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第225話 元ウェスト支部メンバーの処遇

 生首だけという衝撃の容姿にメリナたちは驚きで声も出なかった。


「ぐごごごごご。ぎぴゅー」

「あら。まだアマテラス支部長は寝てるのね。まあ良いわ。会議を始めましょう。始めましょう」


 アマテラスが爆睡していたが、支部長たちは気にする様子もなく会議を始める。その時点でメジーマたちの頭はパニックになっていたが、彼らのパニックを余所に会議は始まり、最初に話したのはカオス本部長だった。


「ではロキ支部長。貴方の意見を聞かせて聞かせてほしいわ。元ウェスト支部メンバーたちがどれくらい役に立つのか」

「その辺は報告書で既に提出してるはずだが」

「紙切れなんていらない。いらないわ。私が欲しいのは言葉。そして言葉の中に隠れた思惑や感情。それらを知るためにも、あなたから直接聞きたいの」

「はいはい分かりましたよ。彼らについての評価だが、複数人で戦ったとはいえ、あの六神王の1人、ハデスを倒した実績と実力は褒めるべきだろう。彼らは年にしては経験値も多いし、異常時が起きた時の対処もそれなりに出来る。もし騎士団が何の問題も抱えていなければ、彼らは是非スカウトすべき人材だが、はっきり言わせてもらうと、今の騎士団には彼らの居場所はない。私達はヴァルキュリア家との戦いで多大なダメージを負い、支部が1つ滅ぶという大惨事に陥った。この状況でメジーマたち程度の実力者を引き込む余裕は、少なくとも私の支部には無い」

「俺もロキの意見に賛成だな」


 ロキ支部長の言葉に続くように、エフェメラル支部長が話す。


「付け加えるなら、俺にとっては、あいつら程度の実力者はどんな状況でもいらないってことだ。俺の圧に飲まれる程度の能無しなんざ必要ねえ。こっちもヴァルキュリア家とか六神王とかいうチンピラ共のせいでひでえ目にあったし、仕事はパンク状態だからな。あんな雑魚どもはさっさと切り捨てて新しい奴を引き込むのが一番良い方法だと思うぜ。こんなくだらない会議に時間使うのなんざ無駄無駄」


 イドゥン支部長はこの批判ラッシュに我慢ならず、思わず立ち上がった。


「申し訳ありませんが、彼等も必死に努力しています。それに、メジーマちゃんは冷静な判断力と生真面目な所、頭の良さや魔術の応用力も素晴らしいです。メリナちゃんとリナーテちゃんはまだ新人で荒削りなところはありますが、ポテンシャルは素晴らしいですし、魔術の使い方も並外れたセンスを持っています。それに、まだ期限までは時間があります。そこを考えて評価してくださると」

「うるせえんだよ。ゆるふわ脳タリン女が」


 イドゥンの話を、エフェメラルが鬱陶しそうに遮る。


「てめえのカスみてえな主観的評価なんざいらねえんだわ。今そいつらに対してするべきなのは客観的評価だ。努力してるとか言うけどな、努力なんざやってることが大前提なんだよ。頭の良さだの冷静な判断力だの魔術の応用力だの、そういうのは俺らが報告書や監視役から判断することだ。てめえが決めることじゃない。新人云々も言い訳にしかならなえ。なんせ、新人だろうとぱねぇ戦果を上げてる奴らは山ほどいるからな。例えば、最近大活躍してるミカエルの器、カイツとか最近入ってきたニーアとかさ。期限まで時間があるというが、俺からすれば、そんななカスどもを期限いっぱいまで見る理由がねえし、いちいち俺の時間を無駄にしたくねえんだよ。そんなことも分からねえのか。体しか取り柄の無さそうなボケ女! 締めてやろうか!」


 エフェメラルの怒りがヒートアップしてるかのように語気は強くなり、言葉も大きく響く。イドゥンたちはただ黙っていることしかできなかった。


「そもそもな。てめえがさっきから言ってるのは言い訳ばかりで聞いてられねえよ。頭空っぽの体だけの女がしゃしゃり出てくんな。てめえみたいなカスがいるからウェスト支部は簡単に」

「エフェメラル」


 カオスの発した一言。たった一言だけのそれは全員に死を錯覚させるような迫力と重みがあった。

 まるで体を抉られて死んだかのような感覚が襲いかかり、全員が思わず黙ってしまった。いびきをかきながら寝ていたアマテラスもぱちりと目を覚ます。メジーマとメリナもその圧に恐怖しており、リナーテに至っては泡を吹いて立ったまま気絶している。


「論点がずれ始めてるわ。それに、あなたの頭空っぽの体だけ女とかも客観的評価とは言えない。言えないわ。これ以上醜態を晒す前に黙りなさい。それとも、黙らせて欲しいのかしら?」

