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男子校、恋愛未履修、恋の先生はAIです。  作者: なぐもん
第4章 好きを伝えるには、まだ怖くて
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第二十六話 緊急招集!勇気会議

----如月贈菓祭前日


椿ヶ丘女子学園の家庭科室は、チョコと熱気に包まれていた。


 


「ちょっと、誰かゴミ袋取り替えて〜!」

「湯煎もうちょい火弱くしてっ!」

「こっちは本命なの! 誰よ義理チョコの型入れたの!」


 


湯気立ちこめる教室の中、制服の上からエプロンを着けた女子たちが、慌ただしくチョコ作りに励んでいる。


 


ある者は、大量の板チョコと製菓袋を前に「義理チョコ配布計画」と称して名簿とにらめっこ。

ある者は、周囲の騒ぎも気にせず、一つひとつにリボンをかけながら“本命”の笑顔を思い浮かべていた。


──この日、家庭科室には**「恋する女子」たちの物語**が、いくつも、いくつもあった。


 


「よし、次はこの箱! 中身ぜんぶラッピングお願い!」

「これ、どこまでが義理? どれが生徒会の“公式配布”分!?」


 そんな中、調理室の奥では──

椎名瑠璃と佐倉美優をはじめとする、生徒会の面々が大忙しだった。


「……よし、次のトレイできたよー。冷ましに回して」

「包装用の袋、あと三百枚くらい取ってこようか?」


段ボールに詰められたチョコレート。

それはすべて──陽咲男子高校の全校生徒に贈る、“公式配布チョコ”だった。


 


「……それにしても、会長。ホントにこれ、全員分やるんですか?」

と、額に汗を浮かべながら言う美優。


「やるよ。今年から“生徒会主導の全員配布”が正式決定したんだから」


と慌ただしく司令塔の瑠璃が答える。


「去年までは希望制だったけど、もらえなかった人が出ちゃったから、改善案ってことで」


「……そっか。全員に、って考えたら……ちょっと、罪悪感ないですもんね」


「会長は誰かに本命渡す予定はあるんですか?」

と、美優がニヤリと笑う。


「わ、私っ!?う、うん。本命というか…お世話になったというか…でも…義理でもないし……──」



と、瑠璃がぽつりと呟いた、そのとき──


 


「緊急会議よッ!!」


 


家庭科室のドアが勢いよく開かれ、手を掲げて立っていたのは──

演劇部所属の三年生トップスター、相良さがら 美空みそら

情熱的で、やたら舞台口調なこの先輩は、恋に生きる乙女たちを日々応援している“自称・恋の演出家”だ。


 


「今こそ結集すべきよ、乙女たち……!

“想いを伝える勇気”の名のもとに──!」


 


その叫びに、周囲の女子たちがざわついた。


 


「あ、また始まった」

「去年もやってたよね、“あの集会”……」

「……でも、ちょっと気になるよね」


 


そして、美空が高らかに掲げたホワイトボードには、こう書かれていた。


 


『勇気会 ~想いを告げる、その前に~』


 


「本命チョコを渡す、それは恋する乙女にとって最大の勇気。

だからこそ、共に誓い合いましょう! 明日、想いを届けることを──!!」


 


──と、大げさな口調で言い放った彼女の元に、少しずつ集まってくる女子たち。

その中には、エプロン姿のままの椎名瑠璃と興味本位だけの佐倉美優の姿もあった。


 


「……やっぱり来ましたね、“あの会”。今年もやるんだ」

美優が腕を組みながら小声で言う。


「“勇気会”?」


「はい。毎年、如月贈菓祭の前日にやってる、非公式の女子会です。

本命を渡す予定の子だけが参加できる、秘密の作戦会議です。」


「へ、へえ……」

と瑠璃は言いながら、妙に視線を泳がせていた。


 


「じゃあ、始めましょうか──あなたたちの“恋の話”、聞かせてもらうわ」


 


 


*  *  * 


 


「私……去年の如月贈菓祭で、陽咲の生徒とペアになったんですけど……」

そう切り出したのは、恥ずかしそうに指先をもじもじさせるニ年の子。


「その人が、めっちゃ優しくて……お菓子失敗しかけたとき、笑って励ましてくれて……」

「……名前、ちゃんと聞けなかったんですけど……また、会いたくて」


 


「わたしは──渡す予定じゃなかったんだけど……気づいたら、チョコ作ってて」

「その人に会うたびに、気持ちが膨らんじゃって……もう、ごまかせなくなったです」


 


「“義理で済ませよう”って思ってたのに……なんで、こんなに悩んでるんだろう……って」

「でも、ここで逃げたら、一生後悔する気がして……」


 


それぞれの“好き”の形が、少しずつ、言葉として場に積み重なっていく。


やがて視線が集まったのは、隅にいた瑠璃。


 


「……椎名さん。あなたは?」


 


「え、わ、わたし……?」


 


瑠璃があわてて顔を上げると、美空が一歩踏み出す。


 


「あなたも、誰かにチョコを渡すつもりで、ここに来たんでしょ?

だったら、その気持ち──ちゃんと、言葉にしてみなさい」


 


その問いに、しばらく黙っていた瑠璃が、小さく息を吐いた。


 


「……わたしも。渡したい人がいるの」


 


周囲が静まり返る。


 


「気づくと、あの人のこと思い出してて……

それって、たぶんもう義理じゃない気がして」

「“本命”って言えるほどの勇気はないけど、

 “なんでもない”って片付けるには、ちょっとだけ大切で……」


 


ぽつぽつと語る彼女の横で、美優がそっと微笑む。


 


「だから──伝えたいって、思ったんですね」


 


その言葉に、美空が満足そうに頷く。


 


「……よろしい。あなたも、もう“勇気会”の一員よ」


 


 


*  *  * 


 


「では──儀式を始めましょう!」


 


再び前に立った美空が、部屋の中央に持ち込んだのは、

なぜか舞台用の金色のカーテンと、謎のスポットライト。


 


「この壇上に立ち、チョコを掲げて誓いなさい。

『私は、明日、想いを届けます』と──!」




「なんでカーテンあるの!?」

「スポットどこから持ってきたの!?」



「……でも、ちょっとテンション上がるの悔しい……!」


 


やがて瑠璃も、そっとチョコの入った小箱を手に取り、壇上へ。


 


「……わたし、渡します。明日、ちゃんと……自分の言葉で」


 


静かに、それでも力強く言ったその姿に──

周囲の女子たちが、拍手を送る。


 


「“本命”なんて、カンタンに渡せないからこそ……

渡すって決めた時点で、それはもう、“本気”だと思うのよ」


美空が言い切るように笑った。


 


──そしてその夜

瑠璃は、まだ“恋”と呼べるかもわからない気持ちを、そっと胸にしまって、

それでも──明日は、ちゃんと向き合うと決めた。



次回── 如月贈菓祭開幕


今回は、完全に女子サイドオンリーのお話でした!

……はい、AICOの出番はゼロです。

きっとどこかの誰かに「またAICOいないじゃん!」って怒られそうですが、

今回は**“恋を渡す勇気”だけで物語を埋めてみたかった**んです。


「勇気会」──

ネタっぽい名前に見えて、

本気で誰かを想う女の子たちの気持ちが、ぎゅっと詰まった集まりになりました。


主人公の佐倉湊は登場していませんが、

彼が知らないところで、“誰かのためにチョコを作る手”が、ちゃんと動いている。

そんな裏側の視点も、たまにはいいですよね。


次回はもちろん!

男子校×女子校×混沌=如月贈菓祭、本番です!!


AICOも、たぶん出ます。きっと。たぶん……。


それでは、また次回もお楽しみに!

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