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番外編 バレンタインイベント

 Side カイツ


 ノース支部で過ごしていたある日のこと。俺はダレスと一緒に談話室で話をしていた。


「バレンタイン?」

「そっ。女の子が男にチョコを渡す日をそう呼ぶんだ〜。恋する女の子たちがチョコに気持ちを込め、愛する人に渡して告白する面白イベントなんだよ」

「ふーん。チョコを渡して告白ねえ。確かに面白そうなイベントだな」

「でしょー。特にカイツとかはたーくさんの女を侍らしてるからね。一体どれほどのチョコを貰えるのか楽しみだよ。最近ではアレクトとかも堕としたって聞いたよ。隅に行けないですねおにいさーん」

「だれがお兄さんだ。そして、彼女の名前はアレクトじゃなくてマリネだ。最後に、人聞きの悪い言い方をするな。彼女とは仲間になった。それだけのことだ」

「ふーん。牢屋の中でキスして告白されてたのに?」

「いや、それは……待て。なんでお前がそれを知っている」

「ふっふっふっふー。私の情報網見くびらない方が良いよ。にしても、カイツは本当に色んな女にモテるよね〜。ミカエル、アリア、ウル、ラルカ、クロノス、ニーア、リナーテ、メリナ、マリネ。いやー、これは本当にバレンタインがどうなるか楽しみだよ。とはいえ、マリネは監獄に入れられてるから無理だろうし、リナーテとメリナも忙しそうだから厳しそうだけどね〜」

「そういうダレスは、誰かにチョコを渡す予定とかないのか?」

「私? んー、あんまり興味ないかな。料理苦手だし、渡したいって思う相手もいないし。というかチョコ渡す暇あるなら、戦いたいし。そっちのほうが私好みだし」

「お前。本当に戦闘狂だな。いつでも戦うことばかり考えていて恐ろしいよ」

「だーかーら。私は戦闘狂じゃなくて、戦いが好きなだけの普通の人だってば。そこをちゃんと理解してよねー。戦闘狂だと、頭おかしい奴みたいになっちゃうじゃん」

「……そうだな。俺の言い方が悪かった。ダレスは戦いが好きなだけの普通の人だな」

「分かれば宜しい」


頭おかしいという評価は、あながち間違いとは言えないのではないかと思ったが、俺はそれを口にせず、心の中にしまいこんだ。




 バレンタイン当日。目を覚ますと、なぜか大きいウルがブカブカのローブを着用し、俺の上に乗っかっていた。


「……ウル?」

「ハローカイツ。調子はいかがかしら?」

「悪くはないけど、なんで俺の上に」

「ふふふふ。カイツ。今日は何の日か知ってるかしら?」

「えっと、バレンタインだよな。それと何か関係が」

「そう、バレンタイン。私はは考えたのよ。どうすればカイツにとって一番のプレゼントになるのかを。ただチョコを渡すだけでは駄目。それでは何の感動も特別感もないわ。口移しで渡す。悪くはないけど、多分、ニーアとかアリア辺りがやるだろうし、オンリーワンになれなさそうだから却下。オンリーワンでナンバーワンな特別な事をカイツとして、イチャイチャラブラブしたい。そう思って必死に必死に必死に考え、ついに考えるのがめんどくさくなってこうすることにしたのよ!」