「……すまない。少し言い過ぎた」

「ふふ。謝れるなんて良い子。良い子ね。良い子は好きよ。では、今起きたアマテラス支部長。せっかくだし、貴方の意見も聞きたいわね」

「ちっ。バレてたんかいな。うちの意見とか必要なさそうやけど、このまま寝てたらあかんか?」

「駄目。駄目よ。支部長皆の意見を聞きたいの。そこから、彼らの処遇をどうすべきか決めるのだから」

「……はーめんどくさいわ。まあ意見述べるなら、うちの眠気を覚ませるような力を持ってない時点で魅力0やし、メリナはんとメジーマはんはともかく、リナーテはんはフォルテスに無視された女やろ? その時点でリナーテはんはマジモンの無価値やわ」


 その言葉に対し、メリナが恐る恐る手を上げて質問する。


「すいません。フォルテスに無視されたことが、なんで無価値という評価になるのでしょうか?」

「なんや。あんさん、その程度のことも知らんのかいな。フォルテスは自分に定めてるルールがあっての。信念や熱意、己の正義を内に持ってないと判断した相手には無視するってことや。あいつは信念ないようないい加減な人間は相手にせえへん。つまり、フォルテスに無視されたリナーテは、大した信念も正義も熱意も無い適当女いうことや。力無いだけならまだしも、心まで腐ってるような奴をスカウト出来る余裕は、今のうちらにあらへんねん。ヴァルキュリア家との戦いでの被害。あんたも知らんわけではあらへんやろ」


 その言葉にメリナは押し黙るしか無かった。リナーテが大した信念も熱意も正義も無いというこては彼女自身がよく理解していたし、ヴァルキュリア家との戦いで騎士団が負った被害も理解していた。

 王都での決戦において、サウス支部、イースト支部は王都に送り出した団員の殆どを失った。

 それだけでも多大なダメージであるが、2つの支部はその前からヴァルキュリア家の襲撃で団員を失っており、決戦で失った団員と合わせ、半分以上の団員を失った。当然、団員がそんなにも減った状態でまともに仕事が回せるわけもなく、サウス支部やイースト支部は任務も満足にこなせていない。

 ノース支部もかなりのダメージを負っており、任務は回せてこそいるが、それは団員たちが無理を課してして何とかやっていけているギリギリの状況である。


「そんな状況やってのに、あんたらみたいな役立たず入れる余裕はあらへん。期限まで見る価値も無し。これで話はおしまいや。おやすみー」


 彼女は言いたいことだけ言うと、またすぐにいびきをかきながら寝てしまった。


「全く。全く。アマテラスは相変わらず自由ね。では結論をまとめましょうか。エフェメラル支部長、ロキ支部長、アマテラス支部長は現在、メジーマ、リナーテ、メリナの3名は騎士団に必要ないと判断している。でもイドゥンは必要ありと判断している。多数決なら間違いなくイドゥン支部長は負けるわね。でも、この会議での最終決定権は私にある。私の出す結論は」


 メジーマとメリナは、死刑執行を言い渡される囚人のような気持ちを持ちながら、小声で話をする。


「メジーマ、これどう考えても」

「分かってますよ。出来れば、こんなことになってほしくは無かったのですが。どうも俺達には力が足りなさすぎたようです。自分の無力さが悔しいです」


 自分たちを養護してくれたのはイドゥン支部長だけであり、他の支部長たちは否定的。期限まで見る必要がないと判断もされてる。これではどう考えても未来は絶望的だ。ちなみに、リナーテは未だに泡吹いて気絶していて、話を全く聞いていない。そんな中、黙って聞いていたバルテリアもあることを考えていた。


(こりゃあ駄目かもしれないな。食料調達任務の話が出てない所を見ると、エフェメラル支部長たちにとっては、任務の態度や心意気とかを見る必要すらないと判断した雑魚たちってことだ。期限まで時間があるとはいえ、この感じだと前倒しでクビになる可能性が高い。もしメリナちゃんとリナーテちゃんがクビになったら、知り合いの仕事先を紹介するかね。メリリナカップリングは俺が守るべき正義(ジャスティス)にして聖域(サンクチュアリ)。失わせるわけにはいかないからな)


 そんな思惑が飛び交う中。カオスが出した結論は。


「メジーマ、リナーテ、メリナの3名は天使祭開催まで、ヴァルハラ騎士団センター本部に仮所属とします」


 その結論に全員が目を開いて驚く。先程まで寝ていたアマテラスもバッチリと目を開いて起き上がるほどに驚くほどの衝撃発言であり、エフェメラルが噛みつく。


「どういうことだカオス! そんな雑魚どもを本部所属にするってのはどういう要件なんだよ!」

「怒らない。怒らないでよ。ちゃんと理由はあるわ。まずメジーマ。彼のポテンシャルはそれなりにあると判断してるの。それを開花させずに追い出すのはあまりにも悲しい。悲しいわ」

