01 向かう先「警部と刑事と道中の木」
東京都、警視庁内
「おい、お前大学で何を学んでたんだっけか?確か量子なんちゃら」
「量子力学ですよ、警部」
「そうそう、それそれ。丁度いい、お前も一緒に来い」
報告書を書いていた私に同じ課の先輩からのいきなりの質問、そして連行。
それが私の始まり。
しかし事件自体はとっくの前に始まっていた。
「な、なんですかいきなり!?ちょ、腕を引っ張らないでくださいよ!」
「事件だよ、事件。行方不明者29人+2人だ」
「はぁ!?」
私は先輩の車に押し込まれると、そのまま現場へと出発をした。
意味もわからずこの事態は何なのだろうか?
私は批難の目で警部をみる。
この人とは何回か一緒に行動したことがあるが、それでも慣れるものではない。
私の目に気付いたのだろう。警部はうん、と咳払いをした。
そしてかいつまんでの説明をしてくれた。
行き先は奥多摩。
この事態に気付いたのは、奥多摩の駐在所に勤務していた2人の巡査が居なくなったことからである。
同じ駐在所にいた同僚が2人がとある研究施設の調査に行ってから帰ってこないのに気付いた。
連絡も取れず、その同僚が研究施設に様子を見に行ったが誰も居なかった。
ただし、研究施設の入り口前には2本の木が不自然に立っており、他にも研究施設内では木が2本、岩が3つあった。
報告では施設に続く道でも不自然な木が1本あったそうだ。
同僚の巡査は施設で働く職員に接触を図ろうとした。
職員の人数は全員で7人、どの職員も連絡が取れず、結果行方不明と判明。
また、職員の1人である男の家族全員2人も行方不明と判明。
奥多摩市内でも20人の行方不明の届出が出ているのが判明。
合計31人の行方不明者。
また奇怪な事に奥多摩市内で昨日までなかった木が岩が出現したらしい。
「この事が今日の朝わかった。本庁も捜査本部を置くとさ」
「で、先に私達が現場へ行っておくと?」
「その通り、実際巡査2人が行方不明になったのが5日前。ちんたらするのにはちょい遅すぎる」
「確かに、行方不明からの日にちが経つと生存確率も下がります。しかし、何故私が選ばれたのですか?」
赤信号で車を止めた警部は煙草を取り出すと、火を付けた。
「その巡査が調べにいった研究施設ってのが、その、あ〜・・・」
「・・・量子力学」
「量子力学についての研究をしていたらしくてな。とりあえず知ってる奴を連れ行ったほうが何かわかるんじゃないかと思ったんだよ」
吸うか?と警部は煙草を差し出すが丁重にお断りする。
量子力学といっても幅は広い。私の知識がそれに合うかどうかもわからないのに、この警部は・・・。
「と言う事は、私達が向かうのはその研究施設ですか」
「その通りだ」
人は自然を破壊する。人は自然から生まれたはずなのに。
生まれたものはいずれ生まれた場所に還る。
ならば、人はどうやって還るのだろうか。
破壊した自然に如何にして還るのだろうか。
「ここからは歩きだな」
警部の車から降りた私は辺りを見回す。
山に舗装されたアスファルト。
現代の科学で壊された自然、アスファルトの先にはふと思い出したかのように木の群生が広がる。
当たり前な光景だろう。人の住む場所には自然がぽっつりとそこに存在する。
なんと不自然。
そんな考えを私は抱く。
「おい、立つだけじゃ目的地は着けんぞ」
警部の声、それは施設へと続く道から聞こえた。
既に警部の姿は小さい。意外に足が速い人だ。
私はその後を追うため、急ぐ。しかし、直ぐに追いつくことができた。
少し段差があった場所を越したすぐそこに警部は立っていた。
木があるのだ。
道のど真ん中に立つ木。
「報告にあった木の1つですね・・・」
「普通ここまででかくなる前に切るだろ、普通はよ。それにこれはおかしいな。――この木、樹齢は大体30年くらいだろうよ」
「わかるのですか?」
「山育ちをなめるなよ」
警部は木を軽く叩きながら言う。
「この道の舗装、どう見ても30年前にされたものじゃねぇのに、何故この木はアスファルトを突き破って伸びてるんだ?おかしいじゃねぇか」
「・・・確かに」
私は木の根元を見る。砕けたアスファルトがあった。
そして上を見上げると、枝が伸び青く茂る葉がある。
ただそこには緑の色とは違うものがあった。
「警部、上を見てください。あれ、服じゃないでしょうか?」
「ん?あ〜何かあるな。どんなものかわかるか?」
私は目を凝らしてみる。
服は木の枝に引っかかっているように見えるが、どうやら枝が服の中を通っているようだ。
「そうですね。―――白い服が見えます。白衣・・・ですかね。それとジーパン?なんというか木が服を着ている感じですね、あれ」
私にはそのように見えた。
「木が服を着ているって?誰かいたずらでもしたか?」
「あんな高いところまで上ってやるには、命の割に合わないいたずらですね。でも、白衣などからして、施設の職員ではないでしょうか?」
「まぁ、そう考えることもできるな。あれ、取ってこれるか?」
無茶な事をいう。
「警部があれを取ってこれると思いますか?素手で上るのは無理ですよ」
「・・・だよな。とりあえずこの件は置いておこう。先に進むぞ」
進んだ先、そこは研究施設を俯瞰できる場所。
そしてそこで見たのは、2本の木に屋根を貫かれた研究施設と入り口前に立っている2本の木。
よく見ると、入り口前の木にはよく署内で見る青色の制服が枝を通された状態でそこにあった。
意外と短い長編小説?になりそう
誤字脱字はご愛嬌