 彼女が勢いよくローブを外すと、その体に視線を奪われる。彼女は下半身と上半身の胸部分だけをリボンで巻いてるほぼ全裸のような姿となっており、非常に扇情的だ。


「えっと……その姿は」

「ふふ。プレゼントはわ・た・し。さあカイツ。私のことを思う存分に食べ」


 彼女が飛びかかろうとした瞬間、何本もの鎖がその体を縛り付けた。 


「ぬびゃ!? な、何よこの鎖は!」


 鎖の出処を見ると、ラルカが顔を真っ赤にしながら、扉の前に立っていた。


「ラルカ」

「我の右腕に。なにをしてるんだああああ!」

「ぎゃああああああ!?」


 ラルカは怒り狂ってウルをぶん投げ、彼女は扉を突き破って外に投げ飛ばされてしまった。


「ちょっ。ウルーーー!」


 必死に彼女を追いかけようとすると、ラルカがそれを止める。


「心配するな。ちゃんと無傷で済むようにぶん投げている。それより、今は我のことに集中しろ」


 そう言うと、彼女はブカブカの袖の中からハートの形をした箱を渡してきた。可愛くラッピングされていて、小さな薔薇の飾りが付けられていてとても綺麗だ。


「これは」

「ハッピーバレンタインだ。我が右腕よ。我の手作りチョコ。存分に味わうと良いぞ」

「ありがとうラルカ! 手作りしてくれるなんて。すごく嬉しいよ」

「そうだろうそうだろう。もっともっと感謝しろ。なんなら頭を撫でても良いのだぞ」


 そう言いながら、頭を近づけて甘えようとする姿に、思わず微笑んでしまう。


「了解。本当にありがとうな。ラルカ」


 頭をなでると、彼女は気持ち良さそうにふへへと笑う。


「ああ。我が右腕の撫で撫で。癒されるな〜。良いか右腕。我が手作りのチョコを渡したのはお前だけだ。その意味をきちんと理解してちゃーんと味わって食べろよ」

「分かった。大切に味わって食べるよ。ラルカの気持ちがこもったチョコだからな。それを察せないほど馬鹿じゃない」

「ふん。分かれば良いのだ。ふへへへ」


 その後、彼女のチョコを食べながらお茶をして過ごした。彼女の作ってくれたチョコは少し甘すぎる所はあったが、美味しくて食べる手が止まらず、いつまでも食べていたくなるような素晴らしい出来栄えだった。



 ラルカとお茶をした後、彼女は俺の膝の上に座って俺は頭を撫でていた。


「ふへへへ。右腕と~久しぶりに~癒される~」


 顔がどんどん緩くなってるな。いつもの俺様系の態度はどこにいったのやら。まあ、今日はバレンタインだし、しばらくはこうしてのんびりするのも。


「右腕。我は最近寂しかったのだぞ。全然会えないし話せないし。お前は我の右腕なのに、あっちこっち行き過ぎだ。まあ、色んな人との縁があるのは、良い所であり悪い所でもあるのだが」

「ごめん。確かにここ最近はラルカに構えてなかったな。すまなかった」

「別に謝らなくても良い。偉大なる我は心が寛大なのだ。それに、右腕もいろいろと頑張っていたことも、偉大なる我は知っている。だから気にするな。これは、偉大なる我のわがままうひゃ!?」


俺は彼女を後ろから強く抱きしめる。


「み、右腕!?」

「気にするよ。ラルカの悲しい顔は見たくない。お前が笑っていてくれるなら、どんなわがままでも……ま、頑張って叶えてやるよ。だから、なんでも言ってくれ。ラルカにはずっと笑っていてほしいから。それに、偉大なる魔術師になるラルカ様を悲しませるなんて、右腕として最低の行為だからな」

「ふへへへへへ。なら右腕。このまましばらくは、我の抱き枕になってもらうぞ」

「お安い御用だ」


そうして一緒に寝転がろうとすると。


「カイツ様。こちらにいらしたのですね。ん? なぜ扉が吹き飛んでるんですか」


 クロノスが俺の部屋にやってきた。それと同時にラルカは俺の膝の上から飛び退いて立ち上がり、腰に手を当ててふんぞり返るような姿勢となる。


「誰かと思えば、クロノスではないか。なぜお前がこんな所に」

「カイツ様に用があったから来たのですが。鎖女の方こそ、何をしてるんですか?」

「い、いやなに。ここから偉そうに見る景色というのも、な、中々良いものでな。はーはっはっはっは! ここから見る景色は最高だなあ。偉大なる我に相応しいなー!」

「? まあどうでも良いです。それよりカイツ様。これを。ハッピーバレンタインです」


 そう言うと、彼女は可愛くラッピングされた四角くて赤い箱を手渡してきた。箱全体には、黒い薔薇の絵が12個描かれており、少しだけ恐ろしく感じる。しかし、俺へのプレゼントと考えると、そんなふざけた思いはすぐに消えてなくなった。


「ありがとうクロノス。これって、もしかしてチョコか?」

「いいえ。それよりも良いものですよ。開けてみてください」


 そう言われて開けると、中には黒い宝石のついたネックレスが入っていた。宝石は薔薇の形をしていて美しく、その輝きに目を奪われてしまう。


「これは」

「カイツ様のために、私が1から作ったネックレスです。私は料理の才能などありませんから、別の物をプレゼントしようかと。いらなければ捨てて構いませんよ」

「そんな外道なことするわけないだろ。ありがとうクロノス。こんなに綺麗なネックレスを貰えるなんて、すごく嬉しい。一生大切にするよ」

「ふふふ。そう言ってくれて嬉しいです。良ければ、私が着けてあげましょうか?」

「良いのか? なら頼む」


 彼女はネックレスを取り出し、俺の首の後ろに手を回してネックレスを着けてくれる。あと、さっきからラルカの顔が少し怖い。表情はニコニコしてるが、明らかに目が笑っていないのだが。


