第203話 東門の死闘
東門での戦い
ウルは何十本もの矢を放ち、数百メートル先にいる魔獣たちを次々と撃ち殺していた。しかし、魔獣の数は8万以上。数十匹、数百匹倒した程度では止まる気配は微塵もなく、見た目上の変化はない。
「もう、本当に多いわね。矢のストック切れそうなんだけど」
そんな風に愚痴をこぼす中、巨大な人型兵器に変身したスーパーマンズは右腕を巨大な大砲へと変化させる。
「行くぞブルー。間違っても外さないでよ」
「大丈夫ですよスーパーレッドさん。あれだけ的がデカければ、外すことなんてありえませんから!」
右腕の大砲に変身したスーパーブルーがそう言って、大砲から巨大な砲弾を放つ。その砲弾は着弾すると同時に巨大な爆発とキノコ雲を生み出し、その衝撃波は東門にまで届くほどだった。
「きゃああああ!? なんて威力なのよ」
「ふふふ。これぞスーパーマンズの力ですよ。これならあの魔獣共も形無しです!」
「いや、状況はそう甘くないみたい」
「え?」
爆発の煙から現れた魔獣たちは全く減っている様子がなく、侵攻を続けていた。
「嘘……あれだけの攻撃を受けたんですよ。それなのに」
「数は減ってるのでしょうけど、それ以上に敵が多すぎるのよ。ブラック、イエロー。合体フォーメーションSKだ!」
「了解だべ!」
「……把握。けどレッド、フォーメーションSKは魔力の消費が大きい」
「わかってるさブラック。だが予想以上に敵の数が多い。魔力の消費がどうこう言える余裕はない!」
「……なら仕方ないか」
左腕を担当していたイエローは変形し、ブルーと同じような大砲になる。両足を担当していたブラックも両足を大砲に変形させた。腕以外の上半身を担当していたレッドも、胸元から巨大な大砲を生やした。
「行くぞ。FIRE!」
4門の大砲から砲弾を何発も連続で撃ち込んでいく。威力は先程よりも小さかったが、連射性に優れており、多くの魔獣を葬っていった。
「ウル、あいつらがここに来るまでの時間は?」
「あと15分で到着するわ。そうなったら私たちは全滅確定。嫌になるわね。本当に!」
雷を纏った何十発もの矢を放ち、魔物たちを射抜いていく。
「死になさい。サンダートランス!」
彼女が指を鳴らすと、雷撃は周りにいる魔獣たちに伝り、その体を焼き尽くしていく。数分もしないうちに、何十体もの魔獣たちの体が炭のようになった。それでも侵攻は止まらない。魔獣たちは何の恐怖も抱くことなく進んでいた。
「本当に疲れるわね。このままじゃ」
「騎士団の皆様ー!」
王国の兵士たちがたくさんの箱を抱えながらウルの元へとやってきた。
「あなたたち。一体何を」
「これをお渡しに」
そう言って兵士たちが箱を差し出す。中に入っていたのは大量の矢だった。
「これは」
「俺たちはこの国の兵士なんです。騎士団にばかり任せていられません。一緒に戦います!」
「ありがとう。でもその気持ちと物資だけで十分よ。ここにいたら危ないし、避難してなさい」
「でも、あれだけの数を相手に、あなた方だけでは!」
「大丈夫。こっちにはすっごく強い狼もいるし、なんとかなるわよ。ほら、あいつが縦横無尽に暴れまわってるわ」
「うおおおおおおお!」
何万もの魔獣が跋扈する中、白き狼の刃よりも鋭き爪が魔獣たちの肉体を引き裂きながら爆走していた。それはまるで嵐の如く。魔獣たちは白き狼、フェンリル族のアリアの姿を見た時には既に死んでいた。圧倒的な攻撃力と速度。それらになす術なく蹂躙されていたのだ。
「カイツが必死に頑張ってるんだ。こんな所でくたばるわけにはいかないんだよ!」
身体能力に物言わせた特攻。それこそが今の彼女の最適解な攻撃だった。
ちなみに、遠くで攻撃しているウルやスーパーマンズは彼女のことなど全く考慮せずに攻撃している。そうする理由は、そもそも考慮する必要が無いからだ。彼女は味方のフレンドリーファイアにやられるほど馬鹿ではなく、その身体能力故に、ウルたちの攻撃を避けることなど造作もなかった。
「獣王剣・龍!」
腕に魔力を込めて1回転すると、巨大な竜巻が現れ、周囲にいる魔獣たちを吸い込み、バラバラに切り裂いて殺していく。
「獣王剣・鴉!」
次に腕を振ると、斬撃が鳥のような形になって襲い掛かる。鳥たちは何十体もの魔獣たちを貫いて殺していく。それを連続で繰り返し、何百もの斬撃が鳥のように空を飛んで蹂躙していった。
しかし、それだけの攻撃をしても魔獣たちの数は減っている様子が無かった。
「あっちと合わせたら、1000体近くは殺ってるはずだけど、全然減ってる感じがー!?」
彼女が愚痴を吐きながら攻撃していると、嫌な予感を感じてその場から退避して大きく後ろに下がる。その直後、そこにいた魔獣たちを巻き込んで何十発もの炎の砲弾が降り注いだ。
「くそ。まさかあそこから飛ばしてくるとは」
