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第198話 絶望の闇 闇を引き裂く光

 side ニーア


「破壊を破壊して破壊しろ。破滅を破滅して破滅しろ。滅亡を滅亡して滅亡しろ。我は闇を消しさり、楽園をもたらす天使なり!」


 私の腕にヒビのような模様が入り、両目が赤く輝く。背中からは3対6枚の黒い翼が生えた。放出する魔力のせいで、地面にヒビが入る。


「ひょえー。カーリーから聞いてたが、予想以上に化け物だな。しかも最初からフルスペック。こりゃあ、私も全力でいかないとな!」


 そばかす女、デウス・キメラは空気の槍を何本も生み出して私に攻撃してくるので、それらを避けつつ、レーザー攻撃を仕掛ける。


「無駄だよ」


 しかし、その攻撃は空気の壁と紅い翼の二重バリアで防がれてしまう。熾天使(セラフィム)の力を開放した今、威力は2倍近く上がってるはずだが、これを防がれるとはな。


「ならばこれはどうだ?」


 私は奴の周囲に緑の魔法陣を展開する。


「崩衝連弾!」


 魔法陣から緑色のレーザーが放たれる。だが。


「無駄だって言ってんだろ!」


 奴はレーザーが密閉状態を作る前に、わずかな隙間から脱出した。


「ふふふ。そんな技は私に通じないのさ。どうだ? 自慢の技を避けられてしょんぼりしちまったか? 私は避けれてハッピーだぜい。こんなにもハッピーな気分になったのは初めて自分の意志でメシを食えた時だよ。そういえば飯といえば」

「ベラベラとうるさい」


 うるさく話している間に指を鳴らすと、そばかす女の足下に緑色の魔法陣が現れる。


「ちょっと。まだ話は終わって」

「崩衝滅魔!」


 魔法陣から出た巨大な光の柱が奴を飲み込んだ。光が消えると、奴の体は多少は焦げていたが、お世辞にも致命傷とは言えないしょぼいレベルだった。恐らく、咄嗟に空気の壁などを作って防御したのだろう。


「やってくれるねえ。久しぶりにビリビリ来た。今度はこっちから行かせてもらうぞ!」


 奴は背中から4枚の紅い翼を生やし、その内の2枚を鞭で叩きつけるかのように攻撃してくる。それを躱しながらレーザー攻撃を放つ。そのレーザーは複雑な軌道を描きながら後ろを狙って攻撃するも、残りの2枚の翼と空気の壁がその攻撃を防ぐ。


「どうした。お前の実力はこんなもんかよ!」


 奴は紫の波動を周囲の建物に放つ。すると、その建物たちは次々と空に浮かび上がっていく。近くで戦ってるウルとハデスもその光景に唖然としていた。


「嘘でしょ……こんなのあり?」

「おいデウス・キメラ! こんな攻撃したら我まで」

「安心しろよ。てめえが死んでもまた別のてめえを作り直せるんだからな!」


 奴はその建物を私に向けて攻撃してきた。私は自分の前に巨大な緑の魔法陣を複数展開し、それを重ね合わせる。


「消えろ。崩衝光波(ほうしょうこうは)!」


 魔法陣から巨大な緑のレーザーが放たれる。そのレーザーは建物全てを飲み込み、灰も残さずに消し飛ばした。


「おおお。すっげえな! まさかこいつを消し飛ばされるとは思わなかったぜ。キャッキャッキャ」


 厄介だな。恐らく、奴の魔術結界の能力は死者蘇生と蘇生した者の増殖、そして死者の魔術を行使出来るものだ。


「どうしたサキュバス女。貴様の力はその程度か。そんな雑魚は楽園に行く資格はないぞ!」

「頼まれたって行きたくないわよ。あなたが作る楽園なんてね!」


 ウルの方を見ると、彼女はハデスにかなり苦戦していた。奴は無数の瓦礫を飛ばして攻撃してきており、彼女はそれを躱すだけで精一杯のようだ。矢を放っても紫の波動で止められ、有効打を与えられていない。


