間章 帝都
ダンジョンの鍾乳洞とは異なり、帝都の上空には星々が輝いている。
しかし、その綺麗な煌めきも、地下牢にまでは届かない。
「何しに来たのよ、あんた達」
鉄格子の奥で腕を組む"ライヤ"が、むすっとした顔でそう言った。
「クラン追放の処分にキレて、クランリーダーに襲い掛かった"あんぽんたん"の様子を見に来たんでい」
「俺もだ」
鉄格子の手前には、リエンとブレイズの姿が。
ブレイズは頭に包帯を巻き、腕には添え木。
ダンジョンから帰還の際、大怪我を負ったのだ。
「あたし以上に短気なリエンと、あたし同様に追放されたブレイズにだけは、あんぽんたんだなんて言われたくないんだけど?」
「ふんっ。ま、それくらい威勢が良けりゃあ、懲役だろうと労役だろうと耐えられるだろうな」
鼻を鳴らすリエンに対し、ブレイズは妙に湿っぽい。
「……かもな。これからも元気でやれよ、ライヤ」
「は? なにそれ? もう、会えなくなるみたいな……」
「あぁ、その通りだ」
ブレイズは視線を落とし、自身のボロボロの腕を見た。
「この腕、《ヒール》でもなかなか治らなくてよ……完治には時間がかかるみたいなんだ。それでさ、いっその事、冒険者なんて辞めちまおうかなって」
「いつかは治るんでしょ? なのにどうして?」
「罪悪感だよ、イオへの」
身勝手な理由でブレイズは、イオをパーティーから追放した。
イオから恨まれて当然だ。
それなのにもかかわららず。
イオは、『ただ助けたい』という感情一つで、ブレイズ達を助けた。
見殺しにすることも、いっそ機に乗じることもできたはずなのに……。
その事を考えるたびブレイズは、自身の器の小ささ、愚かしさを感じてしまう。
同時に、罪悪感が湧き出てくる。
「もちろん、これが罪滅ぼしになるとは思ってねぇ。だけど、俺が冒険者を辞めれば、少なくとも目障りではなくなるかなって」
「それで、これからどうするの? そんな怪我で何が出来るっていうの?」
「ま、色々と探してみるさ。無ければ……物乞いでもするさ」
かつて期待されていた男の落ちぶれっぷりを実感し、ライヤは顔をしかめた。
「ま、好きにすれば? 私は絶対、イオの奴を許さないから」
「あぁ、お前も好きにするといい。だけど、五年の懲役はしっかりと果たせよ」
「ぐ……ッ!」
睨み付けるライヤに背を向け、ブレイズとリエンは地下牢を後にした。
地上では、夜だというのに活気がある。
しかも往来は、オーガシャーマン討伐とドラゴン発見の噂でもちきりだ。
「イオの奴が、どんどん遠くに感じるな……」
「ったりめぇよ。なんたって、てめぇら屑のくびきから解放されたんだからな」
「それもそうかもな」
もう既に、彼の存在は遠い。
肩を並べていたイオ・フィン・ランベルクはどこにもいない。
いるのは、遥か遠くを駆ける"イオ"だけだ。
「……それで、リエンはこれからどうするんだ?」
「そうだな……」
リエンはふと、夜空を見上げた。
流星が一条、尾を引いて流れていた。
「イオがドラゴンを倒せるよう、星に願っておくぜ」




