表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
219/236

第217話 巨人族の世界 

 カイツたちが食料を採っていた頃。アリア、メジーマ、メリナの3人はとある池の前に立っていた。メジーマは懐から小さな黒い鍵を1本取り出す。


「では、開けますよ」


 彼がそう言って池の前に鍵を突き出して回すと、ガチャリという音が鳴ると同時に黒い扉が出現した。


「おー。初めて見たけど、これは凄いな」

「これがバルテリアの新しい発明品、ゲートキーですか。恐ろしい性能ですね。一体どうやってこんな物を作ったのやら」


 メリナとメジーマが感心したように扉と鍵を交互に見る。ゲートキーとはバルテリアが新しく発明した魔道具で、その効果は別世界への扉を開けるというもの。本来、別世界への扉その世界に住む種族で無ければ開けることが出来ないのだが、ゲートキーはその常識を覆し、誰でも別世界への扉を開けることが出来るのだ。メジーマが所持しているのは巨人族の世界、ヨトゥンヘイム専用のゲートキーである。


「便利なものですね。これがあれば、別世界の調査や支援、友好関係の構築に大いに役立ちそうです」

「感想は後にして、さっさと行くよ。こんな所で油を売ってられないし」


 アリアはゲートキーには一切の興味を持たず、扉を開けて中に入り、2人もそれについていく。扉の先は砂嵐巻き上がる荒野が広がっており、アリアたちの何倍もの大きさのレンガで組み立てられた家や何百メートルもの丸太で組み立てられた家があちこちにあった。


「で、でけええ。これがヨトゥンヘイムか。建物の高さもそうだけど、入口も凄いな」


 入口の大きさはメリナたちの何倍もの大きさがあり、まるで壁のように感じられた。


「噂では聞いたことありますが、想像以上の大きさですね。しかし、なぜこんなにも静かなのでしょうか」

「確かにそうだな。巨人族って荒くれ者が多いって聞いてたから、てっきり騒がしいものかと思ったけど」


 メリナが辺りを見渡しても、巨人は1人も見つけることができず、足音も聞こえず気配も感じられない。まるで、世界に自分たちだけ取り残されてしまったかのようだった。


「これはチャンスだね。今なら楽に仕事をこなせる。2人とも、急いで食料を狩って行くよ!」


 そう言うと、アリアは一目散に走り出し、そこから建物に飛び乗って屋根伝いに飛んでいった。


「えっ……待ちなさい。単独行動は危険です! 今すぐ戻ってきなさい! アリア!」

「ちょっ。待ってくれよおおお!」


 そう言ってメジーマたちが追いかけるも、アリアのスピードは嵐のように速く、とても追いつくことが出来ずにどんどん離されていく。数分も経つ頃には彼女の大きさは豆粒のようになっており、2人はかろうじて追いかけることしか出来なかった。


「くそっ。あまりにも速すぎますね。力だけの馬鹿はこれだから」

「だけど、一応私たちを気遣ってはいるみたいだぞ。豆粒くらいの大きさにしか見えないけど、それ以上距離が離れてないみたいだし、あいつなりに調節してくれてるんだろう」

「どうせなら、もう少し気遣ってくれるとありがたいのですがね」


 愚痴りながらアリアを追いかけてる最中、ゴーン、ゴーンと巨大な鐘の音が鳴り響き、2人は思わず立ち止まってしまった。


「なんだ。この鐘の音は」

「時間を告げる鐘ですかね。やけに重苦しい感じなのが気がかりですが」


 鐘が鳴り終わると、近くの地面が急に盛り上がり、爆発でもするかのように土が吹き飛んだ。


「どわっ!? なんだいきなり!」

「くっ! 一体何が起こっているのですか」


 土煙の中から現れたのは5メートルはある巨人だった。抉れた地面の形状や上半身だけ起き上がってる彼の姿から、先程まで土の中で寝ていたということが察せられる。服装は数十枚の巨大な葉っぱで作られた腰みのだけというかなり原始的な格好であり、背中には、石で出来た巨大な棍棒を背負っていた。