「ふふふ。カイツ様の顔が近くていいですね。吐息を感じられて良いものです」

「あ、ああ……にしても、流石にここまで近いと、少し恥ずかしいな」

「カイツ様の照れた顔。ふふふふ。初めて見ましたが、とても良いものですね。ちゅっ」


 すると、彼女は俺の唇にキスをし、舌を口の中に入れ込んできた。


「んぐっ……クロノ……んう」

「んちゅっ……ちゅぱっ……んんう。カイツ様。しゅき……しゅきでひゅ。れろ……んあっ」


 彼女は蕩けた顔をしながら、さらに深くキスをし、俺の前身は彼女の手で強く抱きしめられる。ラルカの方を見ると、目から光が消え失せていた。視線をラルカの方に向けたせいか、ムッとした顔のクロノスが視線を無理やり自身の方に向けさせ、更にはベッドに押し倒してきた。その時間は永遠に思えるほど長く、心地良いものがあった。キスを終えると、銀色の橋が俺たちのかかり、互いにじっと見つめ合う。


「ふふふ。カイツ様の唇を頂いちゃいました。ホワイトデーではもっと良いものを期待してますよ。では、私は用事があるのでこれで。さようなら~」


 そう言って、彼女はその場を去っていった。残ったのは茫然と立っている俺と、目の光が消えて絶望に包まれたような顔をしてるラルカだけだった。


「これは……驚いたなあ」

「な、ななななな……何をしてるんだ貴様らはああああ! 右腕の馬鹿あああああ! ぶっ飛ばされろおおお!」

「ちょっ、ラルカ。のぎゃあああああ!?」




 その後、暴れまわるラルカを何とか抑えつけ、彼女は俺のベッドでお昼寝をしていた。なぜか俺の着ていた服をぶんどってそれを抱きしめながら。新しい服を着た後、俺はソファーに座り込んでいた。


「ふう。まだ昼になったぐらいの時間なのに、どっと疲れた気がする」

「おやおや。兄様にしては珍しくヘトヘトのようだな。なんだかエロティックで良いな」


 天井を眺めながら呟いていると、ニーアが俺の頭上に現れた。彼女の目に隈が出来ており、数日は寝てないように見られた。というか、なんかキャラがおかしいような。


「ニーア。なんでここに。今日は任務があるって聞いたんだが。というか、なんか変なものでも食べたか?」

「いや、変な物は食べてないから心配ナッシング。ここに来たのは、任務の前にやりたいことがあってな。すんすん、すーーー。いい匂いだなぁ。久しぶりに兄様の匂いを嗅げる〜」


 なぜか分からないが、彼女は俺の頭に顔を埋めて匂いを嗅いでいた。


「ニーア?」

「うふふふ。兄様の匂い〜。兄様の体〜。うわ、兄様の体エロすぎ。これはもう監獄に入れなければならないレベルの凶悪犯罪だ。ずっと触っていられる」


 何故か、俺の服の中に手を入れてスリスリとしてきて、少しくすぐったい。だいぶキャラが違うようだが、色々な意味で大丈夫なのか。


「ふへへ。この匂いからすると、ずいぶんとお疲れ様のようだな。そんな兄様にハッピーバレンタインのプレゼントだ」


 彼女はそう言いながら、ポケットから2枚の黒い布を取り出した。その布の正体は。


「……それって、パンツとブラだよな?」

「正確にはパンティーとブラジャーだ。黒のレースで重要な部分以外はスケスケのスケベな下着セット。兄様の好みに合わせて魔改造しておいた」

「俺の好みかどうかはともかく、なんでそれをプレゼントに」

「チョコを渡しても良いと思ったが、どうせなら特別な物をプレゼントしようかと思ってな。それには何が良いかを考えたり、色々な本を読んだ結果、この下着セットを渡すのが良いと判断した。安心しろ。これらは昨日使用したばかりの物だ。洗っていないから、匂いはちゃーんと残ってるぞ」

