第205話 最後の一撃 戦いの果てに
Side カイツ
「あははははは! やはり面白いですねカイツ。行きますよお!」
奴は紅黒い翼から何百本もの槍を撃ち出して攻撃し、それを躱しながら距離を詰めていく。生半可な攻撃じゃ奴は倒せない。倒すには神羅龍炎剣のような必殺級の一撃が必要だが、それを安々と撃たせてはくれないだろう。どうにかして隙を作らなければ。幸いにも奴の攻撃スピードは落ちている。そこを突けば何とか。
「剣舞・双龍剣!」
刀を2本に増やし、俺は果敢に攻め込んでいくが、それは全て受け止められてしまった。
「ふふふ。馬鹿みたいに攻めるだけでは勝てませんよ♪」
一瞬だけ地面が盛り上がったのを見逃さず、俺は後ろに退避した。その直後、紅黒い刃が先程いた場所から何本も生えてきた。翼を刃に変えて地面から攻撃したのか。ほんと、あいつの身体能力や翼は厄介だ。
「剣舞・五月雨龍炎弾!」
いくつもの紅い光弾を放って攻撃するも、それらは翼で防がれてしまった。
「どうしました? そんなヤワな攻撃は通用しませんよ〜♪ 神力解放」
空から轟音が鳴り響き、白い雷がほとばしる。だが雷が放たれる前に、俺は奴の背後に回り込む。
「それを喰らうわけにはいかないな。剣舞」
「甘い!」
攻撃しようとした瞬間、奴の体がハリネズミの如く無数の針を突き出してきた。予期していなかったが故に避けるのが間に合わず、肩と腹に鋭い針が突き刺さる。
「ぐっ!?」
「神力解放の発動時間が遅くなっていることは分かってるんです。私が何の対策も打たないと思いましたか?」
なるほど。さっきの神力解放はブラフだったわけか。だが。
「お前が備えをしてるのに、俺が何もしてないとでも思ったか!」
攻撃方法は予想外だったが、奴が何かをするのは予想していた。俺は針を通して自身の魔力を奴に流し込んでいく。
「これは」
本来なら、ただ相手に触れているだけでは魔力を流し込む事はできない。魔力を込めた攻撃を当てるなど工夫が必要だ。だが今だけなら、カーリーに触るだけで魔力を流し込むことが出来た。
今の俺はカーリーの肉を喰って熾天使の力を一部取り込んだ。その熾天使を通じて奴に魔力を流し込むことが可能なのだ。
「学習しませんねえ。対策は済んでると言ったはずですよ!」
奴は俺が流し込んだ魔力を傷口から放出した。その際、一瞬だけ動きが止まったのを俺は見逃さない。そもそもこの硬直を俺は狙っていたのだ。俺の魔力を吐き出すその瞬間だけ奴は硬直する。決めるならここしかない。
「今だ。剣舞・龍刃」
切り裂こうとしたが、地面から伸びてきた血の触手が俺の刀を捕まえ、攻撃は中断されてしまった。
「そう来ると思いました。神力解放 黒嵐撃!」
放たれた竜巻が俺の元へ高速で地面を抉りながら襲い掛かる。避けることもできずにまともに喰らってしまい、風の刃が俺の体をズタズタに引き裂きながら吹っ飛ばした。
「がはっ!? こんな所で!」
それでも負けることなく、俺は奴との距離を詰めようとするが、嫌な予感を感じてその場から退避した。その直後、何本もの槍や剣が俺のいた場所に現れた。追撃するように黒い翼が鞭のように襲い掛かるが、それを躱して距離を詰めていく。さらに刀の1本を逆手に持ち、。
「剣舞・龍爪乱舞!」
コマのように回転しながら距離を詰めて斬りかかる。横、縦、斜めと様々な方向からの攻撃は奴も苦しそうにさばいていた。ダメージは浅いが、少しずつ奴への切り傷が増え始めている。
「くっ。この程度!」
奴は魔力を衝撃波のように放つ。俺の回転はそれで止められてしまい、距離も開いてしまった。
「神力解放 赤炎龍!」
何頭もの炎の龍が地面から飛び出して襲い掛かってきた。避けることはできない。そう考えた俺は首に巻いてる白いマフラーから何本もの細い布を地面に突き刺して掘り進めていく。
「剣舞・龍烙波動 蒼!」
次に体にありったけの魔力を籠め、そこに水の力を混ぜた波動を放つ。それによって炎の龍は全て消し飛ばされたが、炎を隠れ蓑にしていた何百本もの雷の針が俺に襲い掛かってきた。
「くっ! 風よ!」