「ポテンシャルだあ? どんな根拠があるってんだよ。まさか、てめえの妄想じゃねえだろうなあ?」

「彼はシェヘラザードのお気に入りだった。それだけで理由にならないかしら?」


 その言葉に、支部長と審判者が一斉に殺気立ち、重苦しい空気が会議室を支配する。メリナはそれに恐怖しながら、メジーマに質問する。


「なんだ……これ。おいメジーマ、シェヘラザードって誰だよ。お前とどんな関……」


 言葉は途中で止まってしまった。メジーマが目を開いて驚き、口をあんぐりさせて驚いているのを見てしまったからだ。


(なんだよ。穏やかなイドゥン支部長がこんなに殺気立ってるの見たこと無いし、シェヘラザードってどんだけヤバイ奴なんだよ)


 重苦しい空気が支配する中、最初に口を開いたのはカオスだった。


「皆、殺気を抑えなさい。メリナが可哀想だわ。こんなことになるなら、不用意に名前を出すべきでは無かったわね。でも、みんな彼女の実力や観察眼は知ってるでしょ。あの女は力のない人間をお気に入りにはしない。彼女がお気に入りにするほどのポテンシャル。それを開花させてから判断しても遅くはないと思うの」

「……あんま納得行かねえが、まあ良いだろ。あの妄想女。人を見る目だけは確かだからな。そいつのお気に入りなら多少の理由にはなる。だとしても本部所属にする理由はねえだろうが」

「センター本部なら多少の余裕はあるもの。余裕のある大人たちが若者を導く。大人としての当然の義務よ」

「ちっ。鬱陶しい考えだな。それには同感できねえが、今はどうでも良い。メリナとリナーテを本部所属にする理由はなんだ?」

「皆気づいてないみたいだけど、メリナはシェヘラザードと同じ旧世代よ」


 今度は会議室を支配していた重苦しい空気やイドゥンを除いた支部長たちの殺気が一斉にメリナに向けられる。視線だけで猛獣を殺せそうなほどの圧に流石のメリナも耐えられず、ぶくぶくと泡を吹いて気絶してしまった。


「メリナ、大丈夫ですか!」

「メリナちゃん!」


 メジーマとイドゥンが咄嗟に駆け寄り、彼女を介抱する。


「あらあら。あらあら。記憶を取り戻してない旧世代じゃ、支部長たちの殺気には耐えられなかったみたいね」

「ねえ。あいつが旧世代ってほんまのことかいな?」


 今度はアマテラスが質問する。その声音は先程とは明らかに変わっており、強い憎しみや怒りが込められているようだった。


「本当。本当のことよ。旧世代である彼女は記憶を取り戻せば、シェヘラザード級の実力を手に入れる可能性がある」

「やとしても、かなりの危険性があるやろ。憤怒の災害のような事がまた起きたら、今の騎士団じゃ」

「分かってる。分かってるわ。だからこそリナーテが必要なのよ。メリナと仲の良い彼女は鎖の代わりになる。メリナちゃんが記憶を取り戻しても、仲の良い友達を無下に出来るような性格にはならないことは、過去の報告書や記録から推察出来るしね」

「なるほど。リナーテはんをいれる理由はそれかいな。3人を本部所属にする理由は?」

「いざという時の事故に一番対応しやすいのはセンター本部しかないわ。それに、審判者の彼らなら、ちゃーんと3人を鍛えてくれるでしょうし」


 その言葉に、バルテリアとフォルテスが答える。


「おう! そういうことなら任せておきな。メリリナカップリングは俺の正義! 必ず、騎士団が必要とするレベルにまで鍛え上げて見せるぜ!」

「……任務というのなら、私情を挟まず実行するのみ。それが審判者たる俺の使命」

「ありがとう。ありがとう。感謝するわ。ロキ支部長もそれで問題無いかしら?」

「ああ。私としても、彼女たちを鍛えてくれるのは助かる。私ではそんな時間も余裕も取れないからね」

「エフェメラルはどうかしら?」

「……色々と不満はあるが、まあ大人しく従ってやるよ。ここではあんたがリーダーだしな」

「うちも否定せえへんよ〜。何にせよ、役立たずがうちの所に来ないだけで助かるしな」

「私も反対理由はありません。3人のこと、よろしくお願い致します」

「ふふふふ。思ったよりすんなり進んで助かったわ。では次の議題にしましょう。あと3ヶ月程で天使祭が始まる。食料や出店、料理人、祭壇の準備と色々あるけれど、今私達が解決すべき議題は」


 カオスが話した議題。それにメジーマは目を見開いて驚き、ロキは少しばかり睨みつけるような視線となった。


「ミカエルの器、カイツ・ケラウノスを殺すか、それとも番として生贄にするか、あるいはそれ以外の別の案にするか。どういう結論にするにせよ、今回の会議で結論とこれからの段取りを決めておきたいわ」 

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