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第231話 対ミカエルの器専用兵器ルシファー

 ニーアとストーキンの戦いは、ストーキンが完全に優勢だった。ニーアは何度もレーザー攻撃を放つも、それらは全て鎧に吸収されてしまい、吸収された攻撃は倍の威力となって彼女に襲いかかる。

 既に熾天使(セラフィム)の力を解放し、黒い翼が3対6枚で背中から生えていて、魔力も大きくなっている。しかしその状態でも、状況を覆すことが出来ない。鎧の力を彼女の魔術、消滅(デリート)で消滅させようとも考えたが、効果は無かった。


「ちっ。魔術が駄目なら物理で!」


 彼女は一気に距離を詰めて何度も蹴りや拳を浴びせようと攻撃を仕掛けていくが、その攻撃は鎧から展開されるバリアで防がれてしまう。更に攻撃がバリアに当たる度に、彼女の魔力はどんどん吸い取られていった。


「物理も意味なし。なんなんだその力は」 

「ふむ。その黒い翼に白い髪。そしてその魔力。やはりお前は間男の妹かミカエル」

「兄様は間男ではない。むしろ対極に位置する聖人だ!」

「はーっはっはっはっは! それはありえないミカエル。あの男は俺の未来の嫁たるミカエル様を洗脳して寝取った罪深き間男。死して償うべき人類最悪の存在だミカエル!」

「償うのは貴様の方だ。兄様の事を好き勝手にボロクソ言った罪を償え!」


 彼女はそう言いながら首を蹴り飛ばす振りをして腹を狙うが、それも見えないバリアで防がれてしまった。


「はあ。思ったよりも弱いな。デウス・キメラとかいうのを倒したお前の実力はこの程度なのかミカエル?」


 彼は隙を突いて発勁をニーアの腹に浴びせ、大きく吹っ飛ばした。


「ごはっ!? このっ」


 彼女はなんとか体勢を立て直し、足に魔力と熾天使(セラフィム)の力を込めて海に着地する。

 本来、魔力で身体強化するだけでは海面に着地することは不可能。しかし、四大天使の力やそれに似通った熾天使(セラフィム)の力を使用すれば、海面に立つことも可能となる。ちなみに、ストーキンは熾天使(セラフィム)の力も四大天使の力もないので海面に立つことは不可能だが、フロートシューズと呼ばれる靴型の魔道具で海面に立っていた。最も、ニーアから魔力と共に熾天使(セラフィム)の力を吸収し、それを使って海面に立っているため、ほぼ無用の長物になっているが。


(最初に放った崩衝滅魔は、奴の履いてるフロートシューズを消し飛ばす目的で放ったが、効果は無かった。下が駄目なら上や後ろと思ってあらゆる方向から攻撃をしたが、それも効果無しで魔力を吸収されるだけで終わった。魔力切れの心配はまだないが、このまま吸われ続けて利用されるのは少し厄介だな)


 ニーアは試行錯誤しながら黒い翼を鞭のように振り回して攻撃するも、バリアによって全て防がれてしまった。


「本当に厄介な武器だな。その鎧は」

「弱い弱い弱々しいな。吸収した魔力、お返ししてやるミカエル!」


 鎧から魔法陣が展開され、そこから何十発ものレーザー攻撃が放たれる。一瞬翼で防ごうと考えたが、間違いなく防げないと考えて横に飛んで回避する。


「なにっ!」


 しかし、レーザー攻撃は曲がり、彼女の動きに追尾していく。あちこちを動き回って回避しようとするも、攻撃はしつこく彼女を捕らえて追ってくる。


「避けきれないか。ならばこれで!」


 ニーアは同じ数のレーザー攻撃を放ち、相殺することでなんとか防いだ。


「ふっふっふっふ。どうだい間男の妹よ。これぞルシファーの力だミカエル。貴様の脆弱な魔力など俺には効かない。そしてさっきのような追尾攻撃を、俺は何千回でも行うことが出来る。お前に勝ち目はないミカエル。諦めて道を譲りな。人類最悪でくそったれで醜悪な間男の妹であろうと、女性をいじめるのは趣味じゃないミカエル」

