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第109話 クロノス参戦!

 リナーテとカムペーの戦いで空いた大穴。その底には大量の瓦礫が積まれており、すぐそばには白い球体があった。それが消失すると、メリナ、メジーマ、ウル、ダレス、ラルカがいた。


「あのやろー。めちゃくちゃしやがった。まさかここら一帯を爆破するとはな」


彼女は辺りを見渡して呟いた。


「だいぶ下に落ちたみたいだが、ここどこだよ。てかあいつはどこに」


 メリナがリナーテの居場所を探そうとすると、瓦礫を崩してある男が現れた。


「! お前は」

「くそが。あの女、ふざけたことをしてくれたなあ」


 そこに立っていたのはカムペーだった。体中から血を流してボロボロになっており、右腕は不自然に折れ曲がっている。


「生きていたのか。カムペー」

「ふん。それはこちらのセリフだ。まさかお前らが生きてるとは思わなかったよ。本当は捕らえないといけないんだろうが気が変わった。俺の右腕を潰した礼に、貴様らは皆殺してやる!」

「くそ……どこかに水は無いのか。水さえあれば」

「死ねえええ! このクソ雑魚どもがあ!」


 彼はさすまたを槍へと変え、その刃先を彼女に向けて放つ。彼女の頭を貫こうとしたその瞬間。


「砕けろ」


 どこかから声がし、槍が粉々に砕け散った。


「何者だ!」


 彼は声のした方を振り向く。そこには1人の女性が立っていた。


「全く。カイツ様を助けるために来てみたら、よく分からない地形変動に巻き込まれて、今度は変な奴のいる場所ですか。鬱陶しいことこの上ないですね」


 ツインテールの女性。士団の制服である襟や袖口が金で装飾された黒のコート、黒のスカートを履いている。その赤い目には魔法陣の模様が描かれていた。


「あいつは」

「誰だてめえは。いきなり出てきやがって」

「通りすがりの騎士団団員です。覚える必要はありませんよ。あなたはここで死ぬんですから」

「あ? たかが人間風情が。調子に乗ってんじゃねえぞ!」


 彼は何本ものナイフを取りだして投げつけるが、それらは見えないバリアに防がれ、弾かれてしまった。


「なに!?」

「今は虫の居所が非常に悪いですから、とっとと終わらせます」


 彼女は両手の中指、薬指の真ん中部分の背を合わせ、残り3本の指先を重ねる。


「魔術結界 魂の箱庭!」


 彼女がそう言った直後、カムペーやメリナたちは一面花畑の世界に立っていた。辺り一面に真っ赤な花が咲き誇り、空は薄暗い不気味な色となっている。


「なんだよ。なんだこれはああああ!?」


 カムペーはいきなりわけの分からない所に飛ばされたことに混乱していたが、メリナはこの現象に心当たりがあった。


(この技。まさか)


「ツインテ女。一体何をしたあ!」

「あなたに答える理由がありますか?」

「くそが。ふざけたことばかりしやがって!」


 彼が再びナイフを投げようとすると、パサリと何かが落ちる様な音がした。音のした方を見ると、彼の腕が水分がなくなったかのように細く干からび、風に乗って粉々になっていった。それだけでなく、彼の両足も同じように細く干からびて行く。周りの花は光り輝き、花が大きくなっていく。それだけでなく、新しい花も成長し、咲き始めていた。


「な、なんだこれはあああ!?」

「命を糧に、花を咲かせる魔界の花園。塵となって消え失せろ」

「く、くそ! 俺はこんなところでええ!」


 彼は必死に逃げようとするが、両足も腕も塵となった今の状態でまともに動けるはずもなく、そのスピードはかたつむりのように遅かった。花はそんな彼の生命を吸い取り、神々しく花を咲かせていく。


「くそ……こんな所で……死ぬわけには」

「さっさと死んでください。あなたの声は不快なんですよ。失せろ」

「いぎゃあああああああ!?」


 彼は悲鳴をあげながら、体が塵となって死んだ。その後、花畑が消えて元の洞窟のような場所に戻った。メリナはクロノスの実力に絶句するしかなかった。


(なんて奴だ。あのカムペーを瞬殺しやがった。私たちとは次元が違う)


