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喰種は醜い
彼女に連れてこられたのは誰もいない美術室。
彼女がたった一人の美術部だそうだ。
キャンバスには書きかけだが、翼を広げた人間が描かれていた。
「これって天使ですか?綺麗ですね。」
「いや、喰種よ。」
「あ、そうなんですね。」
僕はほんのちょっと嫌な気持ちになった。
彼女も僕が嫌な気持ちになったと感じたらしく、
「わたしは喰種が綺麗だと思ってる。人間よりよっぽど強いし、しかも力を抑えて人間に合わせてくれている所とか。」
僕はこの子に失望した。喰種のこと何にも分かってないんだな。僕らの翼なんてもうとっくにもがれてる。
この社会の主人公は人間。ぼくらはその隅っこで蹲ってるだけ。あくまで許されている存在なんだと。
勝手に喰種に幻想を抱いているのに少しイラッとして
「喰種に翼は似合わない、鎖がお似合いだ。」
僕はそう残して部屋を出た。
遠ざかる僕の背に彼女は静かに言った。
「あんたは分かってない、あなたは綺麗だし、その黒い目も誇っていい。」
僕のコンプレックスに踏み込んできた一言。
僕は前髪を撫でつけてそのまま歩いていった。