四月の雪②
学校からの帰り道、隣のめぐるをながめながらお昼の事を思い出していた。
「はぁ? 告白された!?」
告白。好きな人に自分の気持ちを伝えること。勿論、もちろん? いや、とにかく俺にはした経験もされた経験もない。誰かを好きと思ったことはないしそこまで誰かと話すこともなかったから親友とよべる人もできた記憶はない。
だがしかし、この世にはコミュ力お化けや見た目だけがよくて告白されまくるやつもいる。めぐるもその中の一人だといえよう。
なんせ入学してたったの二日目だというのにすでに告白されたらしい。まぁ、断ったらしいのだが。
手袋を忘れたらしく手を擦りあわせて暖まっているところを見るに普段と様子も変わらない。あまり気にしてないようだ。
「何で断ったんだ?」
「ええ?」
「だから告白だよ。別にそんな悪いやつじゃなかったんだろ?」
「あ、あぁ。それね、それはそうなんだけど気分がのらなかったのよ」
「気分でふったのか」
「そうよ、なんか文句ある?」
特に文句もないしこれ以上何か言ったらつっかかってきそうなので静かにしておく。
しかし勇気を振り絞って告白したのに気分でふられたのか……可愛そうに。
「と言うかはやすぎるのよ、まだ二日しかたってないのに有り得ないわね」
「一目惚れじゃないのか?」
「だとしてもよ、もう少しこうなんかあってからよ」
「なんかってなんだ」
「それは、ほら…………。と、特に思い付かないけどとにかくだめなのよ!」
そう言って指を交差させてばつ印を作ると俺に勢いよく見せてきた。あぶないよ、当たるよ。目に刺さるって。
そしてまだなれない帰り道を歩いていると俺の家が見えてきた。
「じゃあな」
「ええ、また明日」
手をあげ返事をするとポケットから鍵を出して家に入った。明かりはついておらず暗い。でもそれはいつもの事なので特に気にならない。
俺の両親は中学の時に二人とも交通事故で亡くなっている。それでも、親戚の人が来てくれたりと様々な人たちのお陰で生活ができている。
二階にあがって自分の部屋に入り荷物をおくとベッドに横になった。
「はぁ、結構つかれたな」
でもそれも当然かもしれない。新しい人たちに環境もすごい変わった。当分誰とも話さないかと思っていたけれど隆也が話しかけてくれた。正直、少しうれしかった。
「友達か……。はぁ、飯でもつくるかぁ」
俺は立ち上がると夕飯を作るために一階におりた。
入学してから一週間ほどがたった。いつものように帰ろうと荷物を整理している時だった。
「ちょっと来なさい」
そう言いながらめぐるが俺の袖をつかみ引っ張った。
「な、なんだよ」
「いいから」
しょうがないので引っ張られるがままついていくとある教室につれてこられた。まだ使ったことがない、それに後ろの方には荷物がたくさん置かれていて倉庫みたいな感じだった。
「なにここ」
「教室」
「…………それはみれば分かる、何でこんなとこにつれてきたんだ」
「ここで部活やることにしたの! そしてあんたが部員第一号よ」
「は?」
「頑張りなさい、初号機」
「誰が初号機だ!」
はぁ、相変わらずである。無理やり引っ張って来たと思ったらいきなり部活って。
「部活ってちなみに何やるんだよ」
「さぁ」
久しぶりに本気でキレそうになった。つれて来たと思ったら何をするかも決めてないだと…………。
「さよなら」
「待ちなさい!」
「ぐえっ!」
逃げようと思ったら後ろから思いっきり首もとをひっつかまれた。やめて、ぐるしい。
「わ、分かったから取り敢えず離してくれっ! 死ぬ……」
「あ、ごめん」
「いだっ」
急に離すもんだから今度は尻を床に打ち付けた。
「なんで急にそんなことをいいだすんだよ、お前は」
痛めた尻をさすりながら俺は質問してみた。ただやっぱり納得するような答えは返ってこなかった。
「それは……暇だったからよ。退屈なの」
「◯宮◯ルヒみたいなこと言い出したな」
「何それ」
「いや、気にしなくていい」
「とにかくあんたはもう部員なんだから」
部員と言われても何をするかも分からん部活に入ってどうしろと言うのか。
「ちなみにもう申請はしたのか」
「してないわよ、五人いないと許可されないもの」
「さよなら」
「待ちなさいってのに!」
フハハハハハハ今度はつかまれないぜ。そう何度も同じことをされてたまるか。俺は思いっきり横に避けた。
「ぐはっ!」
めぐるの回し蹴りがクリーンヒットした。あぁ、もうやだ。遊んでないですぐ帰ればよかった…………。
「そこで申請するために人数を集めてほしいの」
何事もなかったかのように続けるめぐる。
「自分で集めればいいだろ!」
「勿論、私もあつめるわよ。でもあんたも探した方がはやいでしょ」
確かにそうだが、まず俺は誰かと話すのが苦手だしいったい何て言って誘えばいいんだ。
ゆっくり何でもする部活なんだけど、どう入らない? 誰も入らないだろ…………。
「とにかく頼んだからね」
そう言い残し教室からでていってしまった。まだ身体のあちこちが痛いがずっとここにいるわけにも行かない。取り敢えず細かいことはまた聞いてみることにしよう。
玄関からでるとすでに少し暗くなっていた。このことから結構長い間拘束されていたことが分かる。
校庭を囲むように植えられた桜の木は四月なので勿論咲いている。ただし雪を被ってはいるが。暗くなり始め周りの街灯にうっすら照らされ綺麗な桜の色と雪の反射でとても…………。
「きれいだなぁ」
素直に俺はそう思った。