「ふわあ〜……よく寝たなあ。昨日は全然ポイント稼げなかったし、今日は頑張らないと~」


 彼が眠たそうに眼を擦っていると、メリナたちが建物の上に立ってるのに気づき、そちらの方を見る。


「おや。あんたらミズガルズに住んでる人間か〜? こんな所に来るたあ珍しいだなあ〜。人間なんて見るのな一年ぶりだやあ〜」

「あ、ああ。ちょっとした仕事でここに来ることになってな。お邪魔している」

「そ〜なのか〜。ちなみに、あんたらの名前はなんて言うんだ?」

「私はメリナ・エンピシーだ」

「俺はメジーマ・グレイスです」

「メリナとメジーマか。良い名前だなあ〜。おいらはガントルって言うんだ。これからよろしくな〜」

「え……ええ。よろしくお願いします」

「よし。じゃあ自己紹介も終わったところで!」


 突如、ガントルの纏う雰囲気が変わったかと思った瞬間、巨大な腕をメリナたちに振り下ろしてくる。


「なっ!? メリナ!」

「分かってる!」


 2人は咄嗟にその場から飛び降りて攻撃を回避し、飛び降りた。


「いきなり何をするんですか!」

「殺すんだよ。自己紹介も終わらせて名前も覚えたんだから、後は殺し合うしかねえだろ!」


 ガントルは背負っていた棍棒を取り出し、それを力の限りメジーマの方に振り下ろしてくる。


「訳の分からないことを。風よ。拳となってかの敵の攻撃を止めなさい!」


 彼の周りに風が吹きすさび、それが拳のような形になってガントルの攻撃を受け止める。


「おおっと。お前さん魔術師だったのか。だが、この程度の攻撃など!」


 しかし、巨大の棍棒は風を押し切り、そのままメジーマの元へと向かっていく。


「くそっ!」


 間一髪で攻撃を躱すも、攻撃で生じた風圧によりふっ飛ばされてしまった。


「そーらもういっちょ!」


 ガントルが吹き飛んだメジーマを蹴り飛ばそうとすると。


「させるかよ!」


 その背中を何十本ものナイフが突き刺した。


「ぐぎゃーーーー!?」

「メリナ! いくらなんでも、彼を傷つけるのは騎士団の人間として」

「そんなこと言える余裕ねえだろ。それに、言っても止まってくれそうにないからな。錬成(フォージング)!」


 彼女は水の入った瓶を空中に投げつける。中に入ってた水は瓶を突き破り、棘付き鉄球に変化していった。大きさはメリナの二回り以上であり、巨人の頭よりも巨大である。まともに喰らえばただでは済まないだろう。


「そっちが先に喧嘩売ったんだ。しばらく寝てるくらいはしてもらうぞ!」


 そのまま鉄球がガントル目掛けて放たれる。ガントルはまだ、背中に刺さったナイフの痛みに苦しんでいた。


「ぐぬぬぬ。巨人を舐めるなよ!」


 巨人はそう言って振り返り、鉄球に向かって頭突きをかます。その際、鉄球の棘が眼球に直撃した。


「マジか!?」

「馬鹿なことを。自分の頭が砕けてしまいますよ。しかも、思いっきり目に当たってますし、失明は確実ですね」

「ぐっふっふっふ。巨人の頭を舐めるな!」


 メジーマが呆れながら心配したのも束の間、棘付き鉄球は粉々に砕け散ってしまった。しかも、頭突きをしたガントルの頭には血が一滴も流れていない。目も無傷で無事なままだ。


「こいつも邪魔だな。ふんぬ!」


 巨人が背中に力を入れると、刺さっていたはずのナイフが吹き飛んでいった。背中にも血は流れておらず、刺さっていた痕が軽く残っているだけだ。


「う、嘘だろ。あの大きさの鉄球を頭突きで壊してノーダメージかよ」

「これは……流石に予想外ですね」


 2人は理解した。殺さないように手加減して勝つことは不可能であると。2人は一瞬だけ目を合わせ、メリナが何かを理解したかのように頷く。


「はっはっはっは! 魔術師が2人もいるとは都合が良い。お前たちを殺して、ポイント沢山ゲットするぜ!」


 それに気づかなかったガントルがその場で思いっきり地面を殴ると、地面に亀裂が走り、地震でも起きたかのような揺れが2人を襲う。


「のわっ!?」

「くっ……大地よ。揺れを鎮め、刃となりて巨人を貫きなさい!」


 メジーマの魔術によって揺れを無理矢理収め、巨人の足元の地面が盛り上がり、何本もの刃となって襲いかかる。


「そんなもの効かーん!」


 巨人はその刃を足で踏み壊した。刃に直接触れたにも関わらず、足には傷一つ付いていない。だが、これはメジーマにとって想定内である。


「風よ。竜巻となりて敵を包みなさい!」


 風が吹きすさんで巨人を包みこみ、竜巻となって飲み込む。普通ならば、風の刃と舞い上がる石などで体をズタズタに切り裂くはずだが。


「効かんと言っておろーが! 巨人はお前たち人間よりも、遥かに頑丈なのだ!」


 巨人は棍棒を振り回し、その衝撃波で竜巻を吹っ飛ばした。


「風で切ってくれたお返しだあああ!」


 巨人は建物の一部をもぎ取り、それを粉々に砕いてメジーマに向け投げつけた。


「風よ。盾となりて――ぐあっ!?」


 彼は魔術で防ごうとするも、投げられた物体が矢を遥かに超える速度で放たれており、詠唱する暇もなく、全身を貫かれていく。1つ1つの大きさは大したことないが、数があまりにも多く、かなりのダメージを負ってしまった。