「ああもう。本当に厄介な能力ね」

「ふん。いくら矢を放とうと、我に届くことはないぞ。貴様は絶対に勝てぬのだよ!」


 あのままだと彼女が負けるのはほぼ確実。兄様の事も心配だし、これ以上こいつに時間をかけるわけにはいかない。速攻で決着をつける。


「魔術結界 崩滅(ほうめつ)せし」

「おっと。そうはさせるかよ!」


 印を結ぼうとすると、何かに詰められたかのように、体を固定されてしまった。これは、ヴァーユが使った空気の固定。しかも固定された空気の表面には紫色の膜があった。

 ヴァーユの空気を操る力とハデスの物質を操る力でより強固に拘束してるというわけか。翼の動きも封じられた。このままでは。


「そら。隙だらけだぞ!」


 奴は私が硬直した隙を狙い、いつの間にか至近距離に近づいてきた。


「くっ」

「プレゼントだ。ありがたく受け取りな!」


 奴は掌底を繰り出してきた。だが攻撃が当たる寸前で、なんとか拘束を力づくで破壊する。


「マジか。あれを力技で!?」


 そのまま右腕で防御し、同時にカウンターで奴の腹を蹴り飛ばす。


「ぐおっ!?」


 この一撃は応えたのか、奴は大きく吹っ飛んでいったが、すぐに体勢を立て直して着地した。黒い翼で追撃を仕掛けるも、奴の翼で弾かれてしまった。


「ちっ」

「やるねえ。流石はイシス。だが、こいつはどうかな?」


 奴が指を鳴らした瞬間、私の右腕の皮膚や肉を突き破り、植物が生えてきたのだ。それは獣のような牙と口を持っており、今にも私を食おうとしていた。

 根は右腕の中に深く絡みついており、そこから魔力を吸い取っている。引き剥がすことは不可能だろう。


「くそ」


 私は左手に魔術で作り出したフランベルジュのような剣を生み出し、右腕を食人植物ごと切り離す。そしてレーザー攻撃で腕ごと消滅させた。


「良い判断力だな。右腕をそんな素早くぶった斬れる奴はそういねえぞ。すんげーすんげー!」

「今のはプロメテウスの力か」

「ああ。植物の種を作る魔術であり、その種は魔力で成長する。色々使い道があって便利なんだよなあ。さっきのように相手の肉体に埋め込んだり、地面から生やしたりとかな」


 先程の攻撃で埋め込んだのだろう。至近距離の戦いは避けた方が良さそうだ。しかし、このままだとまずいな。腕が片方無いせいで印を結べないから、魔術結界を使えない。腕を生やすことは可能だが時間はかかるし、奴はそんな隙を許さないだろう。どうしたものか。


「私の魔術結界の能力はさあ。この魔術結界の範囲内で死んだ連中を蘇らせ、増殖させ、手駒にできる。それだけでなく、手駒にした奴の魔術も使用可能というもんげーおまけつきだ。こんな風にな!」


 奴が腕を突き出すと、私の体が再び固定された。固定された空気の表面には先程と同じように紫の膜がある。


「同じことを何度も!」


 だが、1度破った技ならば即座に破るのはそう難しくなかった。しかし、それでも一瞬の隙は生まれてしまう。


「そこだ」


 奴が指を鳴らすと、私の周囲を植物の蔓がドーム状に取り囲む。


「どっかーん!」


 彼女がそう言った瞬間、植物が大爆発を起こす。咄嗟に緑のバリアを周囲に張り、黒い翼で身を包むも、それを貫通して爆炎が体を焼いていく。爆発そのものの威力も高く、爆発跡はスプーンでくり抜かれたかのように、地面が大きく抉れていた。


「ぐう……このそばかす女」

「ははははは! すごいだろ。カーリーが殺した騎士団員の爆弾魔術と、プロメテウスの植物魔術を組み合わせた傑作さ。さらに追撃!」


 何かに突き飛ばされたかのように私の体が吹っ飛ぶ。空気の壁で攻撃してきたのか。


「があっ!」


 その威力は凄まじく、建物をいくつも貫通して風穴を開け、体をしこたま打ち付けられながら地面を転がっていった。痛む体に鞭を打って立ち上がると、奴は私の眼前にまで迫って来た。


