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小さなストーカー③

 俺はいつも通り学校が終わると家に帰ってきた。……のだが、今は家に入らず少し遠くから電柱の影に隠れて覗いていた。


 なぜなら、家の前をうろつく不審者を発見したからだ。いや、実際はめぐるなんだけど。学校に来なかったがしっかりと制服はきている。逆にそのせいか余計に怪しく見えるのは気のせいだろうか。取り敢えず声をかけてみることにした。


 「何やってんだ」


 「っ!!!」


 後ろから声をかけたのがまずかったらしくビクビクっと身体を震わせたかと思うと固まってしまった。


 「お~い、だいじょぶか~?」


 手を顔の前で振ってみるが反応がない。はて、どうしたものか。


 「またな、めぐる」


 俺はそのままめぐるを放置して家に入ることにした。


 「待ちなさいよ!」


 「なんだよ」


 「なんだよじゃないわよ! なーに放置してそのまま帰ろうとしてんのよ!」


 「めんどくさいやつだな」


 「めんどくさい言うなぁ!」


 このままだとずっと言い合いが続きそうなので俺は一旦落ちつくために一呼吸おいて聞いた。


 「何やってたんだ、学校にもこないで」


 「それは……」


 めぐるは言いにくそうにもじもじとしている。まさか、俺ん家に泥棒に!? 何もないのでお引き取りください。


 「ペンダント」


 「?」


 「佑斗がなくしたペンダントを探してたのよ」


 「まじかよ。まさか、朝からずっとか?」


 「うん」


 昨日なくなった事が分かったペンダント。昔めぐるから貰ったものだけどまさかそれを探してたなんて。


 「でも、なんで……」


 そうだ、なくしたと言ってもたかがペンダントだ。そこまで必死に探す理由が分からない。


 「それは…………と、取り敢えずいいでしょ! とにかくあれを探してるの。佑斗も学校が終わったんなら手伝ってよ」


 「それがな、めぐる。実はさペンダント見つかったんだよね」


 そう言いながら鞄からだして見せる。


 「えっ? ど、どこにあったのよ」


 「いやーそれがさ…………」






 時刻は四時間ほど前に遡ってお昼休み。



 「あの、これ!」


 勇気を振り絞った声と共に前に差し出されたのは俺のペンダントだった。


 「これ……俺のペンダント。どうして赤井さんが?」


 「あの、ね……」


 相変わらずビクビクしながらだけど赤井さんはゆっくりと話してくれた。


 「実は入学式の日の事なんだけど。実は廊下を歩いているときに君とぶつかったんだよ」


 「あーそう言えばなんか誰かとぶつかったような気が……って、まさか」


 「その時にね、このペンダントが落ちたんだよ」


 なるほど、そりゃあれだけ家の中を探しても見つからないわけだ。


 「それでね、すぐに返そうと思ったんだけどすぐに女の子に引きずられていっちゃって……」


 「渡せなかったと」


 「うん」


 あぁ今思い出すだけでもあの時のみんなの視線は嫌だったなぁ。全部めぐるのせいだな、うん。

 俺は話がさらに長くなりそうだったので赤井さんを連れて食堂に行き向かい合って座った。


 「それで、その後なんだけど返したくてもどこのクラスかも学年も分からないしで返せなくて」


 「まぁ確かに、でも先生に届けるとかでもよかったんじゃない?」


 「…………そうですね!」


 俺の答えにそんな方法があったのかとでも言うように手をポンと叩いた。この子……少し天然ちゃんなのだろうか。


 「でも、その後ここでやっと見つけたんです! 逃げてしまったけど…………」


 「そう言えばそうだったな」


 「実は私は他人と話すのが、特に男の人は苦手で……ごめんなさい」


 「あ、謝らなくてもいいよ、誰にだって苦手な事はあるしね」


 「でもだからってあんなストーカーみたいな事…………あぁぁぁぁぁぁぁ」


 赤井さんは思い出して恥ずかしくなったのかテーブルにバタンッと突っ伏してしまった。


 「でも、今日は勇気をだして話しかけてくれたんでしょ? ちゃんと返して貰ったしほんとにありがとう」


 赤井さんは少しだけ顔をあげると照れと恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら小さな声で


 「ど、どういたしまして」