「いや。それは聞いてないし、何も安心できる要素が無いんだが。後、流石にそのプレゼントは」

「む。兄様はこのプレゼントはお気に召さないか? 私のとっておきの下着だと言うのに。本ではこういうプレゼントは喜ばれると書いてあったのだが」


 彼女の目に涙が溜まっていき、今にも泣きそうになっている。まずい。彼女を悲しませるわけにはいかないんだ。


「いやいやいや。すごく気に入ったよ。こんなにも良いプレゼントをもらえるなんて、俺はとても幸せ者だ」

「うふふふ。喜んでくれて良かった。これは兄様の部屋のクローゼットに入れておこう。クンカクンカしたくなったときは好きなだけ嗅いで良いからな」

「あ、ああ」


 ニーアは自身の下着を俺のクローゼットにしまい込んだ。というかあのクローゼットはアリアも使うのだが、彼女に見つかった場合はどうすれば良いのだろう。やはり今からでも断る……いや、せっかくのプレゼントを断るというのもあれだし。


「さて。では私はこれから任務に行ってくる。兄様、後で私の下着の匂いの感想を頼んだぞ。それと、洗濯ボックスにあったパンツ貰って行くぞーうへへへ。兄様の使用済みパンツ。ちょっときつめだけど、良い匂いだな〜」


 いつの間に俺の下着を。というかニーアの奴、どんどんおかしな方向に行ってる気がするが。


「あ、ああ。それよりニーア……えっと、体は大丈夫か? 最近は任務ばかりのようだけど、疲れは取れてるのか? 今からでも休んだ方が良いんじゃ」

「問題ないないないナッシング。きちんと疲れは取れている。兄様へのバレンタインで悩み過ぎて寝不足だが、体はげんげん元気だからな。では、任務が終わった後、兄様のパンツの匂いかがせてくれー」


 そう言って、彼女はその場を去っていった。


「……はあ。匂いを嗅ぐってのは気が進まないけど、せっかくのプレゼントではあるから、大事にしておこう」


 にしても、ニーアがあんなプレゼントを贈ってくるとは思いもしなかった。疲れてまともな判断が出来てなかったからよくわからないプレゼントを贈っただけだと信じたい。明らかにキャラがおかしかったし。


「今からでも彼女の様子を見に行った方が」

「その心配はいらないわ」


 後ろから声がしたかと思った瞬間、俺はいきなり押し倒されてしまった。


「う、ウル!?」

「ふふふふ。投げ飛ばされた時はどうなるかと思ったけど、鎖を破壊してここに来ることが出来たわ。カイツ、私のバレンタインプレゼント、たーっぷり受け取ってもらうわよ」

「……え、えっとお手柔らかに」


 その後、彼女と何時間にも及ぶ儀式を行い、その後も他の団員からチョコを貰ったり、一緒にお出かけをしたりして、気づけば夜になっていた。


「ふう。ウルたちと過ごしたクリスマスと比べると、ずいぶん忙しかった気がするな」

「じゃのお。妾が手を出す暇もありゃせんかったわ」


 小さいミカエルが実体化し、俺の上に乗りながら現れた。


「ミカエル」

「ふふふ。ようやく妾の番じゃな。思ったよりも時間がかかってしまったわ」


 彼女は胸元から1口サイズのハート形のチョコを取り出し、それを口にくわえる。


「ハッピーバレンタイン。妾からのプレゼントじゃ」


 そう言うと、彼女は俺の口の中にチョコを入れてきた。甘いチョコが俺の口の中で溶けていき、彼女の舌が唾液と一緒に口の中に広げていくように舐めまわしていく。


「んむっ……妾を中に入れておきながら色んな女といちゃついて……ちゅっ。んあ……んう。妾をずーっと放置しておったのじゃから、それなりの償いはしてもらうぞ。安心せい。儀式はせぬ。お主も疲れておるじゃろうしな。しかし」


 彼女は俺の耳に近づき、はむっと歯が少し触れるくらいの優しさで噛んできた。


「のわ!? ミカエル?」


 だが、それは俺にとって未知の感覚であり、全身がぞわぞわするような、それでいて気持ち良く、もっと欲しくなってしまう妙な感覚に襲われてしまった。


「しばらく、妾のおもちゃになってもらうぞ。今宵、アリアは任務で出かけていておらんからの。久しぶりに2人っきりの時間じゃ。たーっぷり楽しもうぞ」

「り、了解」


 その後、俺はミカエルに体の全身を舐めまわされ、俺も彼女の体のあちこちを舐めまわし、奇妙だけど、楽しくてどこか心地良い時間を過ごすことが出来た。






 翌日。ニーアはうなだれた状態で部屋のソファーに座っており、アリアはそれを見ながらお肉を食べていた。


「どうしたの。さっきからずっとうなだれてるけど。。てか、そのパンツって、匂いからしてカイツのだよね。なんでブラコン女が持ってるのさ」

「……完全にやってしまった。疲れていたとはいえ、この私があんな醜態を晒すことになるとは」

「醜態? 一体どんなことを」


 気になったアリアがニーアの体に触れ、過去を読み取って昨日の出来事を確認した。


「はー。クローゼットから鬱陶しい匂いが漂ってるなあと思ったけど、そういうことだったんだ。でもこの程度、醜態の内に入らないでしょ。ド変態マゾ女の本性が外に出ただけだし」