「そーらよ!」


 奴が掌底を繰り出そうとした瞬間、その腕を蹴り飛ばした。


「ちっ。このお!」

「させるか!」


 奴が翼で攻撃するよりも早く、足に魔力をこめ、奴を蹴り飛ばした。奴は大きく吹っ飛んでいき、ボールのように地面を跳ねながら転がっていく。


「ちくしょう。ほんとにつええなあ。流石はカーリーに認められた存在。ならば」


 奴が指を鳴らすと、黒い玉がポツポツと奴の周囲に現れた。


「こいつは死んだヴァルハラ騎士団の人間が持ってた魔術、ダークスフィア。これが7回当たった生物や物質は確実に崩壊するスーパー魔術さ!」


 奴が黒い玉を四方八方から放ってくる。それと同時にまたもや空気とハデスの魔術で身体を拘束される。


「崩衝波動!」


 私の周囲から消滅の力を纏った衝撃波が飛び出し、黒玉とを消し飛ばし、同時に拘束していた空気を破壊する。


「ちっ。やっぱりこの程度の魔術は効かねえか。ちっとは使えると思ったんだがな」


 こいつ。六神王よりも遥かに強い。カーリーがこの場面で投入してきたから、それなりの実力とは思ってたが、これは予想以上だな。だが、付け入る隙はある。


「さっきから思ったが、自分の能力をベラベラと話すのが好きなようだな。カーリーからその口を閉じて戦うよう教わらなかったのか?」

「仕方ないだろ。私がこうして話せるのは、魔術結界を発動してる間だけだけだぜ。魔術結界の発動可能時間はわずか15分。それが終わったら、また廃人みたいな生活を送ることになる。どんなことだろうと話したくてしょうがないんだよ!」


 聞いてもいない弱点をわざわざ教えてくれるとはな。最も、15分も長引かせるつもりなど無いが。


「それにさ。魔術結界は15分続くけど、お前らはあと3分くらいしか生きられないからな」


 奴の言葉に疑問を持った瞬間、私は口から血を吐き、重りを乗せられたかのように体が重くなっていった。


「これは」

「私の魔術結界は生者を死者に。死者を生者に変える。あと3分。3分過ぎれば、この結界内にいる奴らは全員死亡する。ミカエルの器だろうとミカエル本体だろうと関係なくな。ちなみに〜、死に近づいてくそのダメージは、私を殺したりして結界を解除すれば、嘘のように治っちまうぜ」


 本当にお喋りなやつだ。魔術の能力をここまで丁寧に話してくれる敵は見たことがない。


「解説ご苦労。そうと分かれば、一刻も早く貴様を倒すだけだ」


 私が指を鳴らすと、奴の腹に緑色の斑点のようなものがいくつも浮かび上がる。先程蹴った時に付けた印だ。


「この感じ。まさか」

崩衝爆雷(ほうしょうばくらい)


 その言葉とともに斑点が爆発し、奴は腹に軽いダメージを負った。


「ぐあっ!? やるねえ。だがこの程度の攻撃などーー!?」


 もちろん、この程度で倒せるなど思っていない。私が作りたかったのはこの隙が出来る時間だ。

 奴が怯んだ瞬間に、右手に巨大な消滅の槍を作り出す。その大きさは私よりも三回りほど大きなものであり、存在するだけで大気を揺らした。


「崩衝魔槍!」


 それを奴に向けて放つ。その速度は一瞬で奴の眼前にまで迫るほどの驚異的なスピードだった。


「くっ……避けるのは無理か。なら!」


 奴は咄嗟に4枚の紅い翼で防御する。しかし、私の槍はその程度で防ぐことは出来ない。


「馬鹿な。私の翼をこんな簡単に」


 槍は翼を削りながら進んでいく。これで奴にダメージを与えられるかと思ったが。


「うぐっ。うおおおおお!」


 奴は翼を上手く使い、槍の攻撃を横へ逸らした。それでも完全に避けることは出来ず、腕の肉を一部持ってかれていた。


「まだだ。崩衝大時雨!」


 上空に緑色の巨大な魔法陣が出現し、そこから緑色のレーザーが雨のように降り注いでいく。奴は翼と空気の壁、植物の蔦を使って防いでいくが、壁や蔦は次々に消滅していった。


「ちくしょう。やってくれるじゃねえか。イシスううう!」


 その言葉を残し、奴はレーザーの雨の中に消えた。それでも攻撃の手を緩めることはせず、出来る限りレーザーを降らせていった。しばらくして攻撃を止め、舞い上がった土煙が晴れると。


