魅了持ちの男爵令嬢と3人の令嬢
途中で視点が変わります。
工作員とヒロインと会話した研究員以外は16歳の設定です。
誤字脱字とかあったら教えてください
「もう、待つのはやめますわ。
お母様の言いつけを破ることになりますけれど
私はもう決めました。」
1人の少女がティーカップを机に置きながら言った。
「私もそう思っていたところです。
もちろん協力しますわ。」
とメイド服を着た2人目の少女。
「…ええ、いいと思いますわよ。」
と3人目の少女。
3人の少女の婚約者は、最近編入してきた男爵令嬢と距離が近い、と噂になっている。
しばらく静観をしていた彼女らだったが
ジキオーヒ公爵令嬢の鶴の一声により
動くことにしたのであった。
少女らがその事実を確認したのは三週間前だろうか。
3人の少女のうち3人目、ドンカセ侯爵令嬢が、
例の男爵令嬢に注意した。
「私たちは淑女の一員なのですから廊下を走ってはいけませんのよ」と。
それに対して彼女は
「ご、ごめんなさいっ。あたしこの学校に来たばかりで分からなくて。」とオドオドしたように言って
俯いた。
それでドンカセ侯爵令嬢がとりなそうとしたところ、
ジキオーヒ公爵令嬢の婚約者である第二王子殿下がその現場に通りかかった。
そして例の男爵令嬢に声をかけた。
「どうしたんだい?」
「あ、えっと私が勉強不足で注意されていたところです。」彼女は少し安心したように頰をゆるめた。
第二王子殿下はドンカセ侯爵令嬢を顔を顰めて一目見ると、「彼女はこの学校に来たばかりなんだ。まだこの環境に慣れていないだろうから厳しく言わず多めに見てやれ。」と一言告げて彼女の手を取ると去っていった。
ドンカセ侯爵令嬢はその日のうちにジキオーヒ公爵令嬢に相談した。
「可能性がある芽は早いうちに詰むべきではないですか」と。
「そうね…。」
ジキオーヒ公爵令嬢は少し考えていった。
「しばらく静観しましょう。状況証拠が足りません。それに私たちは高位貴族の婚約者として側妃や愛妾を容認する度胸も求められるでしょう。」
「分かりました。」
その数日後、3人のうち2人目であるオットリ侯爵令嬢は街に買い物に行く途中、自分の婚約者とピンク頭のアホそうな平民が腕を組んで歩いているところを見た。オットリ侯爵令嬢は別に婚約者の事はなんとも思っていなかったのでスルーして自分の父親に報告した。
「お父様、やっぱりチェンジでお願いします。」
「なぜだ?2人とも昔は仲良かったじゃないか。」
「いつの話をしていますの?それにお父様があの人と仲良くするように言ったんですよ。」
「そうだったか。親友と自分の子供を結婚させるってロマンだろう。」
「あのかたが愛妾を迎えるのは勝手ですが平民らしき何処の馬の骨とも分からない娘の血を我が家に入れる気はありません。」
「私の天使を放って平民とデートしていただと?
