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05 署内「警部の推論とオカルティック」

 私と警部の事前捜査の後、すぐに捜査本部が立てられた。

 しかし、多数の人員を割いても目新しい情報というものは入ってこない。

 行方不明となった者たちの足取りがまったくないのだ。

 既に1週間が過ぎようとしているのだ、食料が必要である。

 なのに店の防犯カメラは1名足りとて、行方不明者の姿を映さない。

 行き詰っている、と言えるだろう。

 私は署内でインスタントコーヒーを飲みながら、次はどう調べてみるか考えていた。

 その目は少し寝不足の証として充血しているらしく、とても痒かった。

 署内にいる同僚達も皆同じだ。

 このまま何もわからないままでは、マスコミもいい餌食である。

 上司からもピリピリとした気を当てられ、私たちは参っていた。

 そんな私のもとに少しやつれた警部が来た。

 その手には数枚の紙が握られている。

「ちょっとこれを見てくれ」

 そして、その紙束を渡された。


 それは以前、警部が気になるといった木と岩の年齢についての内容だった。

 まず、木の種類であるが、不明である。

 松の特徴を持っていながら杉でもある、など既に新種の木ではないかと書かれている。

 また岩も同様であった。

 しかし、木のも岩にも次のようなものが通常の木よりも多く検出されているという。


 炭素

 窒素

 流黄

 リン

 ナトリウム

 カリウム

 塩素

 カルシウム


 その他にも書かれているが、いかんせん私はこちらには疎い。

「この資料は前に俺の知り合いに頼んで検査してもらったものだ。あいつはとても不思議がってたよ。見たこともないデータが大量に出てきたのだからな。それにな、その検出されたもののリストなんだがよ・・・俺の知り合いはこう言ってたぜ―――」

 警部は言葉を一つ置き、次に繋げる。

「これは人間の体を構成する元素だってよ」

「まさか・・・」

 警部は僕の肩をに手を置き、顔を近づける。

 そして声を潜め、

「おい、俺たちはうすうす感づいているよな?あの木や岩の正体ってのによ・・・。もっとも常識では考えられん内容だ。人に話したら笑われるだろうよ」

「―――人が木や岩に化ける」

 その通りだ、と警部は頷いた。

「それにな、その資料の続きを読んでみろ。樹齢の辺りだ。・・・予想はできだろうけどよ」

 私は言われたとおり、紙を捲り、目を向ける。

 研究施設内にあった不思議な木や岩の年齢について・・・。

 そこにはあった場所とその年齢を示している。


 研究施設内の2本の木

 53と43


 研究施設入り口前にあった2本の木

 23〜25と25〜27


 研究施設にあった山道にあった1本の木

 30〜31


 研究施設内、入り口付近にあった2つの岩

 34〜35、29〜32


 研究施設内、2本の木の近くにあった岩

 31〜34


であった。

「つまりよ。これは俺が名簿に書いたものなんだがよ」

警部はもう一枚の紙を私に見せた。


研究主任

 美津・孝彦 男性 53歳(研究施設内の木)

研究員

 三城・長政 男性 43歳(研究施設内の木)

 上月・光  女性 35歳(入り口付近の岩)

 広野・大樹 男性 32歳(研究施設内の岩)

 多紀・陽光 男性 30歳(道中の木)

 井上・実  女性 30歳(入り口付近の岩)

 伊藤・忠明 男性 25歳(未発見)


 名前の横に、そうメモされていた。

「因みに・・・だ。2人の巡査の年齢もあの入り口にあった2本の木と同じだ」

「あまり信じたくはないですね」

「その通りだ。どうやって人は木や岩になれるのか―――それともできるのか・・・か」

 警部は煙草に火を付けると、一息した。

「それにしても最後の伊藤・忠明は見つかってないんですね」

 警部は私のその言葉を即座に返した。

「そこなんだ。俺としてはこの男が怪しい。見つかっていない事もそうだが、この男の家族だけが木になっていた。なぁ、これは俺の憶測なんだがよ・・・この伊藤・忠明が他の奴らを木や岩にしたんじゃないのか?」

 もはやどうやって、などと警部は考えていないようだった。

 しかし、私としてはどのようにやったか、という点で気になっていた。

 どちらにしろ、私と警部はあの木や岩が人であると確信していた。

「ならば、伊藤・忠明はどこかにまだ存在・・・いや、人として居ると」

 あぁ、そうだと警部は頷く。

「しかし、行方不明者はこっちが総がかりで探している。ならば何処にいるか・・・」

 警部はある方向へ向く、そちらには―――

「奥多摩の山ですか」

「まだあそこは全て調べられていない。と言うより、人海戦術での山の捜索は金が掛かるからな、上の方がまだ渋っているところだ。―――だが、もうそろそろGOサインは出るだろうよ」

「ならばそれ待ちになりますかね」

 しかし警部は頭を横に振った。

 その顔は苦い。

「俺は嫌な予感がするよ。これはやってはいけないことだってな。・・・考えてみろ、俺たちには思いつかないトリックで木や岩にしちまうのだろ」

 警部の言いたいことが分かる。

 もし、伊藤・忠明を追い詰めたとき、何が起こるかわからないということだ。

「ですが、こんな事人に言っても信じてもらえませんね。精神病院を紹介されるのがオチです」

「結局は俺の推論だ。オカルティックな事は信じたくないのだがな。でも、俺たちは警察官であり事件の真相を追い、居れば犯人を捕まえるのが仕事だ。行くしかないだろう?」

 警部は私を誘っていた。

 山に捜査が入る前に一緒に山に行こう、と。

 それは自分の功績でもなく、嫌な予感を現実にさせないためだ。

 正直、私は信じがたい事に出くわしている。

 だが、私は気になるのだ。

 もしも、これらの事件の原因があの研究施設で行われていた事に関係があるのなら・・・私は知りたい。

 好奇心は身を滅ぼす。

 そんな言葉が思い浮かんだ。

 しかし止まらない。

 私は警部に頷いた。



 その後、私と警部は拳銃を携帯し山へと向かった。

 その時の時刻は夕方。

 夜の捜査になるだろう。

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