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同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件  作者: 常陸之介寛浩★OVL5金賞受賞☆本能寺から始める信長との天下統一


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第三十三話 ねえ、真壁くん。わたしのこと、どう思ってるの?

月曜日の放課後。




 秋の風が吹き抜ける校庭を、


 俺は転校生・如月明花と並んで歩いていた。




「ねえ、真壁くん。……少しだけ、時間もらっていい?」




 彼女の言葉に、俺は素直に頷いた。




 彼女の歩くテンポは、いつもより遅かった。


 それは、まるで“言いたくないことを言いに行く人間の歩き方”だった。




 場所は、図書館裏のベンチ。




 昼間は日が差すけれど、夕方になるともう暗がりが支配する場所。


 彼女は、座らずに、立ったまま俺を見ていた。




 そして、切り出した。




「……私ね、転校してきたときから、真壁くんのこと、少し変な人だなって思ってた」




「変って……いきなりかよ」




「でも、それが気になって。知りたくなって。


 気づいたら、“誰よりも見てるのは自分だ”って思うようになった」




 彼女の声には、揺れがなかった。


 けれど、その目はどこか痛々しく光っていた。




「でも、それって――私だけじゃなかったんだよね」




 そう言って、彼女は微笑んだ。


 でもその笑みには、寂しさと、怒りと、自己嫌悪が混じっていた。




「妹さんも、暁月さんも……みんな、見てる。


 それでも、私、自分が特別だって思ってたの。だって、私だけが“外”から来たんだもん」




「明花……」




「だから、今日だけは……ちゃんと訊かせて」




 そして、彼女は一歩、俺に近づいて、




 真っ直ぐ、真正面から、問いかけた。




「ねえ、真壁くん。


わたしのこと――どう思ってるの?」




 一秒が、やけに長く感じた。




 “どう思ってるか”。




 それは、誰にでも言えるようでいて、たった一人にしか言えない言葉。




 好きだとか、嫌いだとか、そういう単純な話じゃない。


 大切に思ってるのか、守りたいと思ってるのか、


 それともただ、誰かの代わりなのか――




 俺は、答えなきゃいけないとわかっていた。




 でも。




「……明花のことは、“特別”だと思ってる」




「……それって」




「“好き”とか、そういう一言でくくれない。


 でも、明花を見てると、自分のズルさを突きつけられる。


 だからこそ――ちゃんと向き合いたいって思う」




 それは、“告白の返事”としては、


 あまりにも中途半端な言葉だった。




 でも――明花は、それを受け止めた。




「……うん。ありがと。


 たぶん、そう言われる気がしてた。……でも、ちゃんと聞けてよかった」




 彼女の目元が少しだけ潤んでいたけど、


 その涙は、一滴もこぼれなかった。




「でもね。私、負ける気はしてないよ」




「え?」




「“誰が一番、真壁くんを救えるか”って話になったら――


 私は、絶対に負けないから」




 そう言って背を向ける彼女の背中が、


 今までで一番、“戦う覚悟”に満ちていた。




 その夜。




 スマホに通知が届く。




【暁月ひより】


「あと2日。準備は、できてる?」




 そのメッセージの下には、画像ファイルが添付されていた。




 それは、俺と碧純がキスしそうになっていたときの、屋上の写真。




(……まさか……あのとき……!?)




 俺の背中に、冷たい汗が流れた。




(つづく)

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