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第156話 カイツの新しい力

 side カイツ


「くけけけけ。ちゃちゃっと終わらせてやるよ。爆裂を爆裂して爆裂せよ。我こそは爆発の悪魔。全てを炸裂させ、ねじ伏せる。存分に泣け。喚け。絶望しろ!」


 奴の背中から1対2枚の黒い翼が生える。


「くけけけけけ! ブハーーー」


 奴は口から黒い煤を吐き出し、俺の周囲を覆う。


「ヴァーユの力に似てるな」

「くけけけけけけ! 俺の力は、ヴァーユみたいなカス野郎とは次元が違うんだよ。その目にしかと焼き付けて死ね!」


 奴がそう言った直後、煤が光って大爆発が起きる。避けようともしなかった俺は当然その爆発をもろに喰らい、爆炎が俺の体を包み込み、視界が真っ赤に染まる。


「くけけけけけけけ! めちゃくちゃ簡単だったな。やはりお前程度のカスは簡単に倒せる。くけけけけ! 今の六神王も馬鹿な奴ばかりだ。俺がこんなカスに負けると思い込んでたんだからな。やはりカーリー様の隣に相応しいのはこの俺様だけだ!」

「隣に相応しいのがお前かどうかは知らないが、ヴァーユの火力はこんな生易しいものじゃなかったぞ」


 煙を払い、俺は無傷でその場に立っていた。奴の爆発のせいで、俺の足下を除いて地面が小さなクレーターのようになっている。煤を出してそれを爆発させる魔術。中々の威力だが、今の俺にとっては敵じゃない。


「けむたいなあ。土ぼこりも酷いし」

「お前、なんで無傷なんだ。確実に攻撃を喰らってたはず」

「ああ。簡単に言うと喰らってない」

「はああ? そんなわけがねえだろ! 確実に喰らってたはず……そうか。喰らったかのように見せかけて避けてたんだな。カスにしてはすばしっこい奴だな」


 避けてないんだが、奴は俺がダメージを受けてないのが信じられないのか、そんなとんちんかんなことを言い始めた。


「ならばこれで終わらせてやるよおおお!」


 奴は一気に近づいて俺の首元を掴む。その直後、奴の手から視界が覆われるほどの煤が放出される。その煤は口や耳、鼻を通じて俺の体の中に入ってきた。


「くけけけけけ! いくらスピードを出そうとこいつからは避けられねえぞ! 死ねや!」


 奴の手から大爆発が起こり、また視界が真っ赤に染まる。


「くけけけけけ! 手ごたえありだ。外と中からの大爆発。ミカエルの器といえど、所詮はただのカス。次期六神王のリーダーとなる俺様に勝てるわけねえんだよ!」

「次期六神王ねえ。けど、この程度の実力じゃヴァ―ユやプロメテウスには勝てないと思うぞ」

「!?」


 煙が晴れ、俺が無傷なことがそんなに驚いたのか、奴の顔は驚愕に満ちていた。


「な、なんでだよおおおおお! なんでお前は無傷で立ってるんだ。内部からも爆発させたんだぞ! どう考えても死んでないとおかしいだろうが!」

「喰らってないと言っただろう。今の俺にはそんなちゃちな炎は効かない」

「どういうことだよおお! なんで俺の攻撃は効いてないんだ!」

「悪いが、いちいちネタ晴らしをする気はない。六聖天・第2解放」


 天使のような羽が2枚生え、俺の両腕が真っ白に染まる。アナザー・ミカエルを体に入れた影響か、少しばかり変化しているな。


「この……化け物があああああ!」


 奴は何度も煤による爆発を起こし、地面のクレーターがどんどん大きくなっていく。だが、そんな攻撃は効かない。今の俺には炎、風、水に対して高い耐性がある。アナザー・ミカエルを取り込んだ影響なのだろう。奴の爆発はかなりの威力があるというのに、それをノーダメージで済ませられるとは凄いものだ。さすがは世界を滅ぼす力を持った存在というべきか。もう少し色々試したいが、あっちの視線も鬱陶しいし、これ以上奴と遊んでる余裕もない。


「剣舞・龍刃百華」


 俺が剣を横に一振りすると、奴はその攻撃を後ろに下がって回避する。


「おっと。くけけけけ。なんだよその攻撃は。あまりにも遅すぎて止まって見えたぜ。くけけけけけ! 耐久力はそれなりにあるようだが、攻撃力はポンコツだな!」

「見えたのは一撃だけか? やはり大したことないな」


 俺がそう言った直後、無数の斬撃が奴をバラバラのブロックのようにに変えた。


「威力がかなり上がってるな。剣のおかげもあるんだろうが、それ以上に身体能力が大きく向上している。あの程度の相手なら第1解放でも余裕だったな」


 思った以上にパワーアップしていたみたいだ。これなら六神王とも戦える。ただ。


「これからどうするかなあ」


 寝床にする予定だった馬車が粉々に破壊された。移動手段がなくなったのも大きな問題だが、それ以上に今日の夜をどう過ごすかだ。村には入れないし、かといってこんな野原で寝るわけにもいかない。