「変態は100歩譲って認めてやるが、マゾではない。貴様やクロノスと一緒にするな」

「サイコパスのツインテはともかく、私はマゾじゃないし、変態でもないんだけど」

「私が盗撮した写真に釣られる奴が何を言ってるのやら。そういえば昨日、お前は任務でいなかったようだが、兄様にプレゼントは渡せたのか?」

「プレゼント? 昨日って何かあったっけ。カイツの誕生日ではなかったと思うけど」

「バレンタインイベントがあっただろ。まさか、お前は把握してなかったのか? あんなにもイチャイチャできるチャンスのある絶好のイベントを?」

「バレンタイン……ああ、そんなのあったね。けど私、そのイベントあんまり好きじゃないんだよね。クリスマスと違って、バレンタインはイベント限定の商品がお菓子だったり甘ったるそうな飲み物ばかりでお肉は一切れも見当たらないし。そもそも甘いものは好物でもないし。告白イベントとか持て囃されてるみたいだけど、私からすれば、告白なんてイベントとか関係なく、自分のやりたいタイミングで勝手にやれば良いじゃんとしか思えないし。イチャイチャだって、イベント関係なくやっても良いわけだし、私にとっては、バレンタインの存在意義がよくわかんないんだよ」

「ずいぶんとバッサリだな。もしかして、バレンタイン嫌いなのか?」

「嫌いではないよ。興味がないだけ。カイツと一緒に美味しいイベント限定のお肉を食べられるならともかく、そうでないなら、私にとってはどうでも良いし」

「お前にとっては、肉を一緒に食べられるかどうかが重要というわけか」

「フェンリルだからね。甘いものより脂の乗ったお肉を好きな人と一緒に食べる方が楽しいんだよ」

「なるほど。そりゃあ、バレンタインは興味がないわけだ。クロノスはどうなのだろうな。あいつはこういう恋愛イベントは参加してそうだが」

「そういえば、あのサイコパスツインテはどこにいるの? もう集合時間過ぎてるんだけど」

「どこかでサボっているのか、あるいは爆睡でもしてるのか。全く。こっちの仕事も重要なのだから、早く来てほしいものだが」



 ニーアがぼやいていたその頃。クロノスは薄暗い自室で、小さな黒い宝石を耳に当てていた。頬はほんのり赤く染まっており、目はハートマークが浮かんでるかのようにとろーんと蕩けていて、口元からはだらしなく、涎を垂らしている。その宝石からは心音やカイツの吐息や話し声がわずかに聞こえていて、彼女はそれを聞くたびに体を軽く震わせていた。


「ふふふふふ。カイツ様に送ったステルススピーカー。ちゃーんと機能してますねえ。はあ、カイツ様の心音、体温、言葉、吐息……んあっ! んんう。はあ、はあ、はあ、はあ……これをずっと聞けるなんて、想像しただけでびしょ濡れになりそうです。ああ、カイツ様。あなた様の音を、声を、吐息をもっと。普段なら聞くことのできない音をもっと、哀れなメス犬の私に」


 彼女がプレゼントした黒い宝石のネックレス。それは彼女が開発した魔道具であり、カイツの心音や話し声、吐息や生活音等を盗聴して聞くために用意したものなのだ。ばれないようにするための隠蔽対策も完璧に行っており、カイツはもちろん、ミカエルでさえ、ネックレスにはあまり疑いの目を向けていなかった。


「ふふふふ。あら。いつの間にか、ニーアたちとの集合時間も過ぎてますね。でも、あと少し。もう少しだけ。あ、カイツ様はお手洗いに行くみたいですね。ふふふふ。こんな音が聞けるなんて、私はなんて幸せ者なのでしょう」


なおこの後、何時まで経っても来ない事に業を煮やしたニーアたちが乗り込み、クロノスの企みがばれてネックレスも破壊され、アリアから殺す気満々で攻撃されることになるのだが、それはもう少し先のお話である。

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