 クロノスは瓦礫を少し見た後、その中からリナーテの首根っこを掴んで引っ張り出した。彼女の体はボロボロになっており、服が破けてあちこちに酷い火傷を負っている。


「リナーテ! 良かった。そこにいたのか。おいクロノス。そいつ、大丈夫なのか?」

「全く大丈夫じゃないですね。体がボロボロですし、心臓も止まって魂も消えかけていす。多分、後数分で死ぬでしょう」

「そんな!? 助ける方法は何かないのか?」

「ないわけではありませんが」


 クロノスは彼女たちを見て、少し考える。


(見殺しにしてもいいですが、この女達はカイツ様の大切な人。死んだらカイツ様が悲しんでしまいますね……仕方ないか)


 彼女はメリナに手をかざし、青い魔法陣を展開する。


「魂よ。今一度強き力を取り戻し、生者に命を与えよ」


 彼女の魔法陣が輝くと、リナーテの体に青白い光が宿った。すると、彼女の心臓が微かに動き始め、次第にその鼓動が強くなっていく。それだけでなく、彼女の火傷も少しだけ治っていく。


「げほっ! がほっ!? ふぇ……ここは?」

「やっと起きましたか」


 クロノスはめんどくさそうに彼女をメリナの方へぶん投げた。


「え……おわああああ!?」

「ちょ……待て待て待て待てえ!」


 メリナは何とかリナーテをキャッチし、事なきを得た。


「あんた何してんだ! リナーテが死んじまうだろうが!」

「この程度で死なないように治してますよ」


 クロノスはウルたちに手を向け、怪我で気絶してる人たちの上に青い魔法陣を展開する。


「治れ」


 魔法陣が光り輝くと、ウルたちの傷が治っていった。


「な!? 傷が……どういう魔術だよ」


 メリナが驚く中、クロノスは傷が全快する前に魔法陣を消した。


「これで治療完了ですね。走れる程度には回復してるはずです。では、私はもう行きます。あ、1つ忠告しておきます。後10分くらいで面倒なのが来ますから、どこかに隠れたほうが良いですよ。例えば、あそことかに」


 彼女は淡い光が漏れている洞窟を指さしてそう言った後、穴の空いた天井へ飛んでいき、壁を蹴りながら上へと上がっていった。


「何だったんだあいつ。中途半端にウルたちを治してどっかに行っちまうし。だが、おかげで命の危機は脱したな。リナーテ。大丈夫か?」

「なんとかね。走ることぐらいなら何とかなる」


 彼女はそう言ってメリナから離れ、自分の足で立つ。


「いやー。にしても酷い目に合った。瓦礫に埋められた時は死ぬと思ったね。そういや、カムペーはどうなったの?」

「瓦礫から出てきたが、あのツインテール女が瞬殺した」

「マジ? あいつめちゃくちゃ強いんだね」

「そんなことより、別の場所に移動するぞ。ウルたちがまだ目覚めそうにないし、運ぶのを手伝ってくれ」

「それは良いけど、どこに行くの?」

「とりあえず、あそこに向かう」


 メリナが指さしたのはどこかに続く道であり、向こうの方から淡い光が漏れていた。


「……大丈夫なの? めちゃくちゃ怪しそうだけど」

「ヘラクレスって奴の気配はないし、それ以外の敵の気配もない。クロノスがあっちに行った方が良いって言ってたし、多分大丈夫だろ。それに、いつまでもこんなところにいるわけにもいかないしな。こいつらのこともあるし」

「了解」


 彼女たちは動かないウルたちを抱え、光のある方へと向かって歩き始めた。


「にしても、この先には何があるんだろうね」

「さあな。出来ればゆったり休める場所だと助かるんだが」


 洞窟を抜けた先には白い扉があった。淡い光は扉から漏れていたのだ。


「……開けたら敵が待ってたとかないよね?」

「そうなったら私たちは終わりだな」


 そんな軽口を叩きながら扉を開けると、そこは真っ白なソファやクローゼットなどのさまざまな家具、真っ白な壁、天井と全てが白1色の広い部屋だった。彼女たちの前にはキングサイズのベッドがあり、そこにカイツがいた。

 それだけでも十分衝撃的な出来事だが、それ以上に衝撃的な出来事があった。白髪の眼帯をした女性が全裸で彼の上に乗っており、深い口づけをしていたのだ。メリナは絶句し、リナーテは怒りで体を震わせていた。


「ちょい……カイツ」


 彼女がそう言うと、彼らはその声に気付き、口づけを中断した。


「おや。お邪魔虫が来てしまったな」

「リナーテ!? お前……なんでこんなところに」

「人が命がけで戦ってた時に……なにしてんのおおおおお!」


 彼女は今までにない速度で走り飛び、彼に向かって飛び蹴りしに行った。

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