04 自宅「警部と刑事と2本の木」
まったくもって申し訳ない。
5月中旬には終わるかな〜と、前に言っておきながら次の投稿が6月中旬という真実。
少しペース上げます。
伊藤・忠明
研究施設の職員の中で一番若い者である。
彼は既に妻を娶り、子供も居るそうだ。
事件発覚の起因である巡査に夫について喋った主婦こそ、その伊藤・忠明の奥方である。
私と警部は伊藤・忠明の自宅へと向かった。
その自宅の場所は意外に近い場所である。
研究施設から車で10分で到着するそこは歩いてでも通勤可能であった。
行く途中、私はその自宅に研究資料があるのではないかと期待を抱いていた。
私の頭の中では、あの加速器が気になっているのだ。
どうやら、私にも昔学んだ事についての知的好奇心はあるようだ。
「俺としては日記がいいな。俺が見てもそっちの分野はてんで分からん」
「まぁ、私も理解できるか分かりませんですけどね」
二人揃って肩をすくめる。
また、伊藤・忠明の奥方の話に期待をしていた。
警部曰く、家族を持つ者はなにかしら家族に仕事についての話をする。
特に、学生から仕事という社会に入った者はその傾向が現れる。
やはり歳を重ねた者ではガードが堅くなるものだ。
その意図もあり、最初に洗う研究員の親族として目を付けたのだ。
だが、私たちの期待は裏切られる事となる。
私と警部は、その自宅に到着した時から嫌な予感を抱いてしまった。
何故ならば、一軒家の玄関付近の屋根から木が突き出ていたからだ。
「まさか・・・」
私の呟きと共に警部は走った。
私は急いでその後を追い、玄関へと着くと、警部は愕然とした表情で玄関の扉を開いていた。
警部の背中越しにその内部を見る。
そこにあったのは、予想どおりの木であった。
しかも2本だ。
天井を突き破る木にもう一本は細く短い木、幼木だ。
そして、その2本の木は服を着ていた。
大きな木には女性が着る様な落ち着いた服。
小さな木には赤ん坊が着せられる涎掛けの付いた服。
私はなんとなく察してしまった。
これは伊藤・忠明の家族が着ていた服だと。
よく見ると、小さな木は大きな木に寄り添うように立っており、大きな木はそれを抱えるような形で枝を曲げていた。
それはまるで、抱っこしているかのようだ。
「ぼっとするな。行くぞ!」
警部は私に怒鳴った。
しかし警部も何かを振り払うように頭は振る。
「しかし警部。行くといっても、無断で入るわけにはっ!?」
「責任は俺が持つ。異常すぎるんだよ、こりゃ・・・行方不明になった研究員の家もまた、研究施設と同じ状況になっていやがる。それに既に―――この家の持ち主はいねぇよ」
確証はない。でもここまでこんなものを見せられると、そう思えてくる。
警部はそう呟くと、家の中に入っていった。
私も同じように入っていくが、足にころんと何かが当たった。
足元を見ると、そこには赤ん坊が加えているおしゃぶりが転がっていた。
家宅捜索の結果、伊藤・忠明の家族の姿は見えず、また、研究資料も日記も見当たらなかった。
その後、私と警部は他の研究員の親族を回ったのだが、そちらの方は普通にそこに居て、話を聞くことができた。
研究施設の職員の家族を洗うと云う捜査は、あまり情報を得ることができなかった。
分かった事といえば、研究主任の美津・孝彦が研究の成果に興奮を覚えていた、と云う事だけだろう。




