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第64話 ミカエルとのデート

 side カイツ


 妖精族との宴を終えた翌日。アリアも目を覚ましたので、俺たちは元の世界へ帰ることになった。ダレスは飲み過ぎの影響か完全にダウンしており、俺がおぶっている。その時は妖精族全員がお出迎えをしており、貴族のような扱いだった。


「そういや、スーパーマンズは宴にいなかったけど、何してたんだ?」

「訓練してたに決まってるでしょ! 私達はイシスという悪に敗北した。次は負けないように訓練するのは当たり前のことよ!」


 すごいストイックだな。彼女たちだって怪我があるのに訓練するって。そのストイックさは見習いたいものがある。彼女たちの真面目さに感心してると、ルサルカが話しかける。


「カイツー。絶対にまた来てね。嘘ついたらぶち殺すからね」

「分かってるよ。必ずまた来るさ。心配するな」

「絶対に来てよ! あの洞窟に来たら合言葉を言って門を出して来るんだよ。わかってる?」

「ああ。わかってる」

「オッケー。なら良し! カイツが来るの楽しみにしてるからね」

「カイツ様。我々妖精族も、貴方様か来るのを心待ちにしております。来てくれた際には、素晴らしいもてなしを用意しましょう」

「そこまでしなくて良いって言ってるだろ」

「いえいえ! 貴方様は世界を救ってくれたお方! もてなすべき神様なのです!」


 大げさだな。そこまでのことでもないだろうに。妖精族というのは、過剰にお礼をする優しい種族みたいだ。

 この世界に通じる門はそのままにしておくことになった。ただし、出しっぱなしにしておくのは危険なので、特定の言葉を言わないと門が出現しないように調整したらしい。ちなみに、そんなことが出来るのは妖精族だけらしい。妖精族って凄いんだな。1日も経ってないのに、この世界の復興がほとんど終わってるし。今いる野原は沢山の花が咲き乱れる綺麗な場所になっており、侵略されていたとは思えないほどに美しい。妖精族いわく、この程度の復興なら寝ながらでも出来るらしい。どんだけスペックが高いんだか。

 ただ、彼らは戦いを好まない穏やかな種族であり、底抜けにお人好しで、人を疑うことを知らない。恐らくだが、そこを突かれてアルフヘイムをめちゃくちゃにされたのだろう。


「それじゃあねえ。ばいばーい!」

「おう。ばいばーい」


 彼らに手を振りながら、俺たちは元の世界へ帰った。その後、ウルたちが乗ってきたという船に乗り、ノース支部を目指して帰っていく。船は自動で進むようになっており、かなりハイテクだ。


「はあ。にしても、随分と色々あったわね」

「そうだな。色々ありすぎて疲れた」


 ミカエルの食料を取りに行ったら、アルフヘイムが侵略されていて、それを助けに行ったらヴァルキュリア家の奴らと戦って。最後にはいつのまにかルサルカ助けてて。改めて振り返っても意味不明なことばかりだ。


「しかも、妖精族の男は誰一人として靡かなかったし、クロノスには好き勝手されてカイツにも見捨てられて。散々だったわ」

「尻軽女が暴走してたから止めただけですよ。あのままではカイツ様に迷惑がかかってましたから」

「チッ。ほんと鬱陶しい女ね」

「クロノス。ウルを尻軽女というのはやめろ。いくらなんでも可哀想だ」

「わかりました! ではこれから、ルーミナスと呼びますね」


 ルーミナス。ウルの下の名前か。まあそれなら良いな。なんでウルと呼ばないのか分からないが。


「それにしても、まさか妖精族があの変てこ天使を作る素材にされてるとは思わなかったわ。別のアルフヘイムも調査しておいたほうが良いかもしれないわね」

「? 別のアルフヘイムってどういうことだ?」

「ああ。カイツは知らなかったのね。なら、この機に教えてあげるわ。

 私達がアルフヘイムやヘルヘイムと呼んでる場所。便宜上世界とは呼んでるけど、これはその世界に住む種族にとって、街や村みたいなものなのよ」

「街や村?」

「そう。アルフヘイム1つにしても、ルサルカのいる場所以外に、何百ものアルフヘイムがあるのよ。それらは縄張り、あるいは巣のようになっており、その世界独自のコミュニティが作られているわ」