彼は由々しき事態だ。話をつけてくるよ。」
オットリ侯爵は屋敷を飛び出していき、2時間後に「婚約解消しておいたよ」とニコニコ笑って帰ってきたのであった。
そこで2人とその他大勢のジキオーヒ公爵令嬢を慕う生徒達の証言により、今回のお茶会が開催されたわけである。
その夜、ジキオーヒ公爵令嬢は亡き母親の言葉を思い出していた。
「私たち淑女は男性の顔を立てて控えめに支えるものです。男性方の公務に口を出したり恥をかかせるなど言語道断です。例え殿下が側妃をお迎えになろうとも容認しなければいけませんよ。目移りされないように気をつけるのが一番ですけれど。」
……お母様、私が弱いばかりに申し訳ありません。
お母様は幼い私に絵本を読み聞かせしてくださったことがありましたね。王子様とお姫様が結婚の約束をして、戦争に行った王子様が帰ってきてお姫様にプロポーズする話。私はあの話が好きでした。
お母様はもしかしたら薄々気づいていたかもしれませんが、私は王妃の器ではないと思うのです。
諦めが早くて、自分では何も動けない。
殿下はきっとこんな私に嫌気がさしたのでしょう。
決めたのはいいものの、この先どうしたらいいのでしょうね。
例の男爵令嬢の素行調査も悩みの種です。他の男性にも同じことをやっているようです。もちろん一線は超えていないようですがおそらく彼女は軽い魅了持ちだと思います。魔力封じの術をかけるか…とりあえず魅了に耐性のある工作員を忍ばせることにしましょう。
またその数日後、例の工作員からの報告によると
本人は自分が持っている能力に無自覚だが
行動は意識してやっているようで少々わざとらしい時がある。教室ではよく5人の男子と一緒にいて他のクラスメイトには距離を置かれている。
目が合うと魅了が発動するが婚約者を溺愛している男性などには効果が見られない。またかかっている魅了の力は人によって違う、と。
彼女が在籍しているクラスは下位貴族が多いDクラス。在籍している男性の中で婚約者がいる方は…
私の記憶に間違いがなければ二十三名中十七名。
魅了が効くのは男性だけなのね。良かったわ。私たちまで魅了に当てられたらどうなるかわからないもの。お父様に直訴して本格的にあの令嬢に対処しましょう。
ある日、夢を見たの。カミサマが夢に出てきてね、あなたはヒロインだから誰を選んでも幸せになれるって。意味わかんなくてびっくりしたけどよく聞けば私王子様とも結婚できるらしいじゃん。私平民だから王子様とかお目にかかった事ないけどカッコいいんでしょ?何かと引き換えに特別に願いを一つ叶えるって言われたからお母さんの病気を治してってお願いしたらね、ダンシャク?って人がお母さんと私を迎えにきてくれたの。私はこれから貴族の学校に通えるんだって。本当に夢が本当になったって信じらんないよね。
ただ一つ困ったことがあってね、その代償なのか日中は頭がぼんやりするの。その日起きたこともあんまり覚えてなくてね。せっかく貴族さまと話せるのに覚えてないのはつまんないよね。
それでね、うーん…。入学してから1ヶ月くらい経った日にね、その状態が治ったの。目を覚ますとなんか豪華な部屋の中でね、
「あなたは魅了スキルを持っている疑いがあるのでしばらく東の研究室に移動してもらいます。」
「ここはどこ?ていうかあなた誰?魅了って何のこと?」
「やはり自覚はなかったんですね。あなたは第二王子殿下をはじめとする何人かの貴族令息と親しくしていたでしょう。貴族学院ではあなたのように異性と積極的に接するのはよろしくないとされているんですよ。どなたかにいわれたでしょう。」
「…そうなの?それより東の研究室ってどんなところ?木苺のクッキーとベッドがあるならいいけど。」
「あなたは図太いんですね。まぁクッキーとベッドくらいはあるでしょう。魔力封じのブレスレットを装着することになるので脱走とかはできませんのでご承知おきください。」
「脱走?私その研究所の場所も知らないんだから。いつも住んでるダンシャクさんの家の場所も覚えていないわよ。」
「…そうなんですか。では行きましょう。」
こうしてこの事件の幕は閉じた。後に彼女は日中意識がなかったことが判明し、稀に起こる精霊の悪戯だと言われたそう。行動が早かったオットリ令嬢と数名の令嬢を除いて、婚約関係は元通り結び直され、この事件がなかったかのように皆振る舞うようになった。私?私は微妙な心持ちでしたけどお使えさせていただいているジキオーヒ公爵令嬢様に諭されたのと婚約者様に口説き落とされたので仕方なく納得しましたわ。…なんですの?私の顔に何かついていまして?その生暖かい目はやめてくださいませ。
最後の締めくくりはドンカセ侯爵令嬢でした。
この人はツンデレのつもりです。
おっとりっていうほどおっとりじゃなかったですね。
でもいつもニコニコしてる穏やかな人が心の中に獰猛なトラを飼ってる系とかの話しありますよね。




