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06 山中「刑事と警部の木」

とりあえず、ここまで投稿しないと気持ち悪いきがした。

 さて、私たちは一つの可能性について見逃している。

 それは、伊藤・忠明自身が既に木や岩になっている事だ。

 警部が調べてもらったのは、研究施設内部、付近で見つけたものだけであり、見落としていいる、または街中で発見されている木や岩は含まれていない。

 傍から見て、私たちが取っている行動は早とちりである。

 しかし、私達はそれに気付かない。

 判断能力が著しく落ちているのだ。

 捜査が進まない事に対する疲労からではない、この異常な現象によるものだ。

 そして本能が何かを訴えているのである。

 何かに引き寄せられるようなものだ。

 森羅万象、1つに復す。


 果たして、私と警部は山中を歩いていた。

 手には暗くなり始めた辺りを照らすライトと、そして地図である。

 警部は地図を見て言った。

「人が潜む場所は、潜める場所でしか潜めない」

 ごく当たり前のような事である。

 しかし私達の場合、人海戦術も取れず、時間も無いことから、人が潜める場所を推測し、其処を調べるのが一番効率がいいのである。

 まさしく私達はその言葉に従うしかないのである。

 まず、潜みやすい場所の候補を挙げていく。

 真っ先に出てくるのが、ペンションやキャンピング施設である。

 そして目撃情報が無いことから、今は使われていない施設を使っている可能性が高い。

 その他の候補は、人が生きるために必要な水が手に入る川の近くであることを前提とした雨露を凌げる場所である。

 伊藤・忠明という男は地元の人間では無いことが分かっていた。

 警部曰く、土地勘がないものが、それほど難しい場所を選択できるとは思えないらしい。

 そして歳が若い者の傾向として、自然の中で暮らすことは不慣れになっている。

 そのことより、私達は使われていない施設を割り出し、そこを調べることにした。

 奥多摩の山には意外に多くのキャンピング施設がある。

 特にバブル期の影響が大きいのだろう、経営不振から捨てられた場所も多い。

 私達は8つ目の候補を調べ終え、次の場所へと向かうところだった。

「流石に足がきつくなって来ましたね」

 弱音である。

 しかし、警部はうっすらと汗をかくだけであり、疲れている様子は無かった。

「まったく近頃の若い者は・・・とは言いたくなるものだ。俺も歳食ったな」

「健脚なのはいいことですよ」

「まったくもって」

 私達の軽い言い合いは、少し焦りを感じさせるものだった。

 気付けば、日付が変わろうとしていたのだ。

 しかし私は思う。

 ・・・このまま見つからなければ、私達の杞憂ではないのでないか。

 事私達は信じたくはないのだ。

 馬鹿げた話だ、と私はこの事件が終わった後、酒の肴のストックにしてやろうと思った。

 焦ったり、安堵したりとどうも矛盾している。

 どろどろとして、

 べたべたして、

 むかむかして、

 はらはらして、

 私の中は渦巻いていた。

 しかし、そんな中―――それらを吹き飛ばし、私達は気を引き締める事となる。


 丸太小屋が数軒建っているそこは、手入れがされていないことが分かるほど廃れていた。

 しかし、警部は燃やされ、炭になった木の枝を見つけた。

 雨露により湿っていないことから、ここ最近で燃やされたものだ。

 それは人の気配を感じさせるには十分なものだったと言える。

 警部は私に向かって頷き、私もそれを返す。

 揃って拳銃の抜くと、その場で聞き耳を立てた。

 ちっちっちっちっ、と虫の鳴き声が聴こえる。

 だが、それに混じってツンタッツンタッ、とリズムがある音が聴こえた。

 それを私はよく聴く。

 特に電車に乗る時だ。

 ヘッドフォンから漏れ出て聴こえてくる音楽。

 まさにそれと同じであった。

 ここからでも聴こえると云う事は、かなりの大音量で聴いているのだろう。

 そしてその音の先へと顔を向ける。

 警部も気付いたのだろう、その方向へと耳を向け顔をしかめる。

 音の方向には一つの小屋―――いや、古屋といったほうがいいかもしれない―――があった。

 警部はその方向へと慎重に歩いていく。

 遅れて、私も歩き始めるが、それに気付いた警部は手で静止を示した。

 次に手の会話だけで私に指示を出す。

『ここで、待機、自分だけが、中に、行く、合図したら、来い』

 私が頷くのを確認すると、警部は丸太小屋の扉に背を付け、中の様子を伺う。

 そして、扉を静かに開け中へと入って行った。

 暫く音が止む。

 こくり。

 私が唾を飲むと同時、警部の大声ともう1人違う男の声が聞こえてきた。

「おい!おい!!貴様が伊藤・忠明だな!?」

「誰だ!そこに居るのかっ!!!?」

「その目隠しとヘッドフォンを外せ!!」

「止めろ!!外すな!!触るなっ!私にさわるなぁぁぁぁ!!」

 争う音が聴こえる。

 私は急いで警部の元へと向かおうとするが、その足を止める事となった。


 何故ならば、

 何故かしら、

 その丸太小屋の屋根を突如として、一本の木が突き破って出てきたからだ!!

 研究施設の屋根と同じように、伊藤・忠明の自宅と同じように、木が突き出たのだ!

 私は目を見開く。

 勢いよく突き破られ、木の破片が私の所まで飛んできた。

 声は出なかった。

 しかし、なんとも予想してしまった。

 そしてそれは多分当たっているのだ!!

 ―――警部!?

「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 小屋の中からの叫び声。

 その叫び声は警部のものではなかった。

 しかし、その声がきっかけとなり、私はその丸太小屋へと走る。

 そして転がり込むような形で入ると同時。ガシャンと窓ガラスが割れる音がした。

 誰かが逃げたのだ。

 追いかけなければ!!

 はっ、と私がそちらに向く、とそこには大きな木の幹が一本見えた。

 そこで私は動きを止めてしまう。

 目はその木から離れなかった。

 いや、違う。

 私の目が捕らえたものは木の幹でもあるが、その中心にあるものは違う。

 それは警部の服だった。

 茶色いコート

 くたびれたスーツ

 それを着た木がそこにはあった。

 木の根っこには、警部のものと思われるライトが転がっており、拳銃はなかった。

 私は、もうそれを知っていた。

 もうそれは警部なのだと知っていた。

 気付いてしまった。

 感づいてしまった。

 認めてしまった。

「あぁ・・・そんなぁ・・・・・・」

 私の足は力を無くし、その体を下へと降ろした。

 ぼろぼろと涙が出てきた。

 人間ではない警部に泣いてしまった。

 そして私は床に紙が散らばっているのを見た。

 それは殴り書きのように何かが書かれている。

 そぅ・・・始めはこのような事が書かれていた。


 


『警告、警告である。

 私はこの日記が読まれていることをただ願う。

 これは、人類に対しての警告である――』

かなり急ぎ足な展開となりましたが、実際私の書きたい事に対しては前座だったりします。

あと2部か3部で終わります。

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