彼女が見上げるのは遥か上空。雲によって隠れた魔獣が何十体もいた。それらは巨大な大砲のような形をしており、砲の縁に目が2つ付いていた。彼らはレベル4。ケルーナの魔術、悪魔工場によって作られた新たなる魔獣である。遥か上空から敵を攻撃できるのが利点だが、難点もある。1つ目は狙撃のように狙い撃ちできず、仲間を巻き込むことがあること。2つ目は高い破壊力と引き換えに、長いチャージ時間を必要とすることである。しかし、それを補えるほどの威力、そして超高所であるが故に敵に攻撃されにくいという優位性を持っていた。
仲間を巻き込むというデメリットも、何万もの仲間がいるのならば、さして気にするほどのものでもない。
そして長いチャージ時間も問題は無かった。砲弾を撃ち終えた大砲の魔獣たちが横にどけ、後ろに並んでいた同じ魔獣が前に出る。大砲の魔獣たちは列を作るように何十体も並んでおり、全てがチャージを終えている。魔獣たちは再び砲弾の雨を降らした。
「くそっ! めんどいことしてくれるね!」
アリアは愚痴を吐きながら砲弾の雨を避けつつ魔獣たちを殺していった。避けること自体はそこまで問題ないが、砲弾の雨によって行動をかなり制限される。それに加えて魔獣たちは、空から来る砲弾の雨など気にもせずに襲いかかってくるため、鬱陶しいことこの上なかった。
「あそこまで離れてると私の攻撃も当たらないし。どうしたものかな」
彼女が策を考えながら逃げる最中、何十体もの魔物が四方八方から一斉に突撃してきた。
「獣王剣・鴉!」
鳥のような形の斬撃を飛ばしていき、周囲の魔獣たちを殺してその場から離脱する。その直後、何十発もの炎の砲弾が、近くにいた魔獣たちも巻き込んでその場に降り注いだ。
「くそっ。物量に物言わせてめんどくさい!」
必死にその場を動き回って砲弾の雨から逃げようとするも、何百体もの魔獣たちが彼女の行く道をふさぐように周囲を包囲しており、そのせいでさらに動きを制限されていた。
「邪魔なんだよ。獣王剣・華!」
彼女が腕を横に一振りすると、無数の斬撃が魔獣たちをバラバラに切り裂いて道が開けた。
「これである程度は動ける。後は」
移動しようとした直後、吹き飛ばされた魔獣たちが白い煙を噴き出し、周囲の視界を封じる。
「ああもう。さっきから鬱陶しい。ぐるあああああああ!」
彼女は大地を深く抉るような咆哮を放ち、集まってきた魔獣たちを吹き飛ばした。その直後、炎の砲弾がすぐそばまで接近してきていた。
「ちっ。けどこの程度の速度なら」
彼女はその場から退避し、砲弾の範囲外へと逃れた。
「上の奴らは倒せない。なら、こいつらを生み出してる本体を叩くしかないか」
そう考えて移動しようとするも、足がうまく動かずに移動できなかった。足元を見ると、周囲の地面が沼のように変化していた。さらに、そこから飛び出したはにわのような形をした魔獣が彼女の足を掴んで動きを封じていた。
その魔獣はレベル2T。罠を作り、敵の動きを封じることに特化したケルーナの新たな下僕。一部の地面を沼に変えて生物の動きを封じることが出来るが、その範囲は人間1人がギリギリ収まる程度の大きさであり、魔獣も沼の状態を維持するため、そこから動けないという弱点がある。だが、この状況ならレベル2Tは有効に機能していた。砲弾の雨と物量差を生かした魔獣たちの侵攻により動きを予測することはそこまで難しくなかったため、この罠を活かすことが出来たのだ。また、その沼は1度嵌まると、驚異的な身体能力を持つアリアでさえ、抜けるのが困難になるほどのものだった。
「まずい……このままじゃ」
脱出しようと魔獣の腕を切り裂いた直後、無数の砲弾の雨が襲い掛かる。致命傷こそ避けたりガードしたりは出来たが、その雨の中から抜け出すことは出来ず、彼女は炎の雨の中に包まれてしまった。
「いやー、流石は古代の神獣。攻撃当てるまでにめちゃくちゃ苦労したわ」
東門から遠く離れた場所。そこにいたケルーナは青い林檎を食べながら遠くの戦いを見ていた。ウリエルも近くで観察しており、笑みを浮かべていた。ストリゴイは興味がないのか、昼寝をしていた。
「しかし、殺す気でやれって言われたからやったけど、あれで良かったんか? あれじゃアリアはんも」
「心配するな。覚醒したフェンリルはあの程度で死にはしない。奴はかなりの強さを持っている。殺す気で行くのがちょうど良いくらいだ」
「そうかいな。まあウリエルはんが良いならわっちは構わんけど。しかし、騎士団もやるのお。かなり疲弊してるはずやのに、うちのペットがめちゃくちゃ減らされとるし」
「大したものだ。流石はガブリエルの契約者が用意しただけのことはある。だが、もうこれで終わりだ。神獣もそろそろ終わる頃だろうし、東門にいる騎士団も魔力は心もとないはず。俺の勝利は揺るがない。北門の方も、そろそろ戦いは終わるみたいだしな」