「悪いが、道を譲る気は毛頭ない。そして、兄様は間男ではないと言ってるだろ!」


 彼女はそう言ってレーザー攻撃を放つも、鎧に吸収されてストーキンに届かなかった。


「ならば仕方ない。そろそろこちらから行くぞ。ソニックモード発動ミカエル」


 彼の体が青い輝きを放つと、凄まじい速度で距離を詰め、何発も蹴りや拳を叩き込んでいく。その速度はニーアとは比べものにならないほど速い。鎧が吸収した魔力を使うことで彼は何倍も強くなっており、彼女はガードするだけで精一杯だった。


「ほらほらほらほらほらあ! てめえの力はそんなものかミカエル!」

「くっ。吸収した私の魔力を好き勝手使いやがって」


 ガードをしても痺れが残るほどのダメージがあり、更には攻撃を喰らうたびに魔力が吸収されて彼に利用される悪循環。このまま喰らい続ければ敗北は確実。ニーアに焦りが生まれ始めていた。


「この。崩衝波動!」


 彼女の周囲から消滅の力を纏った衝撃波が飛び出す。もちろんその攻撃は防がれるも、彼女が距離を取る時間は稼いだ。


「これならどうだ。魔術結界」

「させねえよ!」


 印を結ぼうとするニーアの手をストーキンが距離を詰めて蹴り飛ばし、魔術結界の発動を妨害された。


「切り札は使わせない。戦闘の基本であるミカエルよ。下劣なる間男の妹!」


 彼は言葉を続けながら連続で蹴りを浴びせていく。彼女は反撃する暇も与えられずにガードに集中するしかなく、蹴りの威力は腕に魔力を集中させて防御しても、強い痺れが残っていた。さらに攻撃が当たるたびに魔力がどんどん吸い取られていき、更に劣勢になっていく。


「くそ。このままでは」

「ほらほらほらほらあ。どんどん行くミカエル!」




 ニーアとストーキンの戦いを、クロノスは加勢する訳でもなくじっと見つめていた。


「相変わらず厄介な代物ですね。ミカエル信徒もふざけた物をつくってくれたものです」


 そうしていると、彼女の通信出来ーる君から声が聞こえてきた。


『クロノス。ストーキンの付けてるあの鎧は何なのにゃん? さっきからニーアの攻撃が全部吸収されてるにゃんけど』

「あれは対ミカエルの器専用兵器ルシファーです。ミカエルの力を吸収し、それを解き放つ機能があります。あれを見る限り、どうやら熾天使(セラフィム)の力も吸収するように改造してあるみたいですが」

『それじゃあニーアの攻撃は』

「全部吸収されて返されての繰り返しですね。キャパオーバーさせる方法もありますけど、その隙を許す相手ではなさそうですし、あのまま馬鹿みたいに熾天使(セラフィム)の力を使っても負け確実です」

『それが分かってるにゃら、クロノスも参戦して欲しいにゃんけど』

「今参戦するとあのクソガキに見られるから面倒なんですよ。探りを入れられたくないですし。それにルシファーを使ってるとはいえ、あの程度に負ける女なんてカイツ様に相応しくありません」

『……後半に言ったことが本音にゃんね』

「前半も本音ですけどね。さて、あの女はどうするの……へえ。これは面白いですね」




「ごはっ……な、なぜだ。物理攻撃だろうと……ルシファーで無力化出来るはずなのにミカエル」


 ストーキンは腹を抑えながら膝をついていた。


「それに……黒い翼も無くなって……お前、一体何をしミカエル!」


 ニーアの背中からは黒い翼が消えており、熾天使(セラフィム)の力も消滅している。わけの分からない事態に、彼はただ混乱していた。


「やはりその武器は、熾天使(セラフィム)の力を吸い取る効果があるようだな。なら対処は簡単。熾天使(セラフィム)の力を消してしまえば良い」

「ふざけるな……そんなことが……出来るわけがないミカエル」

「出来るさ。私の魔術、消滅(デリート)はあらゆるものを消滅させる。物質だけでなく魔術も魔力も消滅させられる。それを自身に行使し、魔術と熾天使(セラフィム)の力を消すことなど呼吸のように出来る」

