03 車内「警部と机上の空論」
「太陽系ですよ」
ぷしゅり、とペットボトルを開けながら私は言った。
場所を移し、車内へと。
警部は山を降りる際、玄関前の2本の木と道中にあった1本の木をもう一度確認していた。
気になるらしい。
「何がだ?」
「加速器の大きさです。ひもみたいに小さなものを見るにはどこくらいの加速器がいるか、と云う事の―――その答えは太陽系よりも大きいのです。冥王星って云うのは知っていますよね」
「あぁ、一時期騒がれていたな」
「その冥王星の軌道よりも大きな加速器が必要になるのですよ。いや・・・だったというべきなのでしょうが」
「何だ、煮えきらんな」
「えぇ、まぁ・・・。でも、ここまで大きな加速器を用意する技術は世界にはありません。警部が先におっしゃった地球と云う大きささえ実現は不可能と見ていいでしょうし。これが『超ひも理論』を説明する際に厄介な事でもあります」
「机上の空論・・・ねぇ」
「ですが、それを仮定と置くことで証明できることもありますのでそれだけで笑い飛ばすには行かない理論です」
「そんなもんか。・・・煙草吸うか?」
「結構です」
そうか、と警部は自分だけ煙草を吸い始める。
そして一息すると、
「まぁ、机上の空論なら俺の考えのほうがそれっぽいのだがな。―――実はあの研究施設にあった木の樹齢をざっと見てみた」
「樹齢ですか」
「そうだ。まず道中であったものが30歳、そして入り口前にあった2本―――あれがどちらも20歳の後半。施設内あった2本は50歳と40歳だった。俺は、名簿見たときに引っかかったんだよ。どうも偶然には思えねぇ」
私は職員名簿を取り出す。
研究主任
美津・孝彦 男性 53歳
研究員
三城・長政 男性 43歳
上月・光 女性 35歳
広野・大樹 男性 32歳
多紀・陽光 男性 30歳
井上・実 女性 30歳
伊藤・忠明 男性 25歳
「妙に年齢が合うだろ?そりゃ、4,50台だけだが――数が合う。それにあの巡査の服を着た木だが、もしかしたら年齢が合致するんじゃないのか?」
「今は巡査達の資料は手元にありませんからなんともいえませんが、キャリア組ではない限り若い人が派出所に勤務することはあることです」
「それにあの岩だが、もしあれの歳もわかるのなら―――と、まぁなんとも非現実な話だ。とりあえず俺は知り合いの伝手でちょっと調べてもらう。どうも引っかかる。それに――」
まぁ、今考えても仕方ない。
どうも考えすぎている気がする。
しかし、
「机上の空論、ですか・・・。でも、『超ひも理論』はもしかしたら確立されたかもしれませんよ」
私は携帯電話を取り出した。
研究施設から立ち去る際、一枚の写真を撮っておいたのだ。
「これなのですが、何かわかりますか?」
「ん?なんだこれ?」
写真に写るのは、円筒形の機材だ。私としては教科書などで何回か見たことのあるもの。
「加速器です。しかも大体直径1mくらいのものですよ」
こんな大きさのもの見たことがなかった。
小さすぎるのだ。
警部にはどういう意味かは理解できないと思う。
「もし、これが完成していたらどうでしょうか?私が知る限りこのことを成した人はいません。まさにノーベル賞ものでしょう。事件に対して個人の深読みは褒められたものではありませんが、もし特許絡みであれば、これを欲しい人はいるでしょうね」
「つまり利益目的の事件、と言いたい訳だ」
「ただ私の個人の考えですし、裏づけも不十分。それに、行方不明者の多さも謎」
実際、ここに来て新しく分かった事など、名簿と研究内容だけだろうか。
収穫は少なかった。
「事件は確かに起きているが、犯罪と決まったわけでもない。糸口がないな」
「捜査本部が立ち上がってからの情報待ちでしょうか」
「いいや、情報は仕入れるもの。まずは足だ。職員の家族について洗ってみるか・・・」
う〜む、語り形式で書けば5部くらいで終わったかもしれない。
10部までには完結予定。5月の中旬には終わるかな?