「はあはあ……まさか……ここまでの実力とは」

「これこそが巨人族の力だ。さあ、そろそろポイントになってもら」


 巨人が攻撃しようとした瞬間、頭上から巨人よりも巨大な球体が落下し、その体を押し潰した。


「たく。こいつ1匹にここまで水を消費させられるとはな」


 メリナは愚痴をこぼしながら空になった瓶を捨てる。先ほどの球は、メリナが大量の水を消費することで作り出したものであり、メジーマは彼女の準備が整うまでの時間稼ぎをしていたのだ。


「この球。素材はグレナデンですか?」

「当たりだ。大砲でも傷1つ付けられない希少金属グレナデン。そいつを素材にして作った巨大な球。軽く見積もっても10t以上はあるだろうし、奴はもう起き上がれないだろうよ。にしても、せっかく食糧調達のために大量に持ってきたのに、もう4割くらいしか残ってねえよ。先行き不安だなあ」


 彼女は悔しそうに手に持ってる石を遊ばせる。彼女の持ってる石は収納魔石であり、バルテリアから貰った特注品である。彼女の魔術は水を媒介にするため、水がなければ魔術は殆ど使えなくなってしまう。その弱点克服のためにバルテリアが彼女用に用意してくれたのだが、先ほどの攻撃で大量に水を消費してしまったのだ。


「それにしても、事情があったとはいえ、随分と酷いことをしてしまいましたね。一般市民を殺すなど、騎士団の人間として恥ずかしい限りです」

「いやいや。それは仕方ないだろ。だっていきなり襲いかかってきたんだし、あっちは殺す気だったんだから」

「ですが、もっと俺たちの、俺の力があれば、もっと穏便に済ませられたのかもしれません。それこそ、カイツやアリアのような強さがあれば」

「たらればの話をしても仕方ないだろ。それよりも、今はこいつが襲いかかってきた理由を」


 話をしてる最中、グレナデンで作られた巨大な球が少し浮かび始めた。最初は気のせいかと思ったが、球は徐々に浮かび上がっていき、潰されたはずの巨人が球を持ち上げながら起き始めていたのだ。体中から血が流れてボロボロの姿になっている。


「おい……嘘だろ。10tを超えてるんだぞ。なのに」

「大地よ。刃となりて巨人を貫きなさい!」


 メジーマの詠唱で大地の一部が盛り上がり、刃の形となって攻撃するも、巨人の体は傷1つ付かなかった。


「くっ。やはり俺の魔術では」

「なら、もう1度でかいもんぶつけて」

「させるかあああ!」


 メリナが魔術を発動しようとするも、巨人は球を投げてそれを妨害した。2人はとっさにその場を回避して球の攻撃を回避することは出来たが、巨人が立ち上がる隙を許してしまった。


「いやー参った参った。まさかここまでのダメージを負うとはな。人間だからといって侮るべきじゃなかった。だが、もう油断はしない。ここでお前たちはおわ」


 巨人が激高して襲いかかろうとしたその瞬間、その首が吹っ飛んで胴体と別れ、建物にめり込んでしまった。


「!? なんですか。一体誰が」

「たく。こんな雑魚相手にいつまで時間使ってるんだか。ただでさえ乱闘パーティーであちこち大変なことになってるのに」


 先ほどまで巨人がいた場所に立ってるのはアリアであり、四肢に白い毛がびっしりと生えていた。


「アリア。どうしてここに来てくれたのですか」

「そっちがちんたらしてたからだよ。無視しても良かったんだけど、そうしたらカイツが悲しむしね。にしてもあんたら、もしかしてこの世界のルール知らないの? 途中まで殺さないようにしてたみたいだけど、この世界ではああいうの悪手だよ」

「どういうことですか。この世界にはどんなルールがあるというのですか」

「簡単に言うと……って、話をしてる余裕もないか」


 アリアが上空を見て、メジーマたちもそれにつられて上を見ると、先ほどのガントルよりも1回り大きな巨人が1体、上空から飛び下りてきた。巨人は強固な鎧を纏っており、巨大なメイスを身に着けている。


「いやっほーい! 魔術師の人間2人にフェンリル! こりは大量にポイントゲットできそうだぜ!」

「おいおいマジか。さっきの奴より強そうなんだけど」

「ひとまず、この世界のルールとかを話すにしても、まずは落ち着ける場所に行かないとね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