初めての嫉妬
あぁ、心臓の音がうるさいです。それに朝は欄場さんに素っ気ない対応を取ってしまいましたし、嫌われていないでしょうか
「あぁぁぁぁ…」
「どうしたの?どこか悪いの?」
「い、いえ…特には…」
これは友人に相談した方がいいのでしょうか。いえ、どうせ言ったとしても笑い者でしょうし、言わない方が…あぁぁぁ、もどかしいですね
授業が始まってもわたくしの頭には欄場さんしかありませんでした。
「友理」
この日は授業が終わるごとに欄場さんが教室に来てくれました。嬉しかったのですが、嬉しかったのですが少し恥ずかしかったです。
「なんですか?心配しなくても大丈夫ですから、わたくしのことよりも、自分のことに集中なさったらどうですか?もしかしてですが、わたくしの事しか眼中にないのですか?」
欄場さんは首を傾げて
「ん?もちろんだが?」
「はぁ~」
思わずわたくしはため息をついてしまいました。いや、嬉しいですが、嬉しいですが!
「ちゃんと授業を聞いてくださいね」
どの口が言うのですかどの口が
「善処する」
あぁぁぁ、謝らせてしまいました。謝らせてしまいました。違うんです欄場さん
「では、わたくしは行きますので」
そう言って逃げようとしたのが間違いだったのかもしれません。なぜなら欄場さんはわたくしの後をついてきたのですから
「ついてこないでください」
「なぜ逃げる?告白か?俺の告白がそんなに嫌だったのか?」
その言葉にわたくしは立ち止まって
「嫌じゃ……!ない、です……」
自分では力強く言ったつもりでしたが、最後の方がどうしても弱くなっていました。
「そうか…ごめんな、こんな男に告白されても困るだけだよな」
え……?勘違いさせてしまったでしょうか。これは早急に想いを伝えなくては
わたくしは欄場さんを正面にとらえて
「ら、欄場…さん…」
や、やはり無理です。
そして顔を見られず、すぐに目を反らしてしまいました。顔以外を見ようとしても筋肉がすごかったりしてやはりすぐに目を反らしてしまいました。
「やっぱり昨日の今日じゃ一緒には居られないよな」
そう言って欄場さんは自分の教室に戻っていきました。心なしか足元がおぼつかなかったような気がします。
食堂にて、わたくしは刺身定食を一人で食べていました。すると欄場さんが食堂に入ってきました。
「え?」
欄場さんは何と女の人と食堂に入ってきたのです。ただでさえ喉に通らなかった食事が更に通らなくなっていくのがよく分かりました。
欄場さんの隣で歩いている女子生徒はわたくしよりかは少し髪が短く、ボーイッシュにズボンを履いていました。
欄場さんはああいうのが好きなんですね。あれはきっと罰ゲームか何かだったのでしょう。そう考えると気持ちが楽になりました。
考えないようにしながら食べていると
「あ、お姉ちゃん」
「あぁ、友実ですか。どうしましたか?」
「ちょっと相席いいかなって、お姉ちゃん最近学校だとどうなのかなって、家だと全く学校の事教えてくれないんだもん」
「というか友実、今日はお友達と一緒ではないのですね」
わたくしがキョロキョロと周りを伺いながら言うと
「うん、今日は断ってきちゃった」
えへへと笑いながら自分が頼んだカレーをわたくしの前に置いて
「いただきます」
と言って食べ始めました。
「で、どう、好きな人とか出来た?」
「ブフッ」と醬油をテーブルの上にまき散らして
「な、何を言うのですか。わたくしに好きな人など……」
友実は悪い笑みを浮かべながら
「ふーん、そっかぁ居ないんだぁ。さっきの反応見たら居るのかと思っちゃった」
「からかうのもいい加減にしてください。もし居たとしても、こんなわたくしのどこがいいのか……」
「お姉ちゃんさ、もっと自分に自信持ちなよ。お姉ちゃんお母さん似だし、可愛いと思うんだけどなぁ」
友実が話しているにもかかわらず欄場さんの動きを目で追ってしまいました。
「―――……お姉ちゃん。お姉ちゃん!」
「は、はい。なんでしょう」
「はぁ~、今五回くらい呼んでたんだけど」
「申し訳ございません。そ、そう言う友実は居るんですよね。好きな人」
わたくしは話題を友実に振り返しました。
「ん?居ないよ」
い、い、居ないのですか?友実がそう言うものですから、てっきり居るのかと
「居ないのですか……お姉ちゃんが恋愛相談でもしてあげようかと思いましたのに」
「アハハ、いらない相談だったね、これ」
わたくしは笑えないです。現在進行形で好きな人が居るのですから、しかもその人が女の人とここに居るのですから
「―――……お姉ちゃん!また心ここにあらずだったよ。やっぱり好きな人いるでしょ」
「ゆ、友実には丸分かりなんですね。参りました」
その時、隣のテーブルに座っていた人の肩がビクッと動いた気がしなくもないですが、まぁ、気のせいでしょう
「友理に好きな人だと、気になる」
隣からそんな声が聞こえました。
「へぇーあれがたっちゃんの好きな人か」
たっちゃん!?今たっちゃんって言いました?
もちろんラブレターをもらってから一日目なのでそんなすぐに距離が縮まるはずがないのですが、わたくしはその人に嫉妬をしてしまいました。なお、わたくしはたっちゃんの部分に反応したので、当然のその後の言葉を完全に聞き逃してしまいましたが
「い、言う気失せました。ごめんなさい友実。この話は家でじっくり」
「仕方ないな。お姉ちゃんそこのところ経験なしか、まぁ私も人のこと言えないけど」