「ぐっ……随分とでたらめな女だ。だが、貴様はミスを犯した。ソニックモード発動ミカエル!」


 彼の体が青い輝きを放つと、一気に距離を詰めて彼女の背後に回り込んだ。


「魔術を持つ者と持たない者の差は絶大。更に、吸収したお前の魔力はまだ残っごびゃ!?」


 彼が攻撃しようとするよりも先に、彼女は彼の顔を蹴り飛ばした。


「ぬん。このお!」


 彼は周囲を飛び回りながら高速移動し、彼女の視界から外れた隙を狙って背後から攻撃するが。


「ごびゅっ!?」

「無駄だ。お前の攻撃はもう届かない」


 来るタイミングが分かってたかのようにカウンターで胸に蹴りを入れられ、大きくふっとばされてしまった。


「なぜだ。なぜ熾天使(セラフィム)を失ったお前が、ソニックモードについていけミカエル」

「魔術や熾天使(セラフィム)は失ったが、魔力での身体強化は可能だ。それにその様子だと、自分の変化に気づいてないようだな」

「何の話だミカエル」

「いや。気づいてないならそれで良いさ。そうやって無意味に無駄な攻撃を馬鹿のように続けると良い」

「舐めやがって。ならばこれはどうミカエル。ミカエル様を守るために身に着けた愛の力。タイタンモード発動ミカエル!」


 彼の体が赤い輝きを放ち、全身の筋肉が2回りほど大きくなっていく。


「くらえ。ミカエル様と結婚したいパンチ!」


 大ぶり拳が襲いかかってくるが、先ほどよりも攻撃スピードは落ちており、簡単に躱されてカウンターで顔に蹴りを入れられてしまう。


「効かないねえ。ミカエル様を守る愛の力はこの程度ではやられない!」


 彼は攻撃に怯むことなく連続でパンチしていくが、それも躱されて距離を開けられてしまった。


「なるほど。少しは出来るようだな」

「当然。俺はミカエル様の夫となる男。そんじょそこらの雑魚とは次元が違うミカエル」

「だが、お前の攻撃はもう当たらない。青いのだろうと赤いのだろうと避けるのは簡単。もうお前に勝ち目はないぞ」

「ふん。それはどうかなミカエル」


 彼の体が紫の輝きを放ち、ニーアから吸収した魔力をふんだんに解き放つ。


「タイタンモードとソニックモードの融合。名付けてタイタニックモードミカエル! この力で貴様を」


 しかし、徐々に放たれる魔力は少なくなっていき、紫の輝きもどんどん薄くなっていった。


「な、なんだ。何が起こったのだミカエっ!?」


 困惑する中、彼は何かに抑えられてるかのように、その場で這いつくばる。


「うぐぐぐ。体が……重い」

「やはり、その鎧は装着してるだけで魔力を消費するタイプの魔道具だったか」

「それが……なんだというのだミカエル……ぐおっ。これは……やばいミカエル」


 体の表面に纏っていた魔力が無くなっているのか、彼の体が少しずつ海に沈み始めた。


「貴様は私の魔力を吸収出来なくなってからも、魔術を使いまくった。その魔道具で魔力を消費し、更に魔術を使用してるのなら、よほど魔力が多いものでなければ、あっという間にガス欠するのは当然のことだ。後先考えずに戦うからそうなる」

「そんな……無敵のルシファーにこんな……弱点があるなんてミカエル。想定外過ぎるミカエル」

「確かに、私のような熾天使(セラフィム)持ちには無敵のような存在だった。しかし、どんなに優れた道具であろうと、使い手が馬鹿では宝の持ち腐れ。さて。また援軍を呼ばれても面倒だし、しばらく大人しくしてもらう!」


 彼女は一気に距離を詰めて彼の顎を蹴り飛ばし、空高く吹っ飛ばした。


「まだ終わらない」


 更に距離を詰め、追撃で彼の腹を何発も連続で殴っていく。


「せい。せいせいせいせいせいせいせい! とどめー!」

「あぼっーー!?」


 最後の一撃で彼の顎の骨が砕けるほどの勢いで蹴り飛ばし、空高く吹っ飛ばした。


「その痛みを味わってしっかり反省しておけ。兄様を間男と侮辱した罪をな」

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