表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御神先生の秘蔵っ子  作者: 蒼良美月
第二楽章 楽興の時

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/21

16.親心

 先生が日本を発ってから、早いもので既に二週間以上。

 最初は心配していた様々な嫌がらせを受けたが、今はそれもピッタリ止まっていた。


 その代わりと言ってはいけないが、()()別のことで忙しい日々を迎えていた。



「桜井さん? 今いいかしら?」

「は、はい? 何でしょう?」


「こ、これをお願いしたいんだけど」

「分かりました。添付ファイルを此方にお願いします」


 そう、何と先生は「御神音楽学校・Mアカデミー」の生徒対象に、日本での先生の窓口「Mカンパニー」が主催する留学生の募集をしたのです。


 条件はかなり厳しいけれど、合格すれば1年間「Mカンパニー」が留学先の斡旋と費用を負担すると。


 そして、その受付窓口になんと「御神クラス」を指定したんです。


「御神クラス」名前はありますが、生徒は私一人しか今はいない為、こうして色々な所から声を掛けられるようになり、その頃からでしょうか? 目立つような醜いものがなくなってきたのです。


 ひっつき虫? って言うのかしら? あれが上靴の中にどっさり入っていた時は笑いましたが。

 先生にその写真を撮影し送ったら「これだけ採って来たことに、俺は敬意を払うわ」と笑っていました。



「まだこんなにあるのか……」


 ピアノの脇に置いたカレンダーの印をぼんやり眺める。

 月1は帰国する努力をするから。と言ってくれた先生の言葉を信じるしかない。


「あ、ヤバイ。読譜全然進んでない……」


 天野先生のピアノ実技の時間は、私は基本的には自習になる。


「何、全然進んでないじゃない桜井さん?」


「天野先生? どうしたんですか? 今授業中では?」


「一人で寂しくしてるんじゃないかと思って様子見に来ただけ」


 ふふっ。ほんの少し前に高科先生が同じことを言って見に来てくれた。

 そして、昨日は何と由紀様まで。


 私はこんなにも、恵まれている。

 淋しいだなんて弱音吐いている場合じゃないわね。


「あ、これプレゼントね。明日の授業までに暗譜しといて。バイオリン持ってきてね~~ では~」


 ………やっぱり鬼だ。


 どっさり置かれた楽譜の山。


 そうなんです。とてもとてもお優しい天野先生は、こうして「天野組」のピアノ科の生徒さんと、バイオリンのセッションをさせてくれるのですが……


 向こうは大人数。バイオリンは一人。

 当然覚える曲は数十人分に増えて行くわけでして。


 よくこんなこと考えたものだわ。と先生に言ったら「声楽科の伴奏にも出張に行けるように頼んでやろうか?」 と。鬼が増えました。


 とてもとても、優しい先生方に恵まれて忙しい毎日を過ごしております。



「早く帰ってこおおおい!! 御神 貴志!」






 ◇



 ──その頃昼休みの一室



「しっかし金のある奴は、やることが半端ないな。自分の女守る為にここまでやるかね?」

「御神先生って、こういうの絶対しない人だったはずなのに」


「今まで一回もな。前いたアイツの女、1週間もせずにソリスト下ろしたろ?」

「どれの話しですか? 多すぎてわかりません」


 高科はキョロキョロと周りを見渡した。

 良かった。居なかった。


 純真な()には到底聞かせれない内容ばかりだったからだ。

 あのルックスである。

 世界に恋人が居ると長年言われ続けていたのだ。


「それよりさ、こっちだろ」

「本当に日本でこれをやるつもりなんですかねぇ?」


 天野は、先輩である高科に真意を確かめるように聞く。

 もし本当にやるんだったら?


 一旦は諦めていた世界への挑戦。

 大きすぎる光によって常に影となるしかなかった自分。


 その光が、唯一認めた天才と共に世界への挑戦。


 ずっと憧れの存在であった同い年の男から「友よ」

 と掛けられた言葉。


『友よ。一緒に世界を取りに行かないか』


 アイツらしい何の説明もなく短い文のこれだけだった。


 天野は、曇る眼鏡を拭きながら込み上げてくるものを誤魔化した。


「どうするよ?」


「姫を魔王から守るのは、高科先生やっぱり俺達が必要でしょう? ()()()でしょ?」


 天野のその笑いに、自分も心が決まった。

 まあアイツだけに任せたら、大事な()が壊されたら駄目だからな。仕方ない付き合ってやるか。


「あ、追加で来てたぞ」


『来秋を目指す。取れるまでノーギャラ。自力でスポンサー見つけること』


「……鬼か」

「やっぱり悪魔だ」


 高科と天野はその言葉とは裏腹に笑っていた。


「御神財閥の御曹司が金ケチるなよ」


 天野の言葉に高科がポツリと言う。


「いや、これ多分、御神の財力に頼らないつもりだと思うよ」

「え? 自費公演目指すってことですか?」


「パリにいる後輩の話だが、あの御神 貴志が地元のメディアに出たり、ファッション誌の取材受けたりしているらしいぞ。CMやら」


「は? 音楽辞めてタレントにでもなるつもりなんですか?」

「いや、金集めてるんだろ。スポーンサー探すのに」


 その言葉に天野は絶句した。

 自分の公演後の挨拶の時でさえ笑うことがないのに、あの魔王がテレビCMに?

 想像しただけで倒れそうになった。


「いくら奏者ノーギャラにしても莫大な費用かかるでしょう?」

「それだけ本気ってことだろ」


「まぁそれも、姫次第だけどねぇ」

「潰さないでくださいよ? 高科先生?」

「は? 俺に言うなよ。奴に言ってくれよ」

「保護者でしょ? ちゃんと魔王から守ってくださいよ?」


 高科は天野の言葉の意味が痛い程わかり、胃が痛くなる感じに陥った。








 第二章完結


「今話で第二章完結となります」

ここまでお読みになった時点でも構いませんので、広告下にある✩✩✩✩✩から作品へ評価を頂けると、執筆へのモチベーション維持に繋がります。また、続きが気になると少しでも思われたらブックマークも是非お願いします。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