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同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件  作者: 常陸之介寛浩★OVL5金賞受賞☆本能寺から始める信長との天下統一


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第十九話 恋人ごっこなんて、したくないのに

 文化祭前、ホームルームの終わり際。


「というわけで、今年の『カップルスタンプラリー』には、全学年からのペア参加が可能です!」


 担任のテンション高すぎる声と共に、教室がざわめいた。


「え? ガチでカップル限定なの?」


「え、リア充イベ!? そんなの聞いてねえ!」


「俺、妹と出るわww」


「それ、うらやま死刑!」


 そんなバカ話が飛び交う中、俺の背中をコン、とつつく指があった。


 ……碧純だった。


 彼女はプリントを見つめながら、小声で言った。


「……出ようよ、これ」


「……は?」


「カップルごっこ。どうせ出なきゃいけないなら、私と出ればいいじゃん」


「ちょっと待て、俺たち“兄妹”だぞ?」


「戸籍上は、従妹。誰も気にしないよ」


「気にするのは俺の心臓なんだよ!!」


「大丈夫。“ごっこ”だから」


 その“ごっこ”って言葉の重みに気づいてないのか、

 それとも、わざと乗せてきてるのか。


 彼女の瞳は、どこまでもまっすぐだった。


 文化祭当日。


 俺は、カップル証明書を首から下げ、

 クラスのカフェで「いらっしゃいませ~♡」という惨劇に包まれていた。


 その隣に立っているのは、

 私服風アレンジ制服+サイドポニー+控えめなアクセサリー姿の――


 妹。


 ……いや、もうこれ、妹って顔してない。


「お兄ちゃん、次のスタンプ、あっちの中庭みたいだよ?」


「あっ、ああ。あの、えーと、手、つなぐの?これ?」


「“恋人ごっこ”でしょ?」


 ぬるっと手を絡めてくる碧純。

 指の間まで絡めてくるとか、それもうアウトだろ。


(これ、どの辺まで“ごっこ”で許されんの!?)


 中庭、フォトブース。


「はい、次のカップルさーん! 撮影タイムでーす!」


「え、なになに!? 写真まで撮るの!?」


「はい、くっついて! はいポーズ♡」


「くっ……!」


 俺は、腕を組まれる。

 碧純の胸が、服越しに確実に触れている。

 そして頬がすぐ横にある。リップの甘い香り。


 そして――


「はい、撮りますよ~、ちゅーするフリも大歓迎です♡」


「……っ!?」


 カメラマンの冗談に、周囲が「きゃー♡」と盛り上がる中。


 碧純が、こっそり耳元で囁いた。


「……する?」


「しないわ!!!!」


「ふふ、顔真っ赤」


「当たり前だバカァ!!」


 文化祭の終盤。

 校舎裏の裏庭、スタンプコンプ後の“景品交換場所”。


 ふたりきりの時間が訪れた。


 俺は言った。


「……なあ、今日のアレ、ぜんぶ“ごっこ”だったんだよな?」


「うん。ごっこだよ」


「……全部?」


「……」


 碧純は一歩、俺に近づいた。


 風が吹いて、髪がふわりと揺れる。


「“ごっこ”だよ。

 でも、ちょっとだけ、本当でもよかったって思ってるのは――

 たぶん、私だけじゃないって、信じたい」


「……」


 その一言が、

 “兄妹”という仮面を、ほんの少しだけ、剥がしかけた。

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