多い。防御については土属性や金属性魔法で防具に“硬化”を掛けることはあるが、いわゆる“シールド”的な魔法を見つけることができなかった。俺は風属性魔法で“風の盾”の魔法を作り出すことに成功した。
旋風の刃の魔法から派生させたのに、シールドというのもおかしな気もするが、風属性魔法で空中に浮かぶ防御魔法が出来たのだ。
この魔法の利点だが、通常の木製や金属製の盾では視界を遮ってしまうのだが、このエアシールドは透明であり、視界が確保できる。更に手で持つ必要もないため、両手をフリーにした状態で防御ができるのだ。
ただ一つ残念なことは、発動までに時間が掛かることと、維持するのに意外と魔力を使うことだ。俺でも発動に十秒ほどかかるし、連続では十分程度が限界だ。魔力の燃費の悪さが祟り、制限の多い魔道具では十分な能力のものを再現できなかった。恐らく、魔力容量の大きな一級相当の魔晶石なら木製の盾くらいの防御力と、十分な持続時間を確保できるのだろうが、二級相当の魔晶石を使っても防御力はあまり高くなく、かなり遠距離から放たれた矢を受け止める程度の能力しかなかった。
風属性魔法の使い手である、俺、リディ、シャロンはイメージ力によってエアシールドの能力を上げ、実用レベルにできるのだが、俺としては魔道具化して全員が使えるようにしたかった。特に前衛であり、両手武器を使うベアトリスとメルに持たせたかったのだ。
改善方法として、薄い板を複数展開することで防御力を上げられないか研究しているが、今のところ目処は立っていない。
ちなみに防音の魔道具の“効果”だが、音自体はしっかりと防いでいるが、当初の目的という意味では、あまり役に立っていないような気がする。
魔道具の性質上、リディが部屋に入ってくるまで音は消せないから、彼女が入ってきた時点で、何をするか丸わかりだ。
単に慣れただけかもしれないが、以前ほどメルたちが気にしていないから、役に立っているのかもしれない。
そして、ベアトリスについてだが、彼女も気にしなくなった。
メルたちとは違う理由で気にしなくなったのだ。
次話で第二章が終わります。
しかし、この前篇は何を卒業した話だったんだろう……