「ぐっ……ふふふふ。流石に死を覚悟したぜ」


 奴は腕を消し飛ばされ、体のあちこちを抉られていたが、それでもまだ生きていたのだ。


「ちっ……流石は熾天使(セラフィム)の適合者というべきか。ゴキブリのようなしぶとさだな」

「いやー、参った参った。あれだけの攻撃を仕掛けるとは思わなかったよ。こいつはお返しだ!」


 奴が腕を突き出すと、私の周囲を植物の蔦が囲む。


「また爆発か? 芸のない女だ。それに」


 周囲にいくつもの緑の魔方陣が出現する。


「対策は済んでいる。崩衝滅魔」


 魔方陣から巨大な光の柱が飛び出し、植物の蔦を消し飛ばした。攻撃が終わると、魔術を発動した場所に何体もの黒い偽熾天使(フラウド・セラフィム)がいた。

 肉体の一部が焼け焦げてる程度で済んでるのを見るに、蔦と何らかの防御魔術で防いだのだろう。


「GUGAAAAAAAA!」


 天使共が鬱陶しく叫び、私を睨みつけていた。奴らの特性は厄介だが、その程度で私を止められはしない。


「こんな雑魚どもなど!」


 消し飛ばすためのレーザー攻撃を放つ。攻撃が当たるかと思われたその時、奴らは突然、紫色のエネルギーの塊に変わり、私の攻撃を弾いたのだ。


「なに!?」

「雑魚も魔術も使いようなんだよ」


 更に、いくつものエネルギーの塊から光の槍が放たれる。黒い翼で防御するも易々と貫かれ、私の四肢と腹を貫き、背中の翼を斬り落とした。


「がっ!?」

「とどめだ。あの世で六神王共によろしくな!」


 足元の地面がほんの少しだけ膨らんだ瞬間、私は痛む体に鞭打って大きく後ろに飛んだ。その直後、何十本もの茨が地面から突き出した。


「ちっ。串刺しで殺してやろうと思ったのに。だが、もう体は限界のはずだ」


 体が更に重くなっている。目眩も酷いし、頭もぼーっとしてきた。意識も朦朧として、今にも倒れそうだ。だが、ここで倒れるわけにはいかない。とにかく気をしっかり保たねば。


「あと2分〜、2分でお前ら死んじまう〜。悲しいもんだよ。そうだ! せっかくだから冥土の土産として、さっきの技について教えといてやる」

「悪いが……貴様の無駄話に付き合う気はない!」


 翼を再生させて、そこから何発ものレーザー攻撃を放つが、それらは奴の前に現れた巨大な植物の蔦と空気の壁で防がれてしまった。


「まあ聞けよ。私の魔術は蘇らせた死人をエネルギーの塊にすることもできるのさ。このエネルギーは武器にも爆弾にもなれる万能パワー。しかも威力は莫大。便利な技だけど弱点があってな。エネルギーになる前の死者の体が欠損したら駄目なんだよ。欠損した奴だと上手くエネルギーにできず、塵に返っちまうんだ。それだけでなく、死人に流した魔力が逆流したりして私の体もやられるっていう酷いリスクもある」

「ほんと、自分のことを懇切丁寧に教えてくれるのだな。おしゃべりが好きだからか、それほど余裕があるからなのか」

「どっちもさ。おしゃべりは好きだし、勝つのは私だって決まってるからな。お前程度の実力じゃ、あと2分で私を殺すことなんて、どう考えても不可能。もう諦めて私とおしゃべりしようぜ。カーリー様の切り札であるこの私に勝つことは、マグマを食べることくらい不可能なんだよ」

「悪いが、その提案は拒否する。貴様のような鬱陶しい女とおしゃべりに興じるなど反吐が出る」

「そうかい。そいつは悲しいねえ。じゃあ仕方ない。無惨に不様に死んでもらおうか! 焼け野原に横たわる死体のようにな!」


 奴が攻撃しようとした瞬間、突然その動きを止めた。


「なんだ……これ。一体どうなっているんだ」


 明らかに困惑しており、何が何やら分かってないような様子だ。だが私には理解出来た。奴が困惑している理由を。


「なんで、なんで六神王共がどんどん消滅してるんだよ。しかも、死体どころか魂も残らないだと。つかめちゃくちゃな速度で消えすぎだろ。一体誰がこんなでたらめな攻撃をしてるんだ!」


