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第一章 ② 記憶奪還の助っ人

2人が歩き始め、かなり時が流れた。

それなのに、目的の街の姿はこれっぽっちも見えない。

「お前の言う街ってのはまだなのか?」

この言葉を投げかける今まで、リエナは彼にいたる所で「ここで一緒に探検ごっこしてあそんだの覚えてない??」など、過去の様々な出来事を覚えていないか、問いかけてきたのだが、まったくわからない。

それはとてつもなく長く、辛い時間だった。

街はまだか?という問いかけをすることも、彼にとって、とてつもなく辛いことだった。


(キリィ、ホントに何にも覚えてないんだ・・・。

今まであたしがいろいろキリィに守られてきたんだ。今度はあたしがっ・・・!)


「もうすぐだよっ!」

そのリエナの言葉どうり、丘を越えた所で街らしきものが見えてきた。

「ほらっ、もうすぐだから走って走って!」

そう言ってキリィの右手をつかんで走りはじめた。

「うわっ!は、早~っ!!」

「そうかな〜?」

そう笑いながら走る彼女。とてつもなく俊足だ。

キリィは気を抜くと、危うくこけてしまいそうになる。

「くっそぉ~~~!!」

1人悪態をつきながらも、2人はその早さで一気に街まで走った。

「ハァ、ハァ、ハァ、、、」

街についた頃には、キリィは危うくまた気が遠のきそうになっていた。

「だ、大丈夫!?

もしかして、走らない方がよかった系!?」

(こいつ、俺がさっきまでどういう状況だったかわかってんのか!?)

この少女の天然ぶりには薄々気づいていたのだか、今ここではっきりとしたのだった。

「ハァハァ。あ・・・あぁ。ご遠慮したかったよ・・・」

「ホンットごめんー!!

でもほら。街に帰ってきたよっ!」


そう言われ彼が顔を上げると、そこには石造りで、瓦屋根の家々が並んでいる。

大通りには市場があった。魚や野菜を売っている店、人々が椅子に座って美味しそうな料理を食べている店もある。

「市場を抜けて行った所に、クレアさんの店があるからそこまでガンバッ!」


街に着く今まで、明るくふるまってきたリエナの目には、必死に堪えていたものがあふれていた。

(クレアさんのところへ早く、早くいかなきゃ。

キリィが・・・)


リエナに案内されながら市場を抜けていく。

その途中で、何人かの人に話し掛けられたが、その中に見覚えのある顔はなかった。

人ごみの中を抜け、たどり着いた店はどうやら鍛冶屋のようだ。店内からは金属を鍛える音が聞こえてくる。

「クーレーアーさ~ん!!」

「・・・カンッ!カンッ!カンッ!・・・カンッ!カンッ!カンッ!」

「聞こえてないみてぇだな・・・」

どうやらリエナの声は店内には届かなかったようだ。

「ダメかぁー。じゃあ入ろぉーう!」

「いいのかよ、勝ってに入って!?」

「いつものことだってー!」

笑いながら言う彼女に続いて、キリィも店の奥へ進んでいく。

「ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!・・・」


音がだんだん近づく。

そのまま奥へ進むと、椅子に座って、黒髪を後ろで一本で結んだ女性が剣を鍛えていた。年は40代ほどだろう。しかり、彼女からは威厳のあるオーラが出ていた。

「クレアさ~んっ!!」

リエナがもう一度大声でその人物を呼んだ。

「うわぁ!!」


ガッシャーーーンッ!!


彼女の右手に握られていた金槌が、リエナの声で驚いたことによって、宙に舞うことになった。そしてそのまま部屋の隅の、鍛冶道具が立っていたツボに衝突し、破壊したのだった。

「・・・。」

「やってくれるねぇー、リエナー!!」

怒りに満ちた彼女は、2人の方を飛びかかってくるような勢いで向いた。

彼女はなにもなくなった右手でリエナの頭を叩こうと、手を降り降ろした。

「うわぁ!」

悲鳴を上げたリエナの頭をクレアの右手が直撃した。

と、思った時だった。

「・・・キリィ!?」

その言葉と同時にクレアの腕は止まった。

「あんたいたのかい!?

いつもと違って静か過ぎたもんだから、まったく気づかな・・かった・・・よ」

彼女の顔が驚きと恐怖の色で染まった。


「クレアさんっ!キリィが記憶喪失になっちゃったみたいなの!!それに・・・悪魔に会っ」

リエナの言葉を聞き終わる前に、クレアの口は動き出していた。全てを理解したかの様にだ。

「今、あんたが覚えてることは何だい?」

彼女はキリィの両肩に手を置き、目を合わせて語りかけるように、言った。

「覚えてる事って言っても・・・。俺の前に悪魔が立ってた って事ぐらいしかわからない。

そこのリエナって奴が、あんたなら力になってくれるはずだって言って、ここに来たんだ」

「そうかい・・・。1つ質問させておくれ。あんた、なんでそいつが悪魔だってわかったんだい?」

キリィはその質問に、少し戸惑いながらも答える。

「なんでって、そいつがいるってことに気づいた瞬間に、悪魔だと思ったからだよ。というより、わかったんだ。

俺、自分でも何言ってんのかわかんないけど、こうとしか言いようが無いんだ。」

キリィは、頬にしずくを流しながらクレアに答えた。それを聞いて、少し間があいてから彼女は、鍛冶をしていた椅子もどり、深く腰を沈めた。


「あんたは、悪魔に記憶を奪われた。」

「・・・悪魔(あいつ)が?」

そこで、今まで黙ってキリィとクレアの会話を聞いていたリエナが疑問をぶつけた。


「ねぇ!ちょっとまってよ、なんで悪魔がキリィの記憶を奪う必要があるのっ!?なんで!?」

「それは、私にもわからない・・・。

だか、私が知ってる悪魔についてのこと。

それを、あんた達に話そう」


クレアは、心の奥に刺さっている棘を、引き抜く様な顔で語り始めた・・・。


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