第二章 館猫
前回のあらすじ:右上の「≪前へ」というところを押して読んでみてね!
私の目の前に、黒猫がいた。だけど、一体どこから入ってきたのだろう。
部屋のドアが開いた音はしなかった。そもそも、この館の玄関の扉は開かない。でも、私にとって、今はそんな事どうでも良かった。だって、初めて私以外の生き物に出会えたのだから。
「やぁ。初めまして。」
「初めまして。」
「...。」
挨拶をされたから返したのに、猫は何故か物足りないという顔をしていた。
「あら、どうしたの?」
「ねぇ君。猫が日本語を喋っているのに、なんで少しも驚かないの?」
「だって、猫と初めてお喋りするもの。どんな言葉を話してるなんて知らないわよ。」
「猫はそもそも言葉を発しないよ!君は猫を知らないのかい?」
「知ってるわよ、猫。"食肉目ネコ科ネコ属に分類されるリビアヤマネコが家畜化され...。」
「いぃいぃ、説明しなくても良い。自分の種族の事に関して説明される身にもなってくれよ。だいたい、どこでそんな詳しい説明読んだんだよ。」
「えっと確か...。そう、これ。この本。」
そう言って、一冊の本を取り出す。相変わらず少し重い。
「kiwipedia...ってそれ、本じゃなくて辞書じゃないか。」
「辞書。ふーん。」
「君と話してると疲れるよ。全く。」
「私も、なんだか目とか身体中が痒くなってきたわ。」
「...君、もしかして猫アレルギー?」
「そうかもしれないわね。どうしようかしら。折角話し相手ができたのに。」
「まぁ、そのうちなんとかなるよ。」
アレルギーのことは本で読んでいたから知っていたが、私がアレルギーかどうかは初めて知った。結構辛い。
「ってか、君とこんな話をしに来た訳じゃないんだよ。もっと面白い話をしてあげるよ。」
「私はこんな話も楽しかったわよ?」
「うーん、まぁ、とりあえず聞いてくれ。」
そうして、猫は言った。
「君は、自分が何者なのか知っているかい?」
「知ってるわよ。私はメリー、メアリー・シュリケア。多分11歳よ。」
「じゃあ、メリーは自分の親がどんな人か知っているかい?」
「...知らないわ。会ったこともないもの。」
「じゃあ君は、自分が何という生物なのか知っているかい?」
「それは知っているわ。」
「じゃあ、言ってみなよ。」
「人間よ。」
「残念。不正解だ。」
「え?」
人間についても、もちろん辞書で読んだ事があった。それに基づいて考えると、私は確かに人間だ。
なのにこの猫は、否定をした。私が人間だという事を否定したのだ。
「混乱しているようだね。教えてあげるよ、君が何者なのか。」
そうして、猫は告げた。
「君はね、メリー。魔女なんだよ。」
読んでいただきありがとうございました。
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続きが欲しいという要望が強ければ、僕が書きたいと思う限り続く可能性が高くなります。
この作品はフィクションです。