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男子校、恋愛未履修、恋の先生はAIです。  作者: なぐもん
第5章 さよなら恋の先生
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第三十八話 繋がる想い、笑顔で届け

──昨日、椎名瑠璃さんと付き合うことになりました」


陽咲男子高等学校の教室の空気が、一瞬で静止する。


数秒の沈黙ののち、陽翔が声を震わせながら口を開いた。


「……マジ、か……?」


「うん。ちゃんと、AICOのことも伝えて──OKもらった」


その瞬間、


「っっしゃあああああああああああ!!!!」


「でたああああああああああああああ!! 佐倉恋神、ついに最終進化ああああああ!!!!」


「デートで勇者! クリスマスで神!! その先はもう、伝説級だろ!!!」


「おい情報班!! 日付残しとけ! “2月×日:恋神、神話となる”って!!」


「学校名改名しようぜ! 陽咲男子高改め、佐倉恋学院!」


「屋上に祠を──いや神殿を──!!!」


「巫女(♂)コス買ってきます!!」


(……あかん。もう止まらん)


俺が冷静に手を上げても、騒ぎはヒートアップする一方だった。


そんな中、ふと純が、静かに口を開いた。


「……あの、僕も……その……」


「ん? どうした純?」


「桐島ひなこさんに、告白されて……それで、付き合ってます」


──静寂。

みんなの時間が、一瞬止まる。


そして。


「「「えええええええええええええええ!!!!???」」」


「純~~~!?!?!?」


「お前も神か!? 天使か!? 人知れず裏ボス倒してたのか!?」


「ひなこって、あの如月贈菓祭でペアだったギャルだろ……!?」


「うそだろ!? もう俺らしか残ってないぞ!!」


陽翔と要は抱き合いながら涙を流していた。


「なあ……恋って……格差社会なんだな……」


陽翔が、遠くを見ながらつぶやいた。


「ごめん、湊。俺、もう笑えねぇよ……」


要が肩を落とす。


「純まで行くなんて……聞いてねえよおおおおお!!」


「このまま、俺たち彼女ゼロで卒業かよ……!? バッドエンド確定か!?」


「ハッピーエンドは神(湊)と精霊(純)だけなんだ……」


「やっぱ俺ら、ラブコメのモブなんだな……!」





──この日、学校は“恋愛強者とその他大勢”に分かれた。


でも、みんな本気で祝ってくれてるのは、伝わってくる。


「おう! 神!!」


「恋愛のご利益、よろしく頼むぞ神!!」


「だから神って言うな!」


(……でも、ほんとに。バカみたいに騒いで、笑ってくれて──ありがとな)


   * * *


湊くんが言ってた、“恋愛サポートAI”。


──AICO。


その名前を、私はどこかで聞いたことがあった。


家にある段ボールの山をなんとなくひっくり返していたら、ふと目についた一枚の資料。


《── Project A.I.C.O. Internal Notes》


それを見た瞬間、胸の奥が、少しだけ温かくなった。


お母さんと、お父さんが作ったAI。

そのAIが──湊くんのそばにいてくれたなんて。


きっと私は、知らないうちに支えられていたんだ。

私の家族が……湊くんと、繋がっていたなんて。


「……ありがとう、お父さん」


リビングに戻ると、父が玄関でコートを脱いでいた。


声をかけた私に、父は驚いたように目を丸くして、

それからほんの少し、目元をゆるめて──黙って、頷いた。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます!


ついに、佐倉湊と椎名瑠璃、二人の恋がしっかりと結ばれました。

陽咲男子メンバーの大騒ぎも含めて、書いていて本当に楽しかったです。

そして、静かに幸せを掴んでいた純くん……やるねぇ。


今回、瑠璃サイドでは“AICO”と家族の繋がりを改めて感じるシーンを描きました。

目立たなくても、想いはちゃんと届いている。

そんなことを瑠璃自身が知ることで、彼女もまた大きく前に進めたんじゃないかな、と思っています。


次回はいよいよ最終話です!

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