「えっと……つまり、さっきいたところ以外にも何百もの妖精族の世界あるってことか。じゃあ」

「そう。他の妖精族の世界も侵略を受けてる可能性がある。どうも、奴らのバックには巨大な組織がいるみたいだしね」


 巨大な組織。ヴァルキュリア家か。金と人脈だけはたっぷりある奴らだ。他の妖精族の世界を襲っていても不思議じゃない。


「バックがいるとしたら、恐らくヴァルキュリア家だ。モルペウスはそこでメイドをしていたと言ってた。可能性は高い」

「と言われても、私はそのヴァルキュリア家というのを全く知らないのよね。騎士団でもそんな名前は聞いたことないし。どんな組織なの?」

「人体実験大好き。人を人と思わない外道一族。社会の底辺が好みそうな一族だ」

「クズの一族ってわけね。にしても、どこでそんなことを知ったの? 騎士団に入る前は、一人旅をしてたりギルドに入ってるって聞いたけど、そこで?」

「……まあ、そんなところだ」

「ふむ。とりあえず、私の方でも調べてみるわ。無視できる要因ではないしね」


 話をしている最中、アリアがうつむいているのを見かけた。朝からずっとこんな調子だ。会話に入ろうともしないし、何かあったのだろうか。


「アリア。大丈夫か? 具合悪そうだけど」


 しかし、アリアは何の反応も示さなかった。俺は肩をゆすり、彼女に話しかける。


「おいアリア。聞こえてるのか?」

「!? か、カイツ。どうかしたのですか?」

「いや。どうかしたのかはこっちのセリフだよ。なんか具合悪そうだし、呼んでも反応なかったし。何かあったのか?」

「何か……いえ。なにもないです。なにもないはずなんです」


 彼女は俺に言うというよりは、自分に言い聞かせるようにそう言った。何があったか気になるけど。


「アリア。何かあったら遠慮なく言えよ。お前の望みなら、出来る限りは叶えてやるから」


 何でもないと言ってる以上、無闇に追求することもできない。それは彼女が可哀想だしな。


「ありがとうです。カイツは……優しいんですね。その優しさのせいで」


 優しい。本来なら褒め言葉になるはずだ。けど、彼女のその言葉は、何かを恨み、責めているように感じた。







 ノース支部に着いて報告を済ませた後、ダレスを部屋に入れ、俺たちは解散となった。アリアは俺の部屋で寝ることにしたらしく、俺は珍しく一人で行動することになった。


「さてと。どうしたもんかね」


 まだ昼頃だから、時間はたっぷりある。といっても、1人で買い物するのも味気ない感じではあるし。


『カイツ。カイツ』


 どうしようか考えていると、ミカエルが話しかけてきた。


「どうした? ミカエル」

『やることがないなら、妾とデートしよう。久しぶりにお主とデートがしたい』


 そういえば、ミカエルと2人で出かけることはしばらくなかったな。


「分かった。じゃあ久しぶりにあそこへ行こうか」

『ああ。ゆくぞお。スーパー大天使パワー!』


 その瞬間、俺の体は光に包まれ、視界が光で覆われた。玉になった状態でもこれを使えるのは凄いものだな。そう思っていると、目的地にたどり着いた。


 目の前に広がるのは青い海、白い砂浜。宝石のように輝いてる果物のなる木。素晴らしい場所だが穴場スポットのようで、人は全く見当たらない。


「こんなに良い場所なのに、人が全然いないんだな」

『ま、ここまでたどり着くのは骨が折れるからのお』 


 ここに来るためには森林を通らなければならないのだが、これがとにかく危険だ。変な猛獣がうろついてるし、霧が出てるせいで道も分かりにくい。それを乗り越えてここまで来る人も早々いないだろう。だからこそ、ミカエルが実体化しても問題のない場所だ。


「さあ。目一杯遊ぶとしようぞ!」


 彼女はそう言って実体化した。3対6枚の天使のような羽が綺麗だ。いつもと違って水着姿であり、紐ビキニというらしい。お尻があまり隠れていないし、色々と際どい。


「そーれ。大天使パワー」


 彼女がそう言うと、俺の服が変わり、水着となった。彼女の力は本当に何でもありだな。


「どうした? このような少女の体に見惚れとるのか? お主はまさかロリコンなのか?」

「お前の体に見惚れるかよ。馬鹿言うな」


 そう言って海に行こうとすると、彼女が後ろから抱きついてきた。


「おい。そういうのは」

「おやおやどうしたんじゃ? 顔が赤くなっとるのお。それに少しばかり興奮してるようじゃし。ルサルカのときは平気じゃったのに」

「うるせえな。お前だと色々変わるんだ。さっさと海行くぞ」

「ふふふふふ。妾相手だと変わるんじゃな。これは良いことを聞いたぞ」


 彼女は嬉しそうにしながら俺と一緒に砂浜を歩く。


「ふふふ。お主とこうして砂浜を歩くというのも良いものじゃな」

「そうだな。こうしてゆっくり出来るのも久しぶりだし、心地良いよ」


 海に入ると、冷たくも心地良い海水が俺の足を濡らす。ミカエルも手で海水をパシャパシャしながら楽しんでいる。


「ふふふ。久しぶりに海に来たが、良いものじゃのお。カイツ、一緒に泳ごうではないか」


 俺は彼女を抱えながらプカプカと浮かびながら泳いでいた。


「カイツの体は気持ちいいのお。筋肉はバッチリあるし、こうしてもたれかかると良い気分になれる」

「そうかい」

「それに、少しばかり興奮して赤くなってる珍しいカイツも見れるしの」

「うるせえよ……好きな人にここまでくっつかれたら、落ち着かないのは当たり前だろ」


 俺がそう言うと、彼女は急に顔を赤くした。


「そ、そうか。そうじゃな。ぬふふふふ」


 不気味な笑いをし始めた。女心というのはよく分からない。

 にしても、こうしてゆったりできるのは良いものだな。俺はそう思いながら、青空を眺めていた。

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