「ミカエル。アースガルズに行くことは出来るか?」


 アースガルズに行ってアナザー・ミカエルがいたところに行けば、休息は取れるはずだ。今のミカエルは全盛期に近い能力を有してるし、望みはある


『行くことは出来るが、ここで門を作ったとしても、妾の半身がいたアースガルズに行けんぞ。全く別のアースガルズになる。しかもこの近くにウリエルがおるのじゃとしたら、奴がそのアースガルズ出身の可能性もあるな』

「……そうか」


 だとしたら行けないな。アナザー・ミカエルがいたアースガルズでないなら、寝床に出来る場所が見つかるか分からない。その上、ウリエル出身のアースガルズは色々と怖い。もしかしたらそこの住人に敵意を向けられるかもしれないし。


「……はあ。どうしたもんかねえ」


 このままじゃ碌な睡眠もとれずに過ごす可能性もある。どうやって寝床を確保するべきか。そう考えていると、地面を突き破り、巨大な蛇が現れた。


『なんじゃこのでっかい蛇は!? 六神王とやらの刺客か?』


 アナザー・ミカエルが驚いたようにそう叫ぶが、俺はこの蛇に見覚えがあった。


「こいつは……まさか」

「やっほお。久しぶりやのお。カイツはん」


 蛇の口の中から現れたのは黒の和服メイド服を着て、白いエプロンを着けた女性。黒い髪をおさげにして骸骨のアクセサリーで結んでいた。右が赤、左が金色の猫を思わせる様な瞳の綺麗な顔。そして隻腕の女性。


「ケルーナ!」


 ヴァルキュリア家を相手に共闘した女性、ケルーナだった。


「なんでこんな所に」

「いやあ。ウリエルはんがあんたらが来てることを察知したみたいでのお。カイツはんが心配になって来たんよ。その様子やと、寝床が見つかってないようやな」

「ああ。馬車が壊れたし、村にも入れなくてどうしようかと」

「そういうことなら、わっちがあんたを泊めたるわ」

「本当か! それは助かるよ。けど、近くの村でクロノスたちが宿に泊まってるんだ」

「それなら、明日の朝にあんたをここに送ってくわ。いつまでもこんな所にいとうないやろ。おいでおいで~」

「ありがとう。世話になるよ」

「いやいや。あんたにはヴァルキュリア家との戦いで世話になったからのお。これはわっちからの恩返しや。さ、行きまっせ」


 蛇の上に乗り、暗闇神社へと向かっていく。神社に着いた後、彼女は御社殿の前に行った。


「ここからヘルヘイムに行って、わっちの家に招待するわ。さあれっつごー」


 彼女と共に俺は御社殿の中へ行き、ヘルヘイムへと向かった。彼女のおかげでなんとかなりそうだが、ここはウリエルが住処にしてる可能性が高い場所だ。彼女がウリエルのことを知ってることからもほぼ確定。ちゃんと寝れると良いんだが。








 神社から遠く離れた場所。そこではジキルとハイド、アレクトがカイツがヘルヘイムへと行く瞬間を見ていた。カイツの姿が消えた後、ジキルがぐーっと腕を伸ばす。


「ふむ。それなりにはやるみたいだな。アルコーンをあんな簡単に倒すとは。馬鹿で無能だったとはいえ、それなりの実力だったんだが」

「色々隠したまま勝ったみたいだし、多分私たちの気配にも気づいてるよね。思ったよりも鋭くてびっくりしちゃった」

「だが、俺たちの敵ではない。何を隠していようと、あの程度の奴なら簡単に倒せる」

「だね。ヴァーユの敵、絶対に殺してやる」

「おや。アルコーンの敵は取らないのか?」

「私あいつ嫌いだもん。傲慢だし無能だし変な目で見てくるし」

「へえ。あいつそんな目で見てたのか。確かにそんなカスは死んで当然だな。なあアレクト」

「……どうでも良い」

「はあ。相変わらず会話のキャッチボールが出来ない奴だな。それにしても、奴のことをやけに観察してたようだが、知り合いか何かか?」

「知り合いではない。私の道を阻む傲慢な敵。それだけのことだ」

「よく分かんねえな。まあいい。明日の昼、ヘルヘイムに行って騎士団メンバーを殺すぞ」

「今からでなくて良いのか?」

「戦いに必要なのは入念な準備と睡眠だ。しっかり寝ないと戦えなくなってしまうからなあ。さあハイド。一緒に寝よう」

「うん。そうすると、ジキルが幸せになるからね。私にできることがあったらなんでも言ってね」

「ふふ。常に他人の幸せを考える美しき聖女。眩しすぎて見てられないよ」

「もう。ジキルったら」


 また2人の世界に入ってうっとりしていたが、アレクトはそれを無視して寝床用のキャンプの中に入った。


「カイツ・ケラウノス。奴は殺さなければならない害虫だ。弱者を救うなどという綺麗事を宣う偽善者は、絶対に殺す」

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