スタート!
ユニオン【union】
結合。統一。連合。
ロールプレイングゲームが現実になる。
そんなゲーム業界の革命にして一つの終着点となるVRゲームの試作品が完成したのは、公表より何年も前のことである。
五感の全てを知覚させられる脳への負担、VR内での自己の負傷あるいは死亡現象に対する脳と身体への影響、また長時間のVR知覚状態から現実への復帰のリスク。
数え上げたら切りがないほどの問題点を、世界のありとあらゆる研究機関がしつこいまでに調べ尽くす。
世界初となるVR用ハードとソフトの安全性が完全に証明されるまで、何年もの時間が必要となった。
その「何年もの時間」の前に、VRの先駆け、あるいは試作機の雛形とも言える玩具が発売された。
――電脳操作ヴィジョン【ユニオン】
耳を覆うパットと上方に伸びるアンテナが特徴的な、ゴーグルのようなサングラス。
これはモニターになっている他、脈や視線、頭部に走る微弱な電波などから脳波を感知してヴィジョンに伝えるという、見た目からは想像もできないような高度なテクノロジーを搭載していた。
だが、遊ぶ子供には小難しい話なんて関係ない。
子供たちにとって大事なことは、「【ユニオン】は【ヴィジョン】同士で戦って遊ぶ玩具だ」という事実のみである。