 ようやく動いたようだな。あのバカ狼。


「愚かな奴だな。貴様らに切り札があって、私に切り札が無いとでも思ったか?」

「まさか……これはお前の仕業なのか!? 一体何をしやがった。なんでこんなエグいスピードで六神王が消えてるんだよ!」

「私は何もしていないさ。いざという時に用意した切り札が、自主的に働いてくれてるんだよ。色々解説してくれた礼に教えといてやる。あの嫉妬深いヤンデレ狼は、六神王ごときには止められないぞ」







 ニーアが戦っていた頃。別の場所でも状況が大きく動いていた。


 王都のとある場所。そこには何百人もの兵士やヴァルハラ騎士団団員の死体が無惨に転がっていた。そして、山のように積み上げられた死体の上にジキルが座っている。


「たく。ウォーミングアップにもなりゃしねえ。こんなんじゃ、こんなんじゃハイドを失った怒りは癒えねえぞ!」

「はーっはっはっは! 元気盛んだなジキル」


 彼は高らかに笑うヴァーユを睨みつけるも、高笑いは止まらなかった。


「ヴァーユ。あいかわらず笑い声がうるさいな」

「笑う門には福来るっていうからな。だから俺は笑うのさ。はーはっはっはっはっは!」

「ただ笑ってるだけで福が来るかどうかは疑問ですがね」


 そう言ってプロメテウスが2人の元にやってくる。


「おおプロメテウス。そっちの方は終わったのか? 兵士が200人くらいいたはずなのに」

「雑魚がどれだけいようと、大した脅威にはなりませんよ。それより、さっさと避難所やら王城やら潰しますよ。そうすれば、騎士団や兵士たちの士気も少しは落とせるでしょう」

「そんなのどうでもいいだろ。俺は今すぐカイツをぶっ殺しに行きたいんだよ! あいつを殺して敵を討たねえと、ハイドが報われねえ!」

「安心しなよ。ハイドは死んでないから、あんたが敵を討つ必要はない。まあ、討たせるつもりなんか毛頭ないけど」


 突如聞こえた新たな声に、六神王たちは冷や汗をかきながら声のした方を見る。そこにいたのは1人の少女。銀色のノースリーブシャツに黒の短パン。

 目つきは鋭く、左目に青い炎が宿っていた。四肢を纏う白い毛、鋭い牙と爪、尻尾も生えたその姿は狼を彷彿させる。


「は、ははははは! なんだこの圧倒的な気配は。めちゃくちゃ笑えるじゃねえか!」

「貴様は。あの時の獣野郎」


 ヴァーユはあまりの存在感に高らかに笑い、ジキルは強く睨みつけていた。


「俺をぶっ殺した恨み、晴らさせてもらうぞ!」

「さあ。楽しませてもらうぞ!」

「待ちなさい2人とも。まずは相手の出方を!」


 プロメテウスの制止も聞かず、2人は彼女に攻撃しようと襲いかかる。


「悪いね。ガブリエルで溜まったストレス。あんたらで発散させてもらうよ」


 彼女の姿が一瞬で消えたかと思った瞬間、2人の視界は真っ逆さまに反転していた。


「は、ははは。なんで……俺の視界がこんなめちゃくちゃに」

「くそっ。何がどうなって……意識も」


 彼らは気づくことが出来なかった。目に見えないほどのスピードで接近し、首を刈り取った彼女の姿を。ヴァーユは首に空気の鎧を展開していたが、その鎧は紙切れのように切り裂かれ、なんの役にも立たなかった。


「貴様あああああ!」


 プロメテウスは手袋を脱ぎ、魔術結界を即座に発動しようとしたが、彼は印を結ぶことが出来なかった。


「……え?」


 いつの間にか、彼の両腕はなくなっていたからだ。後ろを見ると、彼の両腕を持ってるアリアがいた。


「全員100年も生きてないんだね。その程度の時間なら」


 彼女が指を鳴らすと、六神王の体は粒子のようにバラバラになって消え去る。彼女の魔術、過去破壊(メモリー・ブレイク)によって彼らの過去が破壊され、存在を維持できなくなって消滅したのだ。


「さて。状況もだいぶやばいことになってるみたいだし、とっとと終わらせるか」

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