と聞こえた。





 時刻は戻って16時過ぎ、自宅前。


 「てな事があったんだよ」


 「あーーーそーーー」


 「なんだよ」


 「別にぃーーー」


 「気になるだろ」


 「そう? じゃあ遠慮なく」


 そう言うとめぐるは雪をまるめだした。そして、


 「えい」


 俺に向かって投げてきた。


 「イテッ、何すんだぁ……ぁ……」


 と、やり返そうと思ったらすでに全力ダッシュで逃げていた。いったい何だっつうんだ。






 「あの……赤井さんはいますか?」


 俺はペンダントも無事に戻り少し落ちついてから放課後となりのクラスにお邪魔していた。もう赤井さんは帰ってしまったかもと思ったが、クラスの半数以上が残っておりその中に赤井さんもいた。


 「は、はい……!」


 まさか自分が呼ばれるとは思わなかったのか少し声が上ずっていた。そしてゆっくりと自分の足で……いや、後ろの子に押されながらやってきた。


 「ごめんね、急に」


 「あ、いえ……だいじょぶです」


 なぜか二人とも黙ってしまう。と言うかそっちが照れるとこっちまでなんか意識してしまうんだが、まぁしょうがない。


 「二人はどんな関係で、で?」


 本題を話そうとしたら後ろにいた赤井さんより少し大きい子がそんなことを言ってきた。


 「ちょっ……朝日ちゃん!」


 「え~だってなんか美羽ちゃんがもじもじしてるから」


 「え、えっと……」


 俺が呆然としているとやっと俺に向き直って挨拶をしてきた。


 「初めまして、 朝日(あさひ)乃亜(のあ)って言います。美羽ちゃんの友達です、よろしくお願いします」


 「そっか。俺は、んー……佑斗とでも呼び捨てで呼んでくれ」


 「流石に急に呼び捨ては……佑斗さんにしときますね~」


 「あぁ、クラスも隣だしよろしく。朝日さん」


 挨拶も終わりまた本題に入ろうとしたところで朝日さんがニタァっと笑った。なんか少しめぐるが何かたくらんでる時にする顔に似ていた。


 「それで、二人はどういう関係で?」


 「だから朝日ちゃん!」


 「別にただ赤井さんに用事があっただけだよ」


 「本当ですかぁ~?」


 朝日さんは変なことを考えているようでぐいっと近くによってきた。


 「ほ、ほんとだから」


 「だって美羽ちゃん男の子苦手なのにまさか友達がいたなんてびっくりですよ」


 「それはね、ええと私が落とし物を届けた時にちょっとね」


 「落とし物?」


 「あぁ、俺の大事な物だったんだ。それを赤井さんが拾ってくれて届けてくれたの。それでまぁ少しは話せるようになったってだけだよ」


 「んー、そうなんですかぁ」


 何やらまだ疑っているようだったが本当にそれだけなのだから別に気にしないことにした。


 「それで赤井さん。今ちょっといいかな」


 「はい、大丈夫です」


 赤井さんは朝日さんにバイバイと手を振って俺について来た。別にそのままあそこで話してもよかったんだけど朝日さんがうるさそうだから仕方ない。


 「あの……」


 「あぁごめん。少しお願いがあって呼んだんだ」


 「お願い……?」


 「赤井さんは部活とかに入ったりしないの?」


 「え、今の所は何にも入らないつもりです」


 「じゃあさ、俺たちがつくる部活にできたら入ってくれないかな?」


 「私がですか?」


 「うん。まぁ部活と言っても何すんのかも分からない、まだつくるだけの人数が足りないとかすかすかの部活だから断ってくれても全然いいんだけど」


 むしろ説明してて入らない方が絶対いいと思う。まず俺が抜けたいです。赤井さんは俯いて黙っている。

 あーこれはやっぱ困らせちゃったかなぁと思った時。


 「い、いいですよ」


 「え」


 「部活、私も入ろうかと思います」


 「本当に?」


 「はい!」


 ああ、これでめぐるに理不尽にもバンバン叩かれなくてすみそうだぁ。そう思ったら何だか涙が。


 「うぅ~っ、ぐす」


 「だ、大丈夫?」


 急に泣き出したから心配したんだろう。つーか俺は何て事で泣いてんだよ、その事を思うとさらに泣けてくる。


 「じゃあよろしく、赤井さん」


 俺はそう言って手をだすとギュッと赤井さんが力強く握ってくれた。


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