俺を中心にして放射状に突風を巻き起こして針を吹き飛ばした。安心したのも束の間、突如、地面から飛び出してきた針が俺の四肢に突き刺さった。ダメージ自体は大したことないが、四肢が痺れてしまい、自在に動かせなくなってしまった。
「これで!」
いつの間にか、奴と俺の距離が大きく縮んだ。奴は黒棒で突き刺そうとするが、俺はそれを刀で弾いた。
「馬鹿な!?」
「今だ。剣舞・四龍戦禍!」
2本の刀で4つの斬撃を高速で放ち、奴の体に十字架のような傷をつける。
「ぐうう。このお!」
奴は黒い翼を巨大な剣に変え、横薙ぎに振るう。その攻撃を躱して距離を離した。
「! な~るほど~♪ そうやって動いてたんですね~」
奴は俺を見て、面白そうに笑みを浮かべる。今の俺はマフラーから伸びた何本もの白い布が体を縛りあげ、操り糸で人形を動かすかのように自分を動かしていた。体を無理矢理動かしてるわけだから、痛みが半端じゃない。だが痺れはまだ消えてないし、しばらくはこうするしかない。
「やりますね。ならばこれで」
「させるかよ!」
地面を掘り進めさせてた布を奴の足下からだし、その体を雁字搦めに縛り上げる。
「ぐっ。これは」
「お前がやってたことを参考にしたんだ。剣舞・刺突鎖龍!」
何本もの布が奴の体や頭を串刺しにした。
「さらにプレゼントだ。剣舞・鎖龍爆破!」
マフラーを伝って俺の魔力を流し、大爆発を起こした。だがこれで終わらせてはいけない。
「剣舞・五月雨龍炎弾!」
「ぐっ……まだですよ。せっかくあなたを超えられるチャンス……逃すわけにはいかない!」
地面を抉るほどの巨大な魔力の衝撃波が飛び出し、龍炎弾は消し飛ばされてしまった。
「馬鹿な。まだあれだけの力を残してるのか」
「あはははは! 私は負けられないんですよ!」
奴が腕を突き出すと、体の内部を、何かでえぐられるような痛みが襲い掛かり、それと同時に炎の中にいるかのような熱さが襲い掛かった。
「ぐあっ……これは」
「ふふふふふ。私の体を伝っての魔力注入。あれのおかげでこんな面白いことが出来たんですよ~。どうです? 私の魔力が暴れてる気分は」
くそ。奴の魔力を取り込んだことが仇になってしまったか。だが。
「さあ。これでピリオドです。神力解放 青雷剣♪」
青い雷を纏った巨大な剣が、空から雨のように降り注ぐ。だがその速度は1度受けた時よりも遅くなっており、痺れと痛みで大変な体を無理矢理操り、躱して距離を詰めていき、2本の刀で斬りかかるが、それは受けとめられてしまった。
「私の干渉を受けながら躱せるとは。ぐっ!?」
突然、奴の力が弱まったので、黒棒を弾いて体を深く斬り裂いた。これは。
「まだまだ。これしきでやられませんよ!」
奴との距離が開き、翼から何本もの黒い槍が生成されて放たれるが、それらは簡単によけたり弾いたりすることが出来た。間違いない。奴はかなり弱ってきている。受けてきたダメージと神力解放の乱用で体力が殆ど残っていないんだ。これなら行ける。
「ふふふふ。私はまだ負けられない。あなたを超え、この世界で遊びつくすためにも!」
奴の魔力がさらに増大し、強大な衝撃波がこちらに飛んでくる。
「くそ。まだこれだけの力を」
「あははははは! あなたを超えられるチャンスが来てるんですよ♪ 私の長年の夢が叶う寸前まで来ているのです。がんばっちゃうのも仕方ないじゃないですか。神力解放 黒影剣!」
俺の足元にある影から黒い剣が何本も飛び出してきた。それを躱して空へと飛んだ。
「これ以上逃がしませんよ!」
奴が腕を突き出すと、俺の体から何本もの黒い鎖が現れ、奴の方まで飛んでいった。
「ぐああ!? これは」
奴の魔力で作った鎖か。まさかこんなことまでしてくるとは。
「ほら。地面にあるプレゼントを受け取ってくださいよ!」
奴は俺の体から飛び出した鎖を引っ張って下へと引きずりおろす。
「くそ。剣舞・五月雨龍炎弾!」
何発もの紅い光弾を放ち、地面にある黒い剣をすべて破壊した。その衝撃波のお陰で勢いを殺し、叩きつけられたダメージを減らすことが出来た。
「やりますねえ。しかし、これはどうです!」
奴は再び鎖を引っ張り、俺を自身の近くへと引き寄せた。
「このお!」
引き寄せられるのを利用して刀を振るうも、奴は鎖をうまく動かして俺を上空に持ち上げ、さらに地面に叩き落とした。
「がはっ!?」
「あはははははは! これは楽しいですねえ! そらそらそらそら!」
奴は何度も俺を振り回し、何度も地面に叩きつけていく。1回1回地面に叩きつけられるたびに骨が折れ、体の中の臓器が痛んでいく。まずい。意識が。このままじゃ。
「神力解放 白氷弾!」
奴の手から放たれた何十もの氷の弾丸が俺の体を貫いていく。避けようにも鎖を掴まれて動きをほぼ封じられており、避けることさえできなかった。
「あぐっ……まだ……俺は」
「死ね。神力解放 白雷天!」
空から放たれたいくつもの白い稲妻が俺の体を焼いていく。視界が歪む。全身が痛い。体が動かない。これじゃ、ただ嬲られるだけだ。
「あははははははは! 私の糧になれることを光栄に思いなさい!」
奴の高ぶった気持ちに呼応するように稲妻が激しさを増し、俺の体をさらに焼いていく。体の中の血液が蒸発するかと思えるほどの熱さと痛み。奴の高笑いが鬱陶しい。だけど、もう何もできない。操り糸のように動かすのも既に限界だ。ここが俺の終わりか。
カイツ。私はこの世界を変えたい。弱者を踏みにじり、ふざけた奴らがいないような世界を作りたい
その時に思い出したのはあの日のテルネの言葉。そしてあの凄惨な光景。そうだ。俺はこんな所で終わるわけにはいかない。終われない。あいつに報いるためにも。それに、マリネのためにも。彼女は俺にこの刀を託してくれたんだ。それなのに諦めてどうする。あいつの信頼を裏切るなんて、人として最悪の行為だ。絶対にしてはいけないんだ。
勝つんだ。這ってでも、泥水を啜ってでも、全てを使い果たしてでも勝つ。奴を殺して理想の世界を実現するんだ。それこそが俺の生きる意味だ。
勝ち筋を探すために奴を見ると、顔色が悪くなっていた。息も荒くなってるし、魔力も弱まってきている。奴ももう限界が近いんだ。あの状態なら行ける。あと一撃を入れれば倒せる。そのために必要なのは。
「ミカエル! もう1度あの力を」
『馬鹿言うな。今妾の力を使ったらお主は』
「今やらないと意味がないんだよ! 頼む! あいつを倒して、理想の世界を作るために。俺の体なんざ気にするな。今はあいつを倒すことだけを。早くやれ!」
『ああもう! お主、本当に後で覚えとけよ! どうなっても知らんからな。全く。せっかくの救助プランもパーになるし、お主はもう』
ミカエルが愚痴をこぼしながら、俺を奴の眼前へと転移させてくれた。力を使ったせいなのか、体中から血が少しばかり噴き出すが、今はそんなこと気にしてはいられない。
「なっ!? まだそんな力を」
「うおおおおおお!」
俺は2本の刀を重ね、巨大な光の剣を生み出して上に振り上げる。
「しかし、動きが直線的すぎますよ!」
奴は俺の刀を弾こうと黒棒を振るうが、それは空を切るだけで終わった。
「なに!?」
もし俺が第3開放のままだったなら、今ので刀を弾かれていただろう。だが俺は転移されるのと同時に六聖天の力を第2解放まであえて落とし、速度を遅くすることで奴の隙を突いたのだ。奴の攻撃は空を切り、完全に隙だらけ。
「六聖天・第3開放!」
再び六聖天の力を元の第3開放に戻し、その力を腕に集中させる。
「消えろおおおおお!」
そのまま全力で刀を振り下ろし、巨大な光の剣が地面もろとも奴を真っ二つに斬り裂いた。奴の後ろの地面は地割れが発生したかのようにパックリ割れており、それが遥か彼方まで続いている。
「あは……はは……すごいです。これが……四大天使の」
奴は最後まで言い切る前に意識を失い、仰向けになって倒れた。流石の奴といえど、体を真っ二つに斬り裂かれて生きているはずがない。これでようやく終わったんだ。俺の戦いは。
「たく。本当に疲れた」
体がもう限界だ。しかも刀の方を見ると、刀身がボロボロになっている。だいぶ無茶をさせてしまったらしい。マリネに見つかったら大変なことになりそうだし、見つかる前に直しておかないと。
「テルネ……ほんの少しではあるが……ようやく、お前に償いが出来た。」
俺は全身に巻いている布で操り人形のように体を動かし、王都へと歩を進めていく。東門の方も気になる。少し体を休めて武器を整えたら、そっちの様子も見ておかないと。
「まだ……終わらら……なない」
後ろから聞こえたわずかな声。そして感じる異質な魔力に俺は後ろを振り向いた。奴は真っ二つにされながらもその場に立ち上がっていたのだ。
断面は多少は繋がってるようだが、俺が斬った部分から血を大量に流しており、口を開けるたびに吐血していて、明らかに異常な状態だということが分かる。目は白目になってるし、意識がある状態なのかどうかも怪しい。というか口調も変になってないか。
「あひゃ……あひゃひゃひゃ……まだ……終わりませない。四大天使……超えるんです! そうすれば、アレの見べいた景色を。このおもびゃ箱の世界での遊びばた知べふ!」
大地を抉り、嵐のように感じるほどの強風が放たれる魔力と共に襲い掛かる。どういうことだ。いくら熾天使の力を持っているといっても、明らかに耐久力がおかしい。どういう仕組みだよ。これも奴の執念だとでもいうのか。
『あの女。完全に飲まれておる』
「どういうことだ。ミカエル」
『自分で取り込んだ熾天使を制御出来ず、その力に飲み込まれて暴走しておるのじゃ。あの様子じゃと、己の命尽きるまで、何もかも破壊するじゃろうな。』
あのクソ女。最後の最後まで面倒な事態を引き起こしやがって。刀も限界が来てるというのに。何があいつを突き動かすというんだ。四大天使の力を超えて、奴は何を望む。いや、今はそんなことどうでも良い。
「いい加減くたばれ! 六聖天 脚部集中。風よ!」
俺は六聖天の力を足に集中させ、同時に風の力を使って一気に接近して斬りかかる。しかし。
「!? なんだこの硬さは」
鉄とかそんなレベルじゃない。山を相手にしてるんじゃないかと思えるほど頑丈で、薄肌すら斬ることが出来なかった。
「そんびゃの。効かない!」
「ぐっ!? があああ!」
奴の巨大な魔力が砲弾のように襲いかかり、それをまともに喰らって大きくふっ飛ばされてしまった。
「くそ。まだあんな力が。本当に鬱陶しい」
「あひゃあひゃひゃひゃひゃ! こべで終わり。私が……勝者になるぶです!」
奴の前に巨大な黒い魔方陣が現れ、膨大な魔力が集まっていく。まずいな。もう体がまともに動かない。
「ミカエル。転移は」
『出来ぬよ。お主の体力も魔力も限界に近いし、無理にやれば体が弾け飛んで死ぬ』
となると、あの攻撃が発動する前に潰すのは無理か。避けることはできるかもしれないが、そうすれば後ろの王都に当たる。あれだけの魔力。もし王都に当たれば被害は甚大になるだろう。野戦病院にいるダレスたちが巻き込まれる可能性もある。刀が耐えられるか分からないが、ここで受け止めるしかない。
「神力解放 無滅砲!」
魔方陣に圧縮されていた魔力が解き放たれ、超巨大な白いビームが襲い掛かる。六聖天の力を集中させ、2本の刀には紅い光が纏われ、光は巨大な剣となる。
「剣舞・神羅龍炎剣!」
その巨大な剣でビームを真っ向から受け止める。吹き飛ばされそうな風と魔力の圧が襲い掛かるが、マフラーから出した布を地面に突き刺して足場を固定した。
「ぐっ……王都と仲間は……絶対に守る。うおおおおお!」
刀のヒビがどんどん大きくなっていき、破片が空に舞い散る。頼む。この攻撃を受けとめてくれ。仲間を、罪のない人々を守るために。これ以上の犠牲は嫌なんだよ。
「あひゃひゃひゃひゃひゃ! 消し飛べ。飛べ飛べ飛べべべ! 私の糧になって消べてしまべよ!」
「消えるか。こんな攻撃なんざ!」
必死に受け止めるも、奴の魔力はさらに増大していき、ついに俺の刀が粉々に砕け散ってしまった。
しまった。マリネの形見を。あいつに何と言って詫びれば。
そんな場違いなことを考えてる間に、俺の体は光に包まれた。
カーリーの放った最後の一撃。無滅砲。もし王都に直撃すれば、何百万もの人々が犠牲になり、地形は大きく変化していただろう。だが、カイツはその一撃を受け止め、被害を最小限に抑えた。彼が受け止めた場所には巨大なクレーターが出来ており、その中心に彼は左腕を失って倒れていた。斬られた足から生やしていた剣も無くなっており、血が流れている。
地面が炭のように真っ黒になっていて、灰が舞い散っている。刀は完全に砕け散り、破片があちこちに散らばっていた。そこにカーリーが近づき、死亡確認をするかのように観察する。
「あひゃ……あびゃびゃびゃびゃびゃ! 倒した。四大天使倒した! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
彼女は彼の死亡を確認し、高らかに笑う。
「こべで私は、あぼ女ば見てじた景色を見べる。世界を自由に出来るんだ! あびゃびゃびゃびゃびゃびゃ!」
喋る度に吐血し、体中の傷口からも血を流しながら狂ったように笑う彼女の足元を一筋の光が通る。
「あびゃ? なんぼ光?」
それはか細く小さな光。だがその光は何かを目指して突き進み、何かを見つけたかのように止まる。
「あべは」
光が辿り着いたのは刀の破片だった。光は更に別の刀の破片へと、また別の破片へと突き進んでいき、散らばっていた破片を光が繋いでいく。
「な、なびこれ!? こんば力、あたび知らないです!」
「なるほど……砕けた程度じゃ……死なないってことか。良い刀だな……体力、ごっそり持ってかれるのか……難点だけど」
彼女は驚いたかのように後ろを振り向き、恐ろしい何かを見たかのように怯え、後ろに下がる。
「カーリー……お前の目も節穴だな……俺も、この刀も、まだ生きてるぞ!」
彼はフラフラになりながらも立ち上がり、斬られた足の断面から再び紅い光剣を足代わりのように生やし、マフラーから出てきた何本もの布が腕の形を作り、義手のようになる。そして、背中の右半分から白い翼が、左半分から黒い翼がそれぞれ2枚ずつ生えてきた。
「いびゃびゃ……なんべ……生きめう。そゆな馬鹿なごど」
「お前に言われたくねえよ」
刀の鍔から伸びていた光は刀の破片のほとんどを捉え、鍔へと集まっていく。刀はある程度修復されたものの、それでもボロボロであちこちに小さな穴が開いており、今にも砕けてしまいそうだった。しかし、今の彼にはそれで十分だ。
「六聖天・第3解放。熾天使全開」
「あびゃ。りり加減に……死んべくらさいよ。神力」
「おせえよ!」
彼は彼女が技を出すよりも先に近づき、顎を蹴り飛ばして空中へと飛ばした。
「ごびゃ!?」
「これでとどめだ。魔力解放 剣舞・神羅龍炎槍!」
空高く飛び上がり、黒い炎と紅い炎を纏った刀がカーリーを貫いて空高く上がっていく。
「いぎ!? ぎべゃああああ!?」
「うおおおおおお!」
2つの炎は巨大な龍となり、灼熱を超えた炎が彼女を焼き尽くし、空を赤く染め上げていく。
「まば……死げばい……こんな所べえええ!」
「てめえのように世界を弄ぶクソ野郎は、この世から消えろおおおおおお!」
彼の怒りに呼応するように炎は更に勢いを増し、彼女の体を灰になってもそれを消し去るかのように焼き尽くしていく。
「いぎゃあああ!? まだ、まだ死ねない。四大天使……力ごおおおお!」
「あの世で、自分が殺した者たちに懺悔しておけ!」
炎の龍が消えると、彼女の半身は灰になって消し飛んでいた。意識は消えており、だれがどう見ても死んでいるようにしか見えない。しかし、彼は攻撃の手を緩めない。
「剣舞・双龍剣!」
刀を2本に増やし、2本それぞれに紅と黒の光を纏わせる。それは巨大な剣へと変化した。
「消えろ。剣舞・神羅龍炎剣!」
巨大な剣を残った半身へと振りかざす。何の抵抗も出来ず、半身は光に飲み込まれて完全に消え去った。彼女の肉体はもう、どこにも存在していない。
「これで……ようやく終わりだ……ミカエル、着地頼む」
『カイツ、大丈夫なのか? おい!』
「大丈夫だ……ちょっと……寝るだけだから」
『……分かった。ゆっくり休め。後は妾がなんとかする。あと、起きたら説教じゃからな』
「マジか。そりゃ……起きるのが……億劫になるなあ」
彼はそんな軽口を叩いた後、意識を闇に落とす。それと同時に六聖天の力も解除されてしまい、左腕と片足が欠損した状態に戻ってしまった。
これで、カイツの長年に渡るヴァルキュリア家との戦いは終結し、六神王はマリネを除いて全滅。当主たるカーリーは遺体すら残らずに死亡した。




