第33話 カイツVSアレウス 決着
「六聖天・第2解放!」
俺がそう言うと、背中に2枚の翼が増え、刀は強い輝きを放つ。それだけでなく、両手にヒビのような模様が入り、手首まで広がった。
「へはははは! そなな姿になっててても、かでべえよ!」
奴は背中から4匹の大きな白蛇を生やした。あの蛇、ぽんぽん背中や手から出て来てるけど、どういう仕組みなんだ。魔術のたぐいだとは思うけど、どんな魔術を使えばあんなことになるんだ。
「消えろごおおおおお!」
大きな白蛇は奴の声に続いてこっちに襲い掛かってきた。蛇たちの牙が俺に触れる寸前、その蛇を全て斬り落とした。
「!? ば、馬鹿かな! なんで蛇を斬れれ! さっきまででぎれながったばず!」
「魔力が回復したからな。この状態なら、あんたにも遅れは取らない」
「ぐぞが……調子にのぐなあああああ!」
奴は怒り狂ったように叫び、身体中から無数の蛇を出してこっちに攻撃してくる。刀の先端を奴に向け、周囲にいくつもの紅い球体を出現させる。
「剣舞・五月雨龍炎弾!」
紅い球体は一斉に放たれ、蛇たちを次々に撃ち落としていく。それでも蛇はどんどん出てくるが、それらは龍炎弾にやられて屍になるだけであり、俺に届くことは無かった。
「ばぜだ。ばぜ俺は勝てない。お前が奴隷になってパーティーに戻れば、全部解決するのぎぎぎぎぎ!」
「アレウス。何度も言うけど、俺は奴隷になるつもりはない」
「だばれ。この女たらしがああああ!」
奴は両手から棒のような蛇を出し、こっちに向かってきた。奴がその棒のような蛇をこっちに振り、俺に当たる前に、刀に魔力を集中させ、それを斬り落とした。
「……ばがな。なぜ」
「いい加減、目を覚ませええええ!」
俺は腕に魔力を込め、奴の顔をぶん殴った。
「ぎょべえああああ!」
奴は大きく吹っ飛んでいき、地面をバウンドしながら遠くに転がっていった。こんだけ強い力で殴れば、さすがのあいつも。
「ば、ばだだ。まだやられれなない。俺は……てめえを見返すんだ」
まだ倒れないのか。かなりのダメージを負っているはずなのに。本当に頑丈な奴だな。さすがはアレウスと言うべきだろうか。俺を役立たずというだけのことはある。奴は両手を突き出し、紫色の玉を作り出す。
「ごれごれごれで、終わりだあばば。おで馬鹿にしたこと。後悔しろごごごご!」
紫色の玉が放たれ、まっすぐこっちに向かってくる。速度は速いが、ギリギリ避けられる。けど、後ろにはリナーテたちがいる。避けずに受けとめた方が良いな。俺は刀に魔力を込め、その一撃を真っ向から受けとめる。
「ぐううう!?」
「ゲバババババ! ばがめ! それをまともに受け止められるはずがない。お前、終わぎだ。あの世び、いっぢまえええええ!」
「舐めんなよ。この程度であの世に行くほど、俺は甘くねえんだよ! うおおおおおお!」
俺は力を込め、紫の玉を上空に弾き飛ばした。弾き飛ばされた紫の玉は上空で爆発し、爆風がこっちに飛んできた。
「ば、ばがばががばががああああ! 俺のざいだい火力を弾げだのがあああああ!」
「これぐらいじゃやられねえんだよ」
「ざげるな。ざげるなざげるばざげるがああああああ!!」
奴は発狂したかのように叫び、俺に向かってくる。俺は刀を収め、奴の攻撃に備える。奴の手が俺に触れようとする寸前。
「剣舞・紅龍一閃!」
居合切りを放ち、奴の体を切り裂いた。といってもみねうちだが、それなりのダメージはあるはずだ。
「あ……あぎあ」
「これで、終わりだ!」
俺は全体重を乗せて奴の顔を殴り飛ばした。
「がびゃあああああ!?」
奴はまた大きく吹っ飛んでいき、地面を転がっていく。
「えう……なぜぼれが……負け……だんだ」
奴はその言葉を最後に意識を失った。こんだけ攻撃を叩き込んでようやく気絶か。奴自身の力か、それとも妙な力が原因かは知らないけど、耐久力だけに関していえば、かなり恐ろしいものだ。
「さすがねカイツ。あのアレウスを1人で倒しちゃうなんて。力を取り戻したあんたは恐ろしいものね」
「さすがカイツ様です。とんでもない実力をお持ちですね。ますます惚れてしまいます」
「そりゃどうも。それより、偽熾天使はまだいるのか?」
「ちょっと待ってね。奴らの数は」
彼女が懐から小さい水色の玉を取り出した。
「? それは」
「魔物レーダー。支部長が開発した物らしくて、町にいる魔物の位置を知ることが出来るの」
あの支部長、とんでもないものを作ってるな。こんな便利な物があるとは。
「えーと。残りの偽熾天使は」
リナーテが探している最中、突如、押しつぶされそうになるほどの強い圧を感じた。
「! な、なにこれ」
「この気配は!?」
「……目覚めましたか。あの獣女」
「クロノス。それはどういうー!?」
クロノスを問いただそうとした瞬間、巨大な青い光の柱が遠くから出現し、空を貫いた。
「ちょっと! 今度は一体なんなのよ」
「あの光……偽熾天使なの」
そう考えた瞬間、俺の脳裏にアリアの顔がよぎる。
「……アリアだ。あの青い柱を出してるのはアリアだ!」
「はあ? なんでそんなこと分かるのよ」
「なんとなくそんな気がするんだ。とにかく急ごう! アリアの身に何かあったのかもしれない!」
「ちょっと待ってよ! 置いてかないでえ!」
俺は青い柱の元へ走り、リナーテもそれについてくる。あの青い柱。そして、今にも潰されそうなこの強い圧。一体何がどうなってるんだ。
突如現れた青い光の柱。それを見ていたのはカイツ達だけでは無かった。フードを被った小さな人も、その光景を見ていた。
「は、ははは。あははははははは! 今日はほんとに凄い日なのだ! まさかあれの生き残りが存在してるなんて、思いもしなかったのだ。あはははははははは! わ、笑いが止まらないのだ。あははははは!」
その者はお腹をおさえながら笑い転げる。今起きていることが、その者にとってそれほど面白い光景らしい。
「あははははは。さてと。せっかくだし見せてもらうのだ。古代の神獣と呼ばれし、その力を」




