第四十二話 運命ノ契約者(エターナルパートナー)、来たり
月曜の朝。
秋風がちょっと冷たくなってきた登校時間。
俺は、心なしか早足だった。
(昨日の碧純……マジだったな……)
頭の中に残っていたのは、
“妹としてじゃなく、恋人として選ばれたい”――という言葉。
その言葉が、ずっと耳の奥でリフレインしている。
教室に入ると、妙にざわついていた。
「なんか……超変な子、来るらしいぜ」
「また転校生!?つくば市ってそんな転校多い??」
「しかも“黒衣の魔女”とか名乗ってるって……えぇ……」
意味不明な単語が飛び交う中、
教卓前に先生が現れた。
「はいはい、席着けー! 今日はまたひとり、転校生が来てますー。じゃ、入ってきてー」
ガラッ。
そして、現れた。
銀髪ウィッグ(地毛かも?)に黒いセーラー服。
手には本――否、魔導書。
太ももに包帯、そして謎の黒いリボン。
転校生、霧咲ルナ、爆誕。
「はじめまして、俗世の民たち。
我が名は――霧咲ルナ。
夜界ノ門より遣わされし、**“第十三の魂を持つ少女”**なり」
(やっべぇの来たーーーー!!)
教室全体が「!?!?」という顔をする中、
ルナは、キリッとこちらを見つめて言った。
「そして――この学園に我を呼び寄せた“契約者”がいる。
その者の名は……真壁、基氏。貴様であるな?」
全員の視線が一斉に俺に突き刺さる。
「え、俺? なにしたの!?転生でもした!?」
「……いや、してないけど!?」
ルナはズズイと俺の前に歩み寄り、
手のひらを広げ、詠唱を始めた。
「目醒めよ、契約の印!
黒き風、灰の言霊、忘却の夜より来たれ――
我が運命ノ伴侶よ!」
そして、俺の手を取って高々と掲げた。
「契約、完了!」
「いや勝手に終わらせんな!!」
先生:「……霧咲さん、席はあそこね。真壁の隣」
そして当然のように、
俺の隣席へ、ルナが着席した。
昼休み。
如月明花:「……真壁くん、また隣に“爆弾”置いたのね」
碧純:「……このクラス、修羅場バトルゲームか何かかな?」
暁月ひより:「……彼はモテるんじゃなくて、“引き寄せ体質”だね。観察済み」
当の本人はというと、
隣席から香る、ルナのほんのり甘いようなハーブ系の体臭に
訳もなくドキドキしていた。
制服の内側から、柔軟剤とお香が混ざったような香り。
そして距離が近すぎる話し方。
「今日から、貴様と我は運命共同体。
昼食も共に、帰宅も共に、保健室逃亡も共にである」
「共にしすぎだろ!!」
だが、彼女の本当の目的は――まだ誰にも、明かされていなかった。
その夜。ルナの部屋。
魔導書を開きながら、彼女は呟いた。
「……ふふ。ようやく見つけた、“予言の男”。
この戦場を制する者は、世界の命運を握る。
我は絶対に、貴様を逃さぬぞ……真壁基氏」
(つづく)




