花咲学園開花祭 後編
「すみません。遅れました」
わたくしは肩で息をしながら、出し物の屋台に入っていきました。
「いいよいいよ、まだ五分前くらいだから。早く着替えて、もうすぐ開店するよ」
わたくしはエプロンを付けました。わたくしは料理が出来ないので、看板娘をやってくれと言われたのですが、正直やれる気がしません
「あ、あの……本当にわたくしが看板娘でよろしいのでしょうか」
「もちろん!友理可愛いし、もっと自分に自信持っていいんだよ」
「そ、そんな…私なんて全然です。妹にも同じことを言われましたが全然です」
「友理彼氏とか居そうなのに居ないんだよね」
そんな感じで友人とこのようなやり取りは開店の時間まで続きました。
「そろそろ開店するよー」
クラス委員の子がそう言うと皆自信に満ち溢れました。その時視線を感じたわたくしはキョロキョロと辺りを見まわしました。
「どうしたの?」
「い、いえ視線を感じて」
「まぁそりゃね友理は可愛いから」
「もうそのような冗談は通じませんよ」
「冗談じゃないんだけどな」
そう言って口を尖らせる友人
「じ、時間になりましたので開店します」
わたくしがそう言うと同時、たくさんのお客さんが殺到しました。
「ありがとうございます。クレープ一つですね」
「どうぞ、熱いので気を付けてお食べくださいね」
「クレープ二つーお客さん待たせてるよー」
「これは嬉しい悲鳴ですね」
わたくしは隙を見て友人に話しかけました。
「そうだね。やっぱりこれって友理が可愛いからじゃん?」
「まだそういうことを言うんですか…」
「事実だよ。だったらこの反響はどう説明するのさ」
器用に手を動かしながら話す友人を見て、わたくしは友人に憧れを持ちました。
「お姉ちゃん」
背後からそんな声を聞いたわたくしは振り返って、友実の姿を捉えました。
「どう?反響は、私が友だちをコントロールしたおかげだね。もっと褒めていいんだよ」
皮肉っぽく言う友実に友人は
「ありがとう。嬉しい悲鳴だよ」
「初めまして蘇上友実です。お姉ちゃんと仲良くしてくれてありがとうございます。こんなお姉ちゃんですが、今後ともよろしくお願いします。それじゃあ私はこれで」
言うだけ言って友実はクレープ屋から去っていきました。
「いい妹だね友理。ちなみに何であの子髪の毛ぼさぼさだったの?」
「わたくしがやりました。妹の出し物はお化け屋敷だというので…噓つきましたごめんなさい。いえ、噓でもないかもしれませんね。あまりにも出来た妹だったのでつい、撫でてぼさぼさにしてしまいました」
「本当に友理は…はい、どうぞ」
そんな感じで本祭は幕を閉じました。なお、お母さんは忙しくて明日も来れないだろうとのことです。
迎えた後夜祭、この日もクレープ屋の看板娘として午前中は働きました。
そして午後のメインイベント告白祭が近付いていきました。
「では、わたくしは体育館に居ますので何かあったら来てください。まぁ、何もないとは思いますが」
「うんオッケー、あれ?友理誰かに告白するの?」
今の時間は告白祭の十分前、一般開放は五分前になったらされるのですが、例外も居ます。そうです。告白祭に出る人たちです。
欄場さんが居ませんようにと思いながらわたくしは体育館裏に行きました。そこには欄場さんはおらず、少し肩の荷が軽くなりました。
告白祭本番。わたくしは十番目に告白をすることになりました。告白祭に出る人たちは皆番号が書かれた札を渡されます。そこには小~高等部までの生徒がたくさん居ました。
「友実ちゃん好きです」
小学部の生徒が多く告白をしていたのは友実でした。そして肝心の友実はと言えば「ヤダ」の一点張りでした。それになぜ友実がここに居るのでしょう。やりづらいですね
そして、十番のわたくしが呼ばれました。
わたくしは会場内を見渡して、彼の姿を確認すると一度深呼吸をしました。
「わたくしの名前は蘇上友理です。今回はお断りをするためにエントリーをしました」
その時、会場内にざわめきが生じました。だってそうでしょう。告白をする場なのに断ろうとする人間が居るのですから
「欄場辰巳さん、わたくしはあなたのことが好きでした。いじめから助けてくれたあの日から、ですがあなたには好きな人が居ることを知り、今回のような答えを出させていただきました。末永くお幸せに、そしてさようなら」
スポットライトが欄場さんを照らすか迷っていると
「友理!俺はお前しか好きじゃない。誰の事を言ってるか分からないが、お前しか好きじゃないんだ!」
「噓です。じゃあ前夜祭屋上に居た女子生徒は誰ですか!あなたの隣に居る、その子は誰ですか!」
わたくしは大粒の涙をこぼしながら欄場さんに向かって言いました。
すると欄場さんは分かったような顔をして
「あぁ、荘汰の事かようやく前夜祭の時何でいきなり屋上から出ていったのか謎が解けた。友理お前は一つ勘違いをしている。荘汰は男だぞ」
「え……?そうなんですか?」
わたくしは全身の力が抜けて膝から崩れ落ちてしまいました。
こうしてわたくしに人生初めての彼氏